【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭予習(1/5)

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"Ismael's Ghost" 全 4 枚 拡大写真
今年もカンヌ映画祭が5月17日から開催されます。またもや重要監督の新作が並ぶ垂涎のラインアップですが、恒例に従い各部門の予習をしてみます。5回に分ける予定で、全体として超絶に長文ですが、適当にお付き合い頂けたら幸いです。

表記に関してですが、日本語表記に前例が存在する監督はその前例になるべく従い、日本語読みが分からない場合はアルファベット表記のままとします。また、タイトルは英語題名が分かる場合は英題を、分からない場合はカンヌのプレスリリース資料の表記のままにします。

また、どの国の作品なのか知りたい場合もあるので、監督名のあとに監督の出身国を入れました。昨今の映画は複数国合作の場合が多いので、一概にどの国の作品と言い切れないことが多いのですけどね。

各作品に「ひとことあらすじ紹介」みたいな文言をはさむこともあると思いますが、少ない資料をもとにして書いているのでとんでもなく間違っていることもあるかもしれません。そのときはどうかご容赦を!

【コンペティション】
まずはメインとなるコンペ部門からで、下記が全体リストです。

アルノー・デプレシャン監督(仏) 『Ismael’s Ghosts』(オープニング作品/賞の対象外)
ファティ・アキン監督(独)『In the Fade』
ノア・バームバック監督(米)『The Meyerowitz Stories (New and Selected)』
ポン・ジュノ監督(韓)『Okja』
ロバン・カンピヨ監督(仏)『120 Beats Per Minutes』
ソフィア・コッポラ監督(米)『The Beguiled』
ジャック・ドワイヨン監督(仏)『Rodin』
ミヒャエル・ハネケ監督(オーストリア)『Happy End』
トッド・ヘインズ監督(米)『Wonderstruck』
ミシェル・アザナヴィシウス監督(仏)『Le Redoutable』
ホン・サンス監督(韓)『The Day After』
河瀬直美監督(日)『光』
ヨルゴス・ランティモス監督(ギリシャ)『The Killing of a Sacred Deer』
セルゲイ・ロズニツァ監督(ウクライナ)『A Gentle Creature』
コーネル・ムンドルッツォ監督(ハンガリー)『Jupiter’s Moon』
ルーベン・オストルンド監督(スウェーデン)『The Square』
フランソワ・オゾン監督(仏)『L’Amant Double』
リン・ラムジー監督(英)『You Were Never Really Here』
ベニー・サフディー&ジョシュ・サフディー監督(米)『Good Time』
アンドレイ・スヴァギンツェフ監督(ロシア)『Loveless』

僕も現在もっとも敬愛する監督のひとり、アルノー・デプレシャン監督新作『Ismael’s Ghosts』(写真)がオープニングとなりました。コンペ部門だけど賞の対象にはならない「アウト・オブ・コンペ」の扱いです。物語は、新作のクランクインを目前にした映画監督がかつての恋人と再会して動揺するという内容のようで、主演がマリオン・コティヤール、シャルロット・ゲンズブール、ルイ・ガエルら。

題名の『Ismael’s Ghosts』から主人公の名前がイスマエルだと伺えるのだけど、となると傑作『キングス&クイーン』(2004)のマチュー・アマルリック演じる青年の役名がイスマエルだったことをすぐに連想するわけで、果たして関連はいかに…。オープニングから猛烈に楽しみです。

ファティ・アキンは久しぶりのカンヌですね。2007年に『そして、私たちは愛に帰る』が脚本賞を受賞して以来なので、10年振りになるのかな。過去10年、世界で最もドライブする映画脚本を手掛けている存在はアスカー・ファルハディとファティ・アキンの2人だと僕は思っているのだけど、今作『In the Fade』はどうでしょう。主演はダイアン・クルーガー。

『フランシス・ハ』(2012)で我々の心を鷲づかみにした現代アメリカン・インディーの雄、ノア・バームバック監督の新作『The Meyerowitz Stories (New and Selected)』は、仲違いしている家族が久しぶりに再会する物語とのこと。主演がアダム・サンドラー、ベン・スティーラー、エマ・トンプソン、ダスティン・ホフマン。すごい! そしてこれら超ビッグネームに続いて、昨年のTIFFコンペ作『浮き草たち』で来日してくれたグレース・ヴァン・パタン嬢(写真)の名が! 会えるかなあ。会えないだろうなあ。

