【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭予習(2/5)

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"How to talk to girls at parties" 全 1 枚 拡大写真
カンヌの映画祭の「公式部門(オフィシャル・セレクション)」としては、コンペ部門以外にもいろいろあります。部門間の明確な線引きというのはあるようでない(ないようである?)のですが、個別に見ていきましょう。

【アウト・オブ・コンペティション】
コンペ部門だけど賞の対象とならない「アウト・オブ・コンペティション」扱いになっている作品が、前述のデプレシャン以外にも数本あります。賞の対象でないならコンペと別部門にすればいいではないかとも思うのですが、ともかく大事なことには変わりないので挙げておきます。

三池崇史監督(日)『無限の住人』
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督(米)『How to talk to girls at parties』
ロマン・ポランスキー監督(ポーランド)『D’apres une histoire vraie』
アニエス・ヴァルダ監督&JR監督(仏)『Visages Villages』

木村拓哉さん、カンヌ参上! 僕は連休中に劇場で『無限の住人』を見て、あの壮絶な殺陣をやり切った木村さんのカッコよさはやはり群を抜いているなとつくづく思ったのですが、カンヌの評判も楽しみです(参上! と書いたものの、木村さんがカンヌにいらっしゃるのかどうか僕は知らないです、はい)。

ついにできたか『How to talk to girls at parties』(写真)! このタイトルを始めて見かけてから何年が経っただろうか? ジョン・キャメロン・ミッチェルが完璧主義を発揮してこだわりまくって作ったのでしょう。タイトルから青春映画と思っていたら、どうやら仲間からはぐれたエイリアンがロンドン郊外にさまよいこんでしまう物語らしい。いや、よく分からないけど、主演はエル・ファニングとニコール・キッドマン。楽しみでしかない!

ん? ニコール・キッドマン、と書いたのが(前回ブログと合わせて)3度目な気がする。どうなっちゃうんだろう…。

ロマン・ポランスキー新作はフランス語映画のようで、『D’apres une histoire vraie』という仏語タイトルは英語で言えば「Based on true story」、つまり「事実をもとにした物語」。女流作家が執拗なファンの存在に悩まされる物語とのことで、出演がエヴァ・グリーン、エマニュエル・サニエ、ヴァンサン・ペレーズ。

御年88歳のアニエス・ヴァルダがJRという若い男性監督とともに作ったドキュメンタリーの『Visages Villages』は「たくさんの顔、たくさんの村」という意味。2015年に出会って意気投合したヴァルダとJRが都会を離れて地方を旅しながら撮っていった作品であるとのこと。『落穂拾い』(2000)はじめ、ヴァルダのドキュメンタリーをこよなく愛する者のひとりとして、この作品を見逃すわけにはいきません。

【ミッドナイト・スクリーニング】
深夜枠も「公式部門」のひとつで、今年は次の3本。

チョン・ビョンギル監督(韓)『The Villainess』
ビョン・ソンヒョン監督(韓)『The Merciless』
ジャン=ステファン・ソーヴェール監督(仏)『A Prayer Before Dawn』

韓国勢が頼もしいです。チョン・ビョンギル監督は『殺人の告白』(2012)で知られていますが(その日本版リメイクが6月公開で藤原竜也主演の『22年目の告白―私が殺人犯です―』)、新作『The Villainess』は、殺し屋として育てられたミステリアスな女性による終わりなき復讐の物語だとのこと。アクション、激しいのでしょうか…。見たいです。

そしてビョン・ソンヒョン監督は『マイPSパートナー』(2012)が日本で公開されていてロマンティック・コメディの印象があるけれども、新作『The Merciless』は刑務所内の地位の抗争を巡るスリラーであるらしい。これまたかなり激しいのかな…。深夜枠は翌日に響くのでなかなか見られないのだけど、いずれも猛烈に見たい!

ホン・サンスやポン・ジュノといったカンヌ常連大物監督と並んで、次の世代の若手監督が深夜枠にふたり入ってくる韓国映画界はやはり快調ですね。とてもいい感じ。

ジャン=ステファン・ソーヴェール監督は、アフリカの少年兵の残虐性を恐ろしく描いた『ジョニー・マッド・ドッグ』(2008)が強烈だったけれど、新作『A Prayer Before Dawn』はムエタイの実力によってタイの刑務所の過酷な状況を生き抜く男性を描く実話とのことで、これまたインパクトの強い映画になりそうです。それにしても、これも深夜か…。

【スペシャル・スクリーニング】
日本語で言うところの「特別上映」部門ですが、何らかの意味で「特別」だったり、どちらかといえば社会派や政治色の強いドキュメンタリー作品などは、この「特別上映」枠で紹介されることが多い気がします。

エリック・カラヴァカ監督(仏)『CARRE 35』
ボニー・コーエン監督&ジョン・シェンク監督(米)『An Inconvenient Sequel:Truth to Power』
アルチュール・ドパン監督&アレクシス・デュコール監督(仏)『Zombillenium』
レイモン・ドゥパルドン監督(仏)『12 Jours』
Anahita GHAZVINIZADEH監督(イラン)『They』
ホン・サンス監督(韓)『Claire’s Camera』
ユージーン・ジャレッキー監督(米)『Promised Land』
クロード・ランズマン監督(仏)『Napalm』
Jude Ratnam監督(スリランカ)『Demons in Paradise』
ヴァネッサ・レッドグレイヴ監督(米)『Sea Sorrow』
バーベット・シュローダー監督(仏)『Le Venerable W.』

俳優のエリック・カラヴァカが監督したドキュメンタリー作品が『CARRE 35』。3歳で亡くなってしまった姉の、存在することのなかった人生に眼を向けた個人的な内容であるらしい。身近な死を見つめることで世界を捉えなおす試みでしょうか。とても深い作品になっている予感がします。

『An Inconvenient Sequel:Truth to Power』は「不都合な続編」というタイトルからわかるように、時代を動かすほどの影響力を誇った『不都合な真実』(2006)の10年後の状況を描くドキュメンタリー。出演者にはアル・ゴア、オバマ、トランプの名も。これは必見でしょう。

『Zombillenium』はアニメーションで、本物のモンスターが勤務するテーマパークで人間の少年が働こうとして騒ぎが起こる物語とのこと。とても面白そう。この作品は「子ども向け上映」の対象の1本にもあげられています。

『12 Jours』は、僕がもっとも心酔するドキュメンタリー作家のひとりであり、マグナムの一員で高名な写真家でもあるレイモン・ドゥパルドