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【シネマ羅針盤】渋谷再開発、映画館の行方は?――『シング・ストリート』に寄せて

音楽に情熱を捧げる少年の恋と青春を描いた『シング・ストリート 未来へのうた』(ジョン・カーニー監督)が7月9日(土)に封切られ、各地の劇場で満席続出の大ヒットを記録している…

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『シング・ストリート 未来へのうた』 (C) 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved
『シング・ストリート 未来へのうた』 (C) 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved 全 8 枚
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音楽に情熱を捧げる少年の恋と青春を描いた『シング・ストリート 未来へのうた』(ジョン・カーニー監督)が7月9日(土)に封切られ、各地の劇場で満席続出の大ヒットを記録している。早くも拡大公開が決定しており、さらなる旋風を巻き起こす予感だ。

『ONCE ダブリンの街角で』『はじまりのうた』といった音楽愛にあふれる秀作を手がけ、日本にもファンが多いカーニー監督が80年代、不況にあえぐ故郷ダブリンで過ごした10代の実体験をベースに生み出した本作は、例えば同じく自身の青春期を映画化したキャメロン・クロウ監督の『あの頃ペニー・レインと』、ほぼ同時代のイギリス北部を舞台にした名作『リトル・ダンサー』に匹敵するといって過言ではない、今年を代表する感動作だ。

少しだけ個人的な話をすると、カーニー監督とは同世代なので、劇中を彩る80年代ブリティッシュ・ミュージックの数々に胸がときめいてしまう。鬱屈した日常を送る主人公の少年が音楽好きの兄と一緒に、テレビから流れるミュージック・ビデオを“見ながら”瞳を輝かせる姿も当時を思い出させるし、劇中で一目ぼれした年上の女の子を「僕のバンドのMVに出ない?」と誘い、まさかのOKで急きょバンドを結成するシーンも微笑ましい。

さて、映画の舞台となる1985年頃、音楽と同じくらい映画に興味を持ち始めた筆者は、緑に囲まれまくったド田舎に暮らしながら、ミニシアターブームが巻き起こる東京…特に86年にシネマライズがオープンした渋谷に対し、「映画の街」という漠然としたあこがれを抱いていた。上京後はシネマライズをはじめ、渋谷に点在する個性的な映画館に足を運んでは、世界中からやって来る傑作、秀作、珍作との出会いに、自分なりに刺激を受けてきた。

ご承知の通り、渋谷は映画館の閉館が相次ぎ、今年1月に閉館したシネマライズに続き、8月には向かい側に立つPARCO part3の建て替えに伴い、シネクイントが一時閉館することになった。そのクロージング作が『シング・ストリート 未来へのうた』だ。封切りの翌日、劇場に足を運び2度目の鑑賞を楽しんだが、同時にさまざまな思い出もよみがえってきた(偶然かもしれないが、シネクイントでは音楽をテーマにした映画をたくさん見た)。

100年に一度といわれる再開発が進む渋谷において、やはり心配なのは映画館の行方。シネコンのオープンも噂されており、「渋谷で映画を見る」特別感はますます薄れてしまうかもしれない。もちろん、渋谷にはユーロスペース、Bunkamura ル・シネマ、シアター・イメージフォーラム、渋谷アップリンク、ヒューマントラストシネマ渋谷など、それぞれの個性やポリシーを貫く映画館が存在する。久しぶりに足を運んでみてはいかがだろうか。

『シング・ストリート 未来へのうた』は渋谷シネクイントほか全国にて順次公開中。

《text:Ryo Uchida》

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