【シネマモード】ファッションから見るスカーレット・ヨハンソンの“覚醒劇”

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『LUCY』-(C)2014 Universal Pictures
『LUCY』-(C)2014 Universal Pictures 全 7 枚 拡大写真
「人間の脳はわずか10%しか機能していない」。そんな話を聞いたことがある方も多いと思います。その話を聞いたとき、ではいったい何のために残り90%の脳が与えられたのだろうと不思議に思ったものでした。

脳科学者によれば、脳はいざというときのために普段は制限をかけられているけれど、何かのきっかけでリミッターが外され、思いもよらない高度な力を発揮することがあるのだそうです。「火事場の○○ヂカラ」というアレですね。だとしても、何のために力を90%も温存しているのでしょう。驕りやすい人間に、不完全な存在なのだと常に意識させるための神の御心? 不完全であるからこそ、足りない部分を補うために、他者や文化、高機能なツールを求めるのかもしれませんね。

私の頭からは「なぜ」が離れませんでしたが、「脳が100%覚醒したらどうなるか」が気になって仕方がなかった人が、リュック・ベッソン監督でした。これまで、代表作で映画史に残る数々のヒロインを生み出してきた彼が、今回描いたのがスカーレット・ヨハンソン演じるルーシーです。ごく平凡な女性が、とある生命の危機をきっかけに脳を100%へと覚醒させていくのです。

10%以上を覚醒させた脳を持つ人間。それはまさに人類未知の領域。20、30、40、50、そして100へと向かう彼女の変化を描いた新作『LUCY/ルーシー』には、ベッソン監督の尽きることなきイマジネーションが存分に反映されています。脳のキャパシティが広がっていくということを、単に頭が良くなるとしか考えなかった私にとって、彼が想像力によって作り上げた世界は驚きの連続でした。

20%覚醒したルーシーは、1時間で外国語をマスターします。これは想像の範囲内。ところが、30%の覚醒で、彼女は自分の細胞をもコントロール可能にし、やがて、覚醒が進むにつれて、恐怖も欲望も感情も失っていきます。その変化の様子は、彼女のファッションからも見て取れます。

平凡に暮らしていたときのルーシーは、決して趣味が良いとはいえないものの、彼女なりに好みがありました。派手なプリントやアニマル柄を重ね着し、体にぴたりと沿った服を好んでいたのです。好みとは、言わば彼女の個性。ところが、脳覚醒20~30%を超えたあたりから、着る物は機能重視に(そもそも、服にかまってなどいられない状況というのもあるのですが…)。

細胞を制御可能になったことで、髪の色や体の形を変化させることもできるのですが、それを行うのは、あくまでも必要だから。恐怖も欲望も感情も失っていくということは、彼女から個性、続いて人間性が消えていくということ。もちろん、装飾など意味を持たなくなっていくのです。

さらなる段階に進んだルーシーは、目に見えなかったものが見え、多くのものと繋がりを持ちはじめた脳は、常に機能し続けます。それゆえに高度な力を発揮できるのですが、フル稼働すればすれほど、思考や行動は、すべて論理的で合理的になっていくルーシー。心を潤すものや喜びなどは必要なくなり、気持ちの余裕など意味を持たなくなる様子です。そんな彼女を見ていると、私たちが、ファッションを含む文化を楽しむ余裕を持てるのも、ささいなことや人生の余白に喜びを感じられるのも、脳の90%が眠っていてくれているから…という気が大いにしてくるのです。

妙に興味深い“覚醒劇”に引き込まれ、久々のリュック・ベッソン活劇を大いに堪能したものの、変化していくルーシーを見ていて、「10%で十分です!」と思ってしまった私。人間の潜在能力やそこに秘められた可能性はもちろん、凡人には凡人の幸せというのがあることをしみじみと感じさせてくれる、そんなSFです。

《text:cinemacafe.net》

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