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【MOVIEブログ】2016カンヌ映画祭 Day11

21日、土曜日。ああ、もう終わりが近いと思うと、ほっとするような、寂しいような。昨夜は就寝が3時を回ったので、ちょっと寝坊して7時起き。平均睡眠時間3~4時間が10日以上続いているのだけど、体調は極めて快調。でも東京に帰ってからの反動が心配だ…。

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2015Guy Ferrandis/SBS Productions
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21日、土曜日。ああ、もう終わりが近いと思うと、ほっとするような、寂しいような。昨夜は就寝が3時を回ったので、ちょっと寝坊して7時起き。平均睡眠時間3~4時間が10日以上続いているのだけど、体調は極めて快調。でも東京に帰ってからの反動が心配だ…。

本日も8時半からコンペで、ポール・ヴァーホーヴェン監督新作『Elle』(写真)へ。昨日は個人的好みとしてはいささか苦戦したコンペだったけど、ヴァーホーヴェン御大作品は快作だった! イザベル・ユペールを主役に迎えたフランス映画で、もうただただユペールの素晴らしさにひれ伏すのみ。なんという凄い女優なのだろう。

ユペール扮するゲーム会社の経営者の身の上に起こる様々な出来事を描いていく内容で、いくつもの状況がうねりのように同時進行していく展開がとても巧みで驚かされる。意外にも、ヴァーホーヴェンという監督から連想されがちなサスペンスやスリラーでなくて、ひとりの女性を取り巻く世界を多面的に見つめる堂々たる人間ドラマだった。

もちろん、一筋縄ではいかなくて、冒頭からいきなりレイプシーンだし、激しい描写には事欠かない。ヒロインの過去、息子との関係、母との関係、元夫との関係、隣人との関係、職場の関係、レイプ犯の謎、などなど、これだけの要素が絨毯攻撃のように2時間繰り広げられ、破たんせずに見事に着地する。ただ、ダークな雰囲気では全く無く、随所に笑えるし、むしろ明るいと言ってよくて、全く飽きさせずにドライブ感さえ漂わせるヴァーホーヴェンの力量はさすがの一言だ。

そして、ほぼ全編出ずっぱりのユペール。彼女はいまだにひっきりなしに出演作が相次ぐ超大物であるけれど、本作は代表作の1本になるのは間違いない。もう「体当たりの演技」とか何とかのレベルを超越していて、こんな女優世界にひとりしかいないんじゃないか?

ああ、コンペの女優賞の予想がこれで俄然難しくなった! 僕の現在の予想は、ドイツの『Toni Erdman』の女優さん、ブラジル『Aquarius』の女優さん、それからジェフ・ニコルズ『Loving』の女優さんも候補に挙げたいところだけど、やっぱりここはユペールしかいないのではないかという気になってきた。うん、ユペール第一候補だろうな。そんなイザベル・ユペール、6月のフランス映画祭に来日が決定したそうな! おお、これは緊張しますな…。

続いて12時から、「監督週間」部門のオープニング作品だった、マルコ・ベロッキオ監督『Sweet Dreams』の再上映に駆けつける。評判が良くて、見逃したのを悔やんでいたので、この再上映はとても助かる!

ベロッキオの前作『私の血を流れる血』が時空を超えた不思議な作品であったのに対し、今作はオードックス(いい意味で)なドラマ。幼くして母を亡くした少年が、その喪失感を抱えながらいかなる大人になっていったかを描いていく内容で、主演はイタリア映画ではお馴染みのヴァレリオ・マスタンドレア。ちょっと未成熟な部分を残すような大人をやらせたらピカイチのマスタンドレアはまさに適役で、「ママ」を非常に大切にする(イメージがある)イタリア男を見事に体現してくれる。

今年のコンペにはアメリカ映画が4本あるのに対し、イタリア映画はゼロ。アメリカ映画を1本減らして、手堅い出来のベロッキオをコンペに入れなかったのはどういう事情があったのだろう? と外野は首をひねってしまうのだけれど、まあこういうこともある。ともかく、ちゃんとスクリーンで見られてよかった。

