【シネマ羅針盤】こんな完ぺきな続編ある?『T2 トレインスポッティング』が奇跡的

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『T2 トレインスポッティング』
『T2 トレインスポッティング』 全 9 枚 拡大写真
この世にはわずかだが「優れた続編映画」が存在する。『ダークナイト』『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』といった名作をはじめ、『トイストーリー』や『スパイダーマン』の続編も成功例だ。そしてこの春、『T2 トレインスポッティング』がその仲間入りを果たした。

同作は1996年に公開された青春映画『トレインスポッティング』の約20年ぶりとなる続編。ダニー・ボイル監督を筆頭に、脚本を手がけるジョン・ホッジ、主演のユアン・マクレガーらが再集結し、前作から20年後の新たなる群像劇を繰り広げる。その時点で、続編映画として他に類を見ない“奇跡”であり、リアルタイムで前作に触れたファンなら誰もが興奮と郷愁を同時に噛みしめ、「こんな完ぺきな続編ある?」とうなってしまうはずだ。

主人公のレントンが、スパッド、サイモン(=シック・ボーイ)、ベグビーを出し抜き、麻薬取引で得た大金を持ち逃げしてから20年。彼らが故郷スコットランドのエディンバラで再会すれば、きな臭いトラブルが巻き起こるのは時間の問題だ。若かった20年前に比べて、見た目は老けても、中身がまったく成長していないという男の悲しい性(さが)。一方、奔放な女子高生だったダイアンが、いまや敏腕弁護士なのだから、女性は聡明でたくましい。

前作で描かれたエピソードや登場人物、さらに実際のシーンが絶妙なポジションに配置され、ノスタルジーを刺激しながら(イギー・ポップの“Lust for Life”が流れる瞬間がシビれる!)、後悔してもしきれない過去/結局は閉塞したまま現在/いまだにお先真っ暗な未来という、中年だからこそ感じてしまう容赦ない時間の残酷さを突きつける本作。20年後を描いた20年ぶりの続編、という重みがあるからこそ成立するドラマ性が最大の武器だ。

歳月の経過に思いをはせれば、前作が30週以上にわたりロングラン上映された渋谷のシネマライズが閉館し、“Lust for Life”をプロデュースしたデヴィッド・ボウイ、薬物を注射したレントンが奈落に沈むシーンで流れる“Perfect Day”のルー・リードもこの世を去った。かたや、ボイル監督は『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を制覇し、ユアンはジェダイ騎士としてライトセーバーを振り回したのだから、人生はわからないものである。

《text:Ryo Uchida》

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