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【MOVIEブログ】2016東京国際映画祭 Day9

2日、水曜日。昨日は、5時半就寝で、11時半起床。今日の午前中に予定が無かったことを良いことに、6時間寝た! 完璧な熟睡の末に目覚めて外に出ると、きりっとした空気が気持ちいい。まるで休暇明けのように疲れが取れた気分。爽快!

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2日、水曜日。昨日は、5時半就寝で、11時半起床。今日の午前中に予定が無かったことを良いことに、6時間寝た! 完璧な熟睡の末に目覚めて外に出ると、きりっとした空気が気持ちいい。まるで休暇明けのように疲れが取れた気分。爽快!

実は、次に寝られるのがいつだか分からないので(48時間後ではないかとの推測もある)、この爽快気分を大事にしながら、ゆっくりと進もう。ということで、12時に職場へ。すぐにお弁当(すみません)。カレー!!

12時40分から、コンペ『ミスター・ノー・プロブレム』の2度目のQ&A。メイ・フォン監督に加え、主演のファン・ウェイさん(中国では有名なコメディアン)、女優のシー・イーホンさん(京劇のスター)が登壇。中国の熱心なファンが多数駆けつけ、これまたとても盛り上がる。今年は、上映作品の制作国のファンが例年より多く集まっている気がして、とても嬉しい。

悪人ではないのだけど、周りの状況に合わせて結果的に良くない方向に流れてしまう主役のキャラクター造形について尋ねたところ、「一人でいるときは悪くないのです。まわりの人間によって、人は変わってしまうものなのです」と監督は答え、僕は映画の深い部分に触れるきっかけを与えられた気がして、おお、と深くため息をついてしまった。メイ・ファン監督と、もっとゆっくり話したいとの思いが募るばかりだ。

美しいモノクロ映像に関する質問が出た流れで、僕から「あの映画の、あのタッチ、という感じで参考にした作品ありますか?」と尋ねたら、『小城之春』という作品を挙げてくれた。僕はとっさに反応できず、すみません、知らないですと言うしかなかった。ああ、こういうケースは本当に痛恨だ。

後で改めて聞いてみると、48年のフェイ・ムー監督による作品で、2002年に田壮壮監督が『春の惑い』でリメイクしている作品だった。ああ、そうか! オリジナルは未見。メイ・フォン監督は『ミスター・ノー・プロブレム』を作るにあたって『小城之春』を何度も見直したそうで、これは何とかして見る手段を探さなければ。

事務局に戻り、クロージングに向けての準備作業を少し。

15時に劇場に戻り、スプラッシュ部門『島々清しゃ』の2度目のQ&A。新藤風監督に加え、今回は安藤サクラさんと、伊東蒼さんも合流してくれてのQ&A。新藤監督が10年ぶりに作品を監督した経緯、少し休んでいた安藤さんが久しぶりに映画出演をした経緯、そして『湯を沸かすほどの熱い愛』でも素晴らしい演技を見せてくれる子役の伊藤さんが出演した経緯、などを伺う。

様々な話をする中で、新藤監督の目に涙が浮かんでいるように見えてしまい、僕も時折絶句してしまいそうになった。たくさんの人たちの、たくさんの思いが集まって、映画は出来る。熱くて、温かい。息の長い映画になりますように。

間髪置かず、スクリーンを移動して、コンペ『天才バレエダンサーの皮肉な運命』の2度目のQ&A。前回の空前の盛り上がりを受け、2回目も心して臨んだのだけど、今回は少し落ち着いた雰囲気になっていて、これもナイス。ロシアの方とお見受けする観客もとても多いけど、日本人(とお見受けする方)も半分はいる。国籍人種関わらず、みんな前のめりでセルゲイ・ベズルコフさんの写真を撮っている姿が熱い。盛り上がるっていいなあ。

しかし、前回もそうだったけど、セルゲイさんは話が長い! ハハ。こればっかりはしょうがない。ロシアの大スターだし、なかなかカットインすることは出来ない。いや、話は面白いし、会場は湧くし、サービス精神旺盛で、最高。

映画祭も終盤だからいいや、と流れにまかせていると、予定を15分オーバーしている。これはさすがにヤバイかな? 急きょ最後の英語通訳を省略し(英訳が聞きたい方にはロビーで別途待っていてもらい、通訳さんに個別に伝えてもらうことにした)、終了。ヒヤヒヤ綱渡りも、映画祭の醍醐味だ。

