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“父子”対談! 監督・役所広司×俳優・瑛太 『ガマの油』の効用やいかに?

理想の父親、夫、上司——。アンケートを取れば、おそらく、役所広司は俳優陣の中でいずれの項目でも上位にランキングされるであろう。そんな彼が、自らの初監督作品『ガマの油』で演じたのは、家庭人としても社会人としても、理想という言葉からは少しずれた、いや、むしろ“はちゃめちゃ”と形容するのがぴったりの男・拓郎。そして、彼の息子・拓也役として役所監督が「こんな息子がいたら」という思いでキャスティングしたのが、人気絶頂の瑛太である。監督と俳優、父と息子、そして俳優同士としての2人の関係は——? 映画の公開を前に話を聞いた。

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『ガマの油』 瑛太&役所広司  photo:HIRAROCK
『ガマの油』 瑛太&役所広司 photo:HIRAROCK 全 10 枚
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理想の父親、夫、上司——。アンケートを取れば、おそらく、役所広司は俳優陣の中でいずれの項目でも上位にランキングされるであろう。そんな彼が、自らの初監督作品『ガマの油』で演じたのは、家庭人としても社会人としても、理想という言葉からは少しずれた、いや、むしろ“はちゃめちゃ”と形容するのがぴったりの男・拓郎。そして、彼の息子・拓也役として役所監督が「こんな息子がいたら」という思いでキャスティングしたのが、人気絶頂の瑛太である。監督と俳優、父と息子、そして俳優同士としての2人の関係は——? 映画の公開を前に話を聞いた。

「役柄の人物だと錯覚できる人との芝居って楽しいんです」(役所)

これまで俳優として、名だたる監督たちと共に仕事をしてきた役所さん。「最初は、企画自体が通るのか? という不安もありましたが、徐々に進んでいくにつれて監督としての覚悟が固まってきた」と語る。やはり“監督”として臨む現場はこれまでとは違った感慨があったようだ。
「もちろん、いろんな監督と仕事をしてきて、様々な影響を受けていると思います。でも、いざ自分が監督として現場に立ってみたら、そうしたことを思い出す余裕はなかった。自分に染み付いているもので自分の中のイメージに近づけていくしかなかったです。大切にしたのはとにかく、繊細さよりも力強さ。その方がこの映画に似合っているなと」。

破天荒な拓郎に対して、息子の拓也はいまどき珍しいほどに、素直で心根の優しい青年である。瑛太さんをキャスティングした経緯について、監督はこう明かす。
「脚本の段階から漠然と思い描いていた風景で、携帯電話でずっと話をしている、というものがあったんです。瑛太くんが風来坊というか…バックパッカーを演じているCMを見て『あぁ、これだ!』って。これまで瑛太くんが出ている映画を観て、素直な、自分に正直なお芝居をする人だと思ってました。僕自身、“芝居をしています”って感じの人とは信じ合えないんですね(笑)。会話のキャッチボールをやり取りするときに、役柄の人物だと錯覚できる人、登場人物として正直に伝わってくる人との芝居ってやはり楽しいんですよ。特に拓也に関しては自然で正直な感じを求めていました」。

瑛太さんは、役所さんからのオファーが届いた時点で「何が何でもやりたい」と出演を即決したという。
「まず役所さんとご一緒できる、息子を演じることができるということ。しかも監督までされるということですごく興味を惹かれまして。これに勝るものはないな、と」。

「自分の中で答えを持たずに現場に行き、まず役所さんに聞いてみました」(瑛太)

若くして、多くの場数を踏んできた瑛太さんだが、撮影について尋ねると「とにかく、ずっと緊張してました」とのこと。同時に「役所さんと同じ空間にいるということが幸せでした」とも。
「自分の中で『絶対に答えはこれだ』というものを現場に持って行かずに、まず役所さんに聞いてみよう、というところから始めました。そこで役所さんに『どうしたらいいですか?』って聞いたら、拓也はこういう男だから、という説明があって『だから、立ってれば大丈夫だよ』とおっしゃってくださったんです」。

一方、役所さんから見た瑛太さんはと言うと…。
「いや、もうのびのびやってくれればOKなんですけどね(笑)。僕の中では瑛太くんにオファーを出したときから、当然のように僕のイメージの中で何の疑いもなく瑛太くんが動いていたんです。初めて彼が走る姿を見たときも、『そうか、拓也ってこんな走り方するんだな』という思いでした」。

物語は、拓也の身に起こるある事故をきっかけに、拓郎を中心に様々なドラマが現実と夢のような世界を行きつ戻りつ展開されていく。“ガマの油”は切り傷などにてきめんの効果をもたらすと言われているが、さて、この映画『ガマの油』の効用は? まずは瑛太さんからこんな答えが——。
「僕はラストシーンに救われましたね。忙しくてどうしようもないときや自分がおかしくなってしまいそうなときに、あのラストシーンを見て『あぁ、生きてればいいんだ』って思えたんです」。

役所さんは、我々を煙に巻くようにフワリと笑って、こう答えてくれた。
「好きですよ、この映画…と他人事のようですが(笑)。この作品は意外と目に見えないものを描いていると思うんですよ。僕はいつも、映画のカメラって誰がのぞいているんだろう? ってずっと思ってたんです。それはもしかしたら神様なのかもしれないですが…でも、映画の中で拓也がああなった後は、僕は拓也が見ていると思って撮ってました。それを映画を観ている人がふっと感じて、大切な人のことを考えてもらえたらいいですね」。

「瑛太くんは、自分の感じたまま、信じてやっていい人だと思う」(役所)

2人が顔を揃えたこの機会に、役所さんという大先輩との共演を経て、瑛太さん自身、今後、俳優としてどのような作品、役柄に挑戦してみたいか? という質問を投げかけてみた。
「いまは、脚本がある次の作品に対して向かっていっているという感じです。海外の作品を観て『こういう役、かっこいいな』と感じて、自分がやってみたいと思うことは…漠然とはありますけど」。

照れくさそうに少しだけ本音を垣間見せてくれたが、役所監督からはこんなエールが。
「本読みの段階で、脚本一つでも、瑛太くんが読むとそこに個性がある。自分の感じたままに、それを信じてやっていって良い人だと思うんですよ、瑛太くんは。あとは、俳優というのは歳をとるごとにひとつひとつ役柄が変わっていくものだから、確実に相応に歳をとってやっていけばいいかなと」。

役所広司と瑛太という2人の“俳優”を目の前にしていたはずが、インタビューを通して、本当の親子のように見えた。実は、映画全体の中で2人の共演シーンは決して多くはない。だが、演技を越えたその強い絆は、しっかりと観る者の胸に何かを届けてくれるはずだ。

《photo:Hirarock》

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