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『ラストデイズ』マイケル・ピット来日インタビュー

『エレファント』で銃社会アメリカにおける死を描いたガス・ヴァン・サント監督が、1994年に命を絶ったニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンに捧げた美しき映像叙事詩『ラストデイズ』。本作でカートの分身ともいえるミュージシャン、ブレイク役に抜擢された24歳のマイケル・ピットがインタビューに応じてくれた。

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『エレファント』で銃社会アメリカにおける死を描いたガス・ヴァン・サント監督が、1994年に命を絶ったニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンに捧げた美しき映像叙事詩『ラストデイズ』。本作でカートの分身ともいえるミュージシャン、ブレイク役に抜擢された24歳のマイケル・ピットがインタビューに応じてくれた。

これは若きミュージシャン、ブレイクの最期の2日間(ラストデイズ)を綴った物語である。それはカート・コバーンが死の前にリハビリ施設から脱走していた謎の時間にインスパイアされている。それゆえに一人芝居のシーンが多く、セリフもほとんどない。これまで『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』などで個性派俳優と呼ばれてきたマイケル・ピットは今回の経験を「自分のシーンが多いのはすごく楽しかったけど、責任も重大なのでその重さは感じた」とふり返る。

しかしブレイクはカート・コバーン本人ではない。だが彼と切り離して考えることはできないという少し複雑な役柄だ。観る側はどうしてもカート・コバーンを意識せざるを得ないが、マイケルいわく「カートを意識していた部分は画面で観てもらった通りだよ」。

現場でのガス・ヴァン・サント監督の演出はとても静かなものだったそうだ。「僕が演じているのを見て、必要であれば調整する。でも基本的には自由に演技させてくれる演出方法だった」。自由に演技することと細かく演出されることの違いについてはこう語る。「どちらもそれぞれ大変だと思う。ただ、自由を与えられるということは責任も非常に大きいというのは間違いないよね。俳優が陥りがちな罠がひとつあって、それは作品のためではなく自分のために演技をしてしまうということなんだ。だからそのために色々と判断を見誤らないようにしなければいけないと思う」。

全体的にこれといった見せ場もなく静かに展開する映像の中で、モルモン教徒と電話会社の人間が家に勧誘に来るシーンにがちょっとしたアクセントになっている。そこにはそこはかとなくユーモアが滲みでているが、先の読めない緊張感にも満ちている。それもそのはず、演技はマイケル自身のアドリブなのだそうだ。「使われたのはファースト・テイクだけど、実はやりとりは全て即興なんだ。事前に何をやるかは全く決められていなくて、一回目がよくて使われたけど、他のテイクは最悪だった(笑)」。そう言うだけあってそのシーンはドキュメンタリーとして観ても面白いかもしれない。

自身も“パゴダ”というバンドで音楽活動をしているマイケルは、劇中で自作の曲“Death to Birth”を披露している。彼のミュージシャンとしての部分はどのように反映されているのだろうか。「オーガニックな演技はやはり僕自分がミュージシャンだからこそできたものじゃないかと思う。ギターは毎日弾いていて、人生の大きな一部だよ」。ミュージシャンらしくしようと意識したことは?と尋ねると逆に「ミュージシャンってどういうもの?」と切りかえすほどマイケルにとって音楽は当たり前のことなのだ。

演技とはいえ、死ぬ前の人間になりきるというのは心身ともにつらいことだろう。病は気から、という言葉があるように、人間の思いこみは意外と強い。演じている間は死についてどのように考えていたのだろうか。「うーん…わからないなそれは…。ただ、今回の役は既に死んでしまった人間のように演じていたんだ。まるで12歳ぐらいのときに自分の死を見てしまって、その記憶をずっと抱えて生きているようなね。常に自分の死を意識しているような男だと考えながら演技したよ」。

そんなマイケルがこの映画を通して一番伝えたかったことを聞いてみた。「一番気をつけたのは、キャラクターについていいとか悪いとかいうことを決めつけないことだった。(ガス・ヴァン・サント)監督の気持ちを代弁することはできないけど、できあがった作品を観たときに、彼が自分の主観を全く入れず、自らのスタンスを見せていないなと感じたのは確かだよ。ラストも観た人がそれぞれ好きにとればいいという終わり方をしていると思う。それがいいと言う人も、もっとちゃんと答えて欲しいと思う人もいるだろうけど」。

劇中のイメージを裏切らず、アーティストらしく繊細で言葉少なながらもひとつひとつきちんと答えてくれたマイケル・ピット。今後は日本・カナダ・イタリア合作映画『Silk』での主演も控えている。これからが楽しみなブレイク寸前の予感はきっとスクリーンからも感じられるだろう。

《シネマカフェ編集部》

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