16時45分に事務局にもどり、小さいミーティングが2、3件。17時半にお弁当が来ていたので、まずはひとつ頂く。待望の「金兵衛」! ひさしぶりに魚の弁当を満喫。

18時半に、映画祭の「学生応援団」チームと、少しだけ取材仕事。はしゃいでしまった。いかん。

19時半から、コンペ『空の沈黙』の2度目のQ&A司会。昨日に続き、脚本のカエタノ・ゴタルドさんをお迎えして、作品の中身についてじっくり伺う。今日は、女性の観客からの質問が相次ぎ、厳しい状況に置かれた劇中の女性の心理に寄り添った意見が続く。軽々しく扱うわけにはいかない内容で、カエタノさんはじっくりと丁寧に答えていく。本当にカエタノさんを招聘してよかった。

前の回で時間を大幅にオーバーしたこともあって、時間通りに終わらせようとすると、カエタノさんが「もうひとり手を挙げているからもう1問受けませんか?」。もちろん! 望むところです。そうやって最後に受けた質問が、使用したカメラのレンズなどに関することで、脚本のカエタノさんが答えられずに照れ笑いになったのもご愛敬だったのだけど、そこから作品の映像演出の話が出来たので、結果的にとてもよかった。

『島々清しゃ』のときも、最後の言葉を安藤サクラさんに頂こうとしたら「もう1問いけるのでは?」と言われ、ではもう1問! と切り替えたのだけど、Q&Aの終わらせ方は本当に難しい。司会は好きでやっているけれど、いつまで経っても見極めを誤るときがあるなあ、と自分の未熟さを反省…。

『空の沈黙』、ヘビーな部分も多く含む作品なので、どのように受け入れられるだろうかと映画祭前は心配していたのだけど、高い評価をしている人もかなり多いようで、本当に嬉しい。

またまた速攻でスクリーンを移動し、ワールドシネマ部門の『ザ・ティーチャー』のQ&A司会へ。チェコのヤン・フジェベイク監督が本日来日をしてくれて、劇場に直行してくれた。『ザ・ティーチャー』は語りどころ満載の作品なので、監督とのQ&Aがあるのはとても貴重だ。

ブラック・ユーモアとシリアスなテーマを組み合わせるのは、チェコの文化の伝統でしょうか、という良い質問からスタートしたので、僕が「チェコでの評判はどうですか?」と聞くと、どうやらあまり芳しくないらしい。少し監督が言いよどんでいる。有名俳優が出ていないからかもしれないと発言していたけれど、後で聞くと国外ではとても評判が高いので、ちょっとギャップを分析中とのこと。なるほど、面白い。少なくとも日本の観客はかなり楽しんで頂けたようで、キャパの大きい2番スクリーンの客席が、Q&Aになってもほぼ全て埋まっている。

社会主義国家が庶民に与える「日常的な」恐怖を描いた本作は、監督の昔からの友人である脚本家が、実際に少年時代に体験した物語をベースにしている。当時はもちろん映画化できないし、90年代の解放の時代にも、そぐわない内容だった。しかし、社会に漠然と恐怖が見えてきた最近になり、映画化する意義があるのではないかと考えた監督の意図が深い。その最近の恐怖とは何かを質問した若い観客がいたが、これも映画を通じて世界を知ることにつながるわけで、客層の多様化が嬉しい。

『ザ・ティーチャー』、娯楽性と社会性が絶妙に結びついているという点で、コンペの『7分間』や『ブルーム・オヴ・イエスタディ』にもつながる傑作。11月3日の午後の上映はまだチケットがあるので、ぜひおすすめ!

21時10分に終わり、事務局に戻って2個目の金兵衛弁当。美味しい。

そして、22時から、お楽しみに企画! 「日本映画スプラッシュ・場外乱闘編」が始まる! 「スプラッシュ」に含めるにはあまりにも規格外の3作を、オールナイトで上映して盛り上がろうというこの企画は、実は今年の東京国際映画祭のハイライトのひとつだと思っていて、お客さんにも絶対に喜んでもらえると思ったし、個人的にも猛烈に楽しみにしていた!

オールナイトというと旧作の特集企画であることが多いけれど、新作3本がワールド・プレミアで上映されるオールナイトは、画期的ではないかな?

司会でまず先に入場してみると、絶対に受けると信じていたこの企画、キャパ350席のスクリーン2が、満席だ! やった! 圧巻の光景!