上映終わって14時。時間が空いたので、ランチを食べようではないか! と思い立ち、11日振りにサンドイッチ以外の温かい食事(イタリアンでパスタ)にありつき、幸せを噛みしめる…。

ホテルに戻って、パソコン叩いて、少し休んで、18時に外に出て、19時からの「ある視点」部門の授賞式を見るために、自分のことのようにドキドキしながら会場へ。

カンヌのディレクターであるティエリー・フレモー氏がまず登壇し、毎年恒例の、会場運営に関わる全スタッフを壇上に上げて労をねぎらうことからセレモニーは開始。大拍手。審査員を呼びこみ、いよいよ各賞の発表開始。

特別賞が、日本のスタジオ・ジブリも製作に参加している『レッドタートル ある島の物語』! 脚本賞がフランスの『The Stopover』。続いて監督賞が、事前に作品賞と予想する人もいた『Captain Fantastic』のマット・ロス監督。ロス監督とともに、主演のヴィゴ・モーテンセンも登壇。ヴィゴ、かっこいい。

そして「審査員賞」(2等賞に相当)の発表。呼ばれたのは、フカダ・コージ、『淵に立つ』!! やった! 「ある視点」部門全18本中の2等賞とは、本当に素晴らしい。深田監督はじめスタッフ・キャストのみなさん、本当におめでとうございます!

作品賞には、フィンランドの『The Happiest Day in the Life of Olli Maki』! これは完全に意外だったのだけれど、確かに個性は光っていたので、なるほどと納得。今年の審査員は若い才能に賞を与える方針を取ったようで、とても素晴らしい判断だと思う。喜びに沸くフィンランド勢と日本チーム。いやあ、嬉しい。

コンペ部門の再上映がまだ続いているので、21時半からイランのアスガー・ファルハディ監督新作『The Salesman』へ。ファルハディらしさが存分に発揮された秀作、とだけいまは書くことにしてもう少し詳しい感想は後日…。

そして、普段は翌日に響くので自重している「ミッドナイト・スクリーニング」に、もう終盤だからと行くことを自分に許してしまい、0時半からメル・ギブソン主演の『Blood Father』へ。メル・ギブソン登場に沸きつつ、上映開始が遅れて、開映1時、終映2時半。

これを書いて、そろそろ3時。もう限界だなあと思いつつ、どうしても明日のコンペの受賞の予想だけはいまのうちに書いておかねば面白くないので、もう少し頑張ろう。コンペ21本のうち、現時点で未見なのがルーマニアの『Sieranevada』と(明日見る予定)、フィリピンの『Ma’ Rosa』と、レフンの『Neon Demon』(明日見る予定)の3本。この3本を除いた上で、現時点の予想としては…。ああ、難しい。今年は、これが取りそうだという予想よりは、僕個人の好みを優先させてみることにして、ズバリ:

・パルムドール(1等賞):ジャームッシュの『Paterson』。好み優先。現実味は薄いかも…。
・グランプリ(2等賞):ファルハディの『The Salesman』。これは難しいところ…。
・審査員賞(3等賞):ブラジルの『Aquarias』。女優賞もありうる。
・監督賞:『Toni Erdman』のマーレン・アーデ監督。但し、一般的下馬評はパルムドール最有力候補。そうなっても全く異存なし。
・女優賞:『Elle』のイザベル・ユペール。但し、ジョージ・ミラーが審査員と思うと、パルムドールもあり得るかも…。
・男優賞:『Loving』のジョエル・エドガートン。ケン・ローチ作品の俳優が肉薄かも?
・脚本賞:アラン・ギロディー『Ma Loute』。

さあ、どうなるか。カンヌ常連監督たちは、それぞれ水準以上の作品を揃えてきたけれど、キャリア最高の作品を更新した監督はいなかった、というのがいまの感触で、それを受けての以上の予想(希望)だけど、楽しみにしよう。ああ、なんとそろそろ4時半。最終日に備えて、寝ます! おやすみなさい!

《矢田部吉彦》

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