【シネマ羅針盤】アカデミー賞8部門候補でも足りない!全人類必見の傑作『メッセージ』

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『メッセージ』
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受賞式を前に『ラ・ラ・ランド』の圧勝が予想される第89回アカデミー賞だが、対抗馬として高く評価される秀作も少なくない。いま、ハリウッドが最も熱い視線を送る俊英、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』もその1本。大げさではなく、全人類必見の傑作だ。

突如、世界12の都市に降り立ち、静止する巨大な飛行物体。米軍に雇われた言語学者のルイーズは、シェルと名付けられた船内にいる謎の知的生命体との意思疎通を試みる。“彼ら”は触手から吐き出す水墨のような液体で円形を描き、他者とのコミュニケーションを図っていた。その円形に刻まれたメッセージの解読を粘り強く続けるルイーズ。一方、中国やロシアは飛行物体への攻撃を検討。アメリカも対応を迫られる…。彼らが地球に来た目的は?

人類がエイリアンと遭遇し、交流(もしくは攻防)を繰り広げるSF映画は、これまでにも数多く存在するし、名作もあれば、駄作もある、いわば手あかのついたジャンルだ。にもかかわらず、本作には見る者をつかんで離さない強烈な“引力”がある。その引力とは、映画が投げかける愛と死、そして時間といった人生のナゾ。ちょうど、ルイーズが宇宙人と対話するように、私たち観客もスクリーン越しに『メッセージ』と対話を重ねるのだ。

飛行物体が飛来した12の都市がそれぞれの反応を示したように、『メッセージ』に対しても十人十色、さまざまな意見や解釈があるはずだ。決して難解な内容ではないが、見終わった瞬間は「いままで見ていたものは何だったんだろう?」と思案に暮れてしまうかも。だからこそ「あのシーン、どう思う?」と誰かと対話できるのが、本作の醍醐味。そう考えると、宇宙人の到着を意味する原題“Arrival”より、邦題『メッセージ』のほうが本質を突いている。

第83回アカデミー賞の外国語映画賞候補となった『灼熱の魂』をはじめ、『プリズナーズ』『ボーダーライン』といった秀作でパワフルな演出力を発揮してきたヴィルヌーヴ監督が、本作ではSF的センスの高さも証明。10月に公開される『ブレードランナー 2049』でもメガホンをとり、さらには一大SF叙事詩『砂の惑星』のリブートに大抜擢されたのだから、その手腕は本物だ。次世代のリドリー・スコットと評するのも、ほめ過ぎではないだろう。

第89回アカデミー賞ではSF映画として異例の作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、美術賞、録音賞、音響編集賞の8部門にノミネートされている本作。でも、主人公ルイーズ役のエイミー・アダムスは主演女優賞候補に絶対挙がるべきだし、人類に走る緊張、そしてエイリアンたちの心情を代弁するヨハン・ヨハンソンの音楽もすばらしい。そもそも、視覚効果賞候補からもれているのも納得がいかず、正直8部門候補でも足りないほどだ。

《text:Ryo Uchida》

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