ところで、この作品に関連したトーク・イベントが先月開催されていたNYのトライベッカ映画祭で行われたそうです。ノア・バームバックとダスティン・ホフマンのトークで、そこでダスティンが「僕の息子が『お父さん、ノア・バームバックからオファーが来てるの? 絶対に出なきゃだめだよ!』って言うから、受けることにしたんだよ」と話していたそうな。いい話です。

ポン・ジュノ監督の新作『Okja』はモンスター映画で、主演がティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノ。これまた豪華。Netflixが製作の一部に入っているそうなので、これはすぐに配信されるのだろうか? 劇場公開がないということはないと思いたいのだけど、どうも僕はNetflix出資映画の仕組みをいまひとつ理解していない…。どうなるのだろう。ともかく、『グエムル』を史上最高のモンスター映画の1本と思っている身としては、ポン・ジュノ監督新作がモンスター映画と聞いて血が沸き立つばかり。

フランスのロバン・カンピヨ監督はカンヌのコンペは初登場。もっとも、脚本家としてはローラン・カンテ監督と組んだ『パリ20区、僕たちのクラス』でカンヌを制しています(2008年のパルムドール)。2004年に監督第1作『Les Revenants(They came back)』を手掛け、これは死者が大量に蘇ってしまい、もとの家族とうまく折り合えるのかという難しい事態を描いた、ホラーではないドラマでした。前作の『Eastern Boys』(2013)はベネチア映画祭のオリゾンティ部門で受賞し、今作『120 Beats Per Minutes』が監督3本目です。若者たちが活動家になる過程を描く内容とのことで、どのようなタッチの作品になっているのか、カンピヨ監督の力量が楽しみです。

ご存じソフィア・コッポラ監督。『マリー・アントワネット』がカンヌの話題をさらったのが2006年だから、あれからもう10年になるんだ! 次の『SOMEWHERE』(2010)がベネチアのグランプリで、その次の『ブリングリング』(2013)はカンヌ「ある視点」部門。なので、意外なことに今作『The Beguiled』が11年振りのカンヌコンペということになります。南北戦争時のヴァージニアの女学校寄宿舎に負傷兵がかくまわれることで起こるドラマ、でいいのかな? 出演クレジットにはエル・ファニング、ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、コリン・ファレルなどなど。すごいですね。

それにしても、こうやってスターの名前の数々を書いているだけで早くもゲップが出そうだ! すごいなあ、もう。カンヌもアカデミー賞ももはや区別がつかないですね。

ジャック・ドワイヨン監督の新作はオーギュスト・ロダンを題材にした『Rodin』。昨今、伝記映画が流行しまくってますが、ドワイヨンが監督して、主演がヴァンサン・ランドンとくれば、これはただ事で済むはずがないでしょう。ドワイヨンはいままでカンヌで大きな賞を受賞していないので、果たして今年は本人も期するものがあるかどうか?(全然無い気もする)。

ヴァンサン・ランドンは、2015年に『ティエリー・クルドーの憂鬱』でカンヌの主演男優賞に輝き、感動のスピーチ(長かった!)が忘れられません。果たしてロダン役をどのように演じているのか、ドワイヨン演出との相性はどうなのか、しかと見届けたいと思います。

『白いリボン』(2009)と『愛、アムール』(2012)でパルムドール(最高賞)を受賞し、5年振りとなるミヒャエル・ハネケ監督新作は『Happy End』。愛の次がハッピーエンドとは、これはなんとも意味深ですな…。ヨーロッパのブルジョワ家庭を描くドラマ、ということくらいしか知らないのだけど、主演は前作同様ジャン=ルイ・トランティニャンにイザベル・ユペールと、マチュー・カソヴィッツ。果たして3作連続パルムドールはあるのか?

トッド・ヘインズ監督新作『Wonderstruck』が、『キャロル』(2015)に続いてコンペ参加です。僕は『キャロル』を過去5年で最も美しい映画の1本だと考えているので、新作への期待が早くも膨らんで張り裂けそうです。もっとも、今回は陶酔を誘うダグラス・サーク的世界ではなさそうで、50年の時を隔てて少年と少女がつながる不思議な物語とのこと。主演はエイミー・ハーグレイヴス(と書きながらよく知らないなと思って調べてみたら、アメリカTVドラマ「ホームランド」のクレア・デインズの姉役の人だった!)、ジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ。

『アーティスト』(2011)でアカデミー賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督の新作『Le Redoutable』は、ジャン=リュック・ゴダール監督とアンヌ・ヴィアゼムスキーの恋愛を描く内容で以前から話題になっていた1本です。カンヌは確実と早くから言われていましたが、ゴダールに扮したルイ・ガレルのスチール写真がなんともケッサクで(写真)期待を煽っています。これは盛り上がること必至でしょう。

ちなみに、これはやはりぜひとも触れたいのですが、ミシェル・アザナヴィシウス監督は『アーティスト』以前の2006年に東京国際映画祭のコンペに参加しており、『OSS117 カイロ、スパイの巣窟』(DVD発売時タイトル『OSS117 私を愛したカフェオーレ』)は見事グランプリを受賞したのでした。僕がコンペの選定担当になる前のことですが、選んだ人も偉ければ審査員も偉かったなあと思いますね。この選定眼と度胸は見習わないと。

驚異の製作ペースが続くホン・サンス監督、またまたカンヌのコンペ入りです。なんと言っても、前作『On the Beach at Night Alone』が2月のベルリン映画祭に出品されて主演女優賞を受賞したばかりなのに、早くも次作が同年のカンヌのコンペに入ったどころか、さらに次の作品『Claire’s Camera』も今年のカンヌの特別上映部門に入っている! つまり、同年にベルリンに1本、カンヌに2本! こんなこと、アジア初はもちろん、世界初なんじゃないだろうか?

コンペの『The Day After』は、ベルリンの作品に続いてキム・ミニちゃん(失礼)が主演で、公私の垣根を超越した確信犯的映画作りが続くのかどうか、興味をそそるところです。まあ、ゴシップ的な関心は置いておくとして、ホン・サンス監督の世界にまたまた浸れることが単純に楽しみです。

カンヌの申し子、河瀬直美監督の新作『光』がコンペに入りました。1997年に『萌の朱雀』がカメラドール(新人賞)、2007年に『殯(もがり)の森』がグランプリ(コンペ2等賞)と、10年毎に大きな賞を受賞し、さあその10年後の2017年は…、との期待も高まります。絶好調永瀬正敏さんと新鋭の水崎綾女さんによる繊細な愛の物語。カンヌでの盛り上がりを見届けていきたいです。

ギリシャ期待の若き異才、ヨルゴス・ランティモス監督は前作『ロブスター』(2015)に続き2度目のカンヌコンペです。新作『The Killing of a Sacred Deer』は、崩壊した家庭を立て直そうとする青年の話、なのかな? エビの次は鹿か…。人を喰った作風のランティモス監督なので、見てみないと全く中身は想像できないのだけど、それだけに期待も高まります。主演にニコール・キッドマン、アリシア・シルバーストーン(!)、コリン・ファレル。こちらも豪華ですな。

ウクライナのセルゲイ・ロズニツァ監督はアート純度の高い作品を作る人で、残念ながら日本の商業公開作はまだありませんが、カンヌの常連監督のひとりです。ドキュメンタリーをたくさん手掛けた後に、初フィクション長編『My Joy』(2010)と2本目の『In the Fog』(2012)が続けてコンペ入りしています。スクリーン映えする雄大な自然の映像が印象に残る作家で、5年振りとなる長編に期待が高まります。

ハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督は、2014年に『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』が「ある視点」部門で受賞し、その年のカンヌの最高の一本だと話題になったのが記憶に新しいです(「どうしてこれがコンペでないのだ?」という声も聞こえた)。もっとも、ムンドルッツォ監督は2008年の『Delta』ですでにカンヌのコンペ入りを果たしており、映画祭サーキットでは名を知られた存在ではありました。しかしやはり『ホワイト・ゴッド』の衝撃が大きく、改めて3年振りの新作に関心が寄せられるところです。新作『Jupiter’s Moon』(素敵なタイトルだ)は特殊能力を備えた移民の男の物語、なのかな? 楽しみです。

しかし、ロズニツァの『In the Fog』とムンドルッツォの『Delta』の印象がどうにも似通っていて、いまの僕にはこの2人がかぶってしまう…。今年のカンヌできちんと決着をつけてくるつもり。

さて、当初のラインアップ発表に含まれていなくて怪訝に思っていたところ、追加発表で無事コンペ入りを果たしたのがスウェーデンのルーベン・オストルンド監督です。『Play』(2011)が東京国際映画祭で監督賞受賞、『フレンチアルプスで起きたこと』(2014)が日本でスマッシュ・ヒット、そして「トーキョー ノーザンライツフェスティバル」で特集が組まれるなど、日本でもルーベン・オストルンドに対する注目度は上がってきているはずです。