22時20分に開演し、まずは、3本の作品の関係者が壇上に集い、クロストーク。『俺たち文科系プロレスDDT』の松江哲明監督、プロレスラーの大家健さん、助監督の今成夢人さん。そして、『星くず兄弟の新たな伝説』の手塚眞監督。さらに、『変態だ』の安齋肇監督、原作のみうらじゅんさん、主演の前野健太さん。超、超、豪華!

それぞれの作品の紹介をしてもらいながら、絶妙なタイミングで安齋さんとみうらさんが笑いを取ってくれる。僕は途中で自己紹介をすることを忘れたのだけど、まあいいやと流れに身を任せて、とにかく本当に楽しく盛り上がる。客席もどっかんどっかんと湧いて、すごいすごい。気持ち良すぎる! ああ、構想3か月、この盛り上がりが実現するなんて、本当に夢のようだ。

最高に盛り上がったトークが30分で終わり、フォトセッションに入った22時55分のところで、僕はいったん脱出。これから『俺たち文科系プロレスDDT』の上映で、僕はその間はスクリーンを移動して、別の司会へ。

23時から、コンペの『ダイ・ビューティフル』2回目のQ&A。今年の映画祭の、最後のコンペの上映だ。少し、悲しい気分になる。でも、最後の作品が『ダイ・ビューティフル』で幸せかもしれない。またもや会場は感動の渦に包まれていたから。

質問が後を絶たず、次々にジュン=ロブレス・ラナ監督は答えを重ねていく。そして最後の質問に答えようとしたとき、「日本の観客はなんて素晴らしいんだ」とつぶやいて、ジュンが涙を流してしまった。「泣くのは主役のパオロの役目で、僕は泣くはずではないんです」と泣き笑いの監督に、こちらも色んなものが決壊し、もうダメだ。「あまりにも大切な、パーソナルな物語なので…」とジュンは絶句し、会場は大きな、大きな拍手に包まれた。今年のコンペの最後のQ&Aを飾るにふさわしい、まさに感動的な大団円だった。

明日は各賞が発表され、例年通り僕はそれが嫌でしょうがないけれど、このQ&Aで最後を締められたことで、もう後は何の後悔もない。

23時半に終わり、余韻にひたりながら、事務局にもどり、せっせとクロージングの準備をする(が、あまりはかどらない)。

0時15分に劇場に戻り、『俺たち文科系プロレスDDT』のトークとQ&A。客席には、松江監督ファンと、プロレスファンとが混じっていて(もちろんそこに加えて手塚監督ファンと、『変態だ』チームのファンもいる)、会場は熱気に溢れている。ここもまた、最高のトーク実現。

ここから箇条書き!

1時から『星くず兄弟の新たな伝説』上映始まり、いったん事務局に引き上げる。パソコン作業と、ブログを少しと、オープニングの準備作業。完全にアドレナリンが出ているのか、全く眠気のかけらもない。むしろ、この反動が怖いなあと心配にもなったり。

上映が終わる前に劇場にもどり、3時20分から、手塚監督とのトーク開始。大喝采。素晴らしい。松江監督にも合流してもらい、サプライズゲストで高木完さんと、武田航平さんも合流。4時で、会場がぎっしり満席という、壇上から壮観の眺め。ゲラゲラ笑いながら、しみじみと感動する。企画してよかった…。

続いて『変態だ』の上映開始に合わせて、退場し、ロビーで松江監督と雑談。松江さんもたくさん映画祭で映画を見て下さったようで、感想を伺う。楽しい。

事務局に戻って、またパソコンに向かう。快調。

5時20分に全体上映終了。最後に僕ひとりでお客さんの前で告知とご挨拶。それから、スクリーンの外でお見送り。面白かったと絶賛してくれる方が多く、「来年も企画してくださいね!」と声をかけられる。いやあ、ここまで個性とクオリティーと話題性と多様性が揃った組み合わせは、そうそうあるものではない…。とにかく、今年は奇跡でした。そして大成功。歴史的な夜になった!

外に出ると、空はうっすらと明るくなってきている。現在午前6時。3時間後の9時から、観客賞授賞式のリハが始まる。数時間だけでも寝られるかな?

明日はいよいよクロージング!

(写真は、「日本映画スプラッシュ・場外乱闘編」の面々! 左から、前野健太さん、みうらじゅんさん、安齋肇監督、手塚眞監督、今成夢人さん、大家健さん、松江哲明監督!)

《矢田部吉彦》

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