突かれたくない人間の本音の部分をえげつなく突いてくるオストルンドの不快感(ホメてる)は、ますます冴えてきている様子で、新作『The Square』もかなり恐ろしい予感がします。僕は春の欧州出張でひとつの場面のクリップを見ていて、それはもうおぞましい(ホメてる)ものでした。ああ、これまた猛烈に楽しみな1本です。

フランソワ・オゾン監督は『17歳』(2013)以来4年振りのカンヌコンペ。それにしても相変わらず多作な人で、前作『Franz』(2016)は昨年のベネチアのコンペ。新作『L’Amant Double』は、1998年の実質長編1本目『ホームドラマ』から数えて17本目の長編作品です。20年で17本。これは本当にすごい。今回は男性セラピストと恋に落ちた女性が次第にその男の別の面を発見していく心理ドラマとのことで、『17歳』でオゾンに見出されたマリーヌ・ヴァクトが本作でもヒロインのよう。多作ながらも駄作が極めて少ないオゾンのことだから、また楽しませてくれるでしょう。

イギリスのリン・ラムジー監督もカンヌとの縁が長い監督ですが、何と言っても『少年は残酷な弓を射る』(2011)の印象が強烈ですね。あれは思い出すのも辛い内容でしたが、監督の確かな力量を証明する作品でもありました。新作『You Were Never Really Here』は、退役軍人が売春組織から少女を救おうとして泥沼にはまる、という物語のようで、今回もヘヴィーなリアリズムを覚悟した方がよさそうです。主演はホアキン・フェニックス。早くも主演男優賞を予感してしまいます。

ベンとジョシュアのサフディー兄弟監督は、2014年に『神様なんかくそくらえ』が東京国際映画祭のグランプリと監督賞を受賞したコンビ(写真)で、新作『Good Time』がカンヌのコンペに選ばれたことには小躍りして喜びました。来日時のエピソードには事欠かず、それだけ僕らにも印象深いチームだったので愛着も一層強く、本当に我がことのように嬉しいです。TIFFで縁の出来た監督のさらなる飛躍を目の当たりにすると、この仕事冥利に尽きるなあと思ったり…。

さて、『神様なんかくそくらえ』はかなりエッジの効いたインディースタイルだったけれども、果たして新作ではどうなっているだろうか? 追い詰められた銀行強盗の物語としか分からないのだけど、主演がロバート・パティンソンにジェニファー・ジェイソン・リーですよ。これはすごいことになっているとしか思えない!

ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督はもはや同国の名匠と呼んでいいでしょう。長編デビュー作『父、帰る』(2003)でいきなりベネチアの最高賞を受賞し、日本公開も実現して話題になりました。『ヴェラの祈り』(2007)はカンヌで最優秀男優賞受賞、『エレナの惑い』(2011)はカンヌ「ある視点」で審査員特別賞受賞。さらに前作の『裁かれるは善人のみ』(2014)はカンヌコンペの脚本賞を受賞し、翌年のアカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされています。

毎回静かなトーンで心を揺さぶるドラマを作り上げるズビャギンツェフ監督、新作『Loveless』は、離婚手続き中の夫婦が行方不明になってしまった子どもを探すべく協力し合わねばならない難しい状況を描く内容とのこと。なんとなくパルムドールを狙えるポジションにもいるような気がするのですが、どうなるでしょう。これまた期待が高まるばかりです。

以上、コンペ部門20本(うち賞の対象は19本)です。去年は21本あったので、最後に1本滑り込み追加があるかどうか?

地域別で見ると、フランスが5本、オーストリア(実質フランス映画)、ドイツ、イギリス、ギリシャ、スウェーデン、ハンガリー、ウクライナ、ロシア、から1本ずつ。アメリカから4本。アジアからは韓国2本で日本が1本。監督名だけ見ていると何の文句もないのですが、南米からも欲しいなあとか、無名の若手がひとりもいないとか、色々と思ってもしまいます。だがそれは欲張りというもの。ともかくカンヌのコンペは特別な世界で、スター監督たちの新作を祝福するのが正しい楽しみ方なのでしょう。

以上、コンペ部門の予習でした。次回はコンペ以外の「公式部門」をチェックしていきます!

《矢田部吉彦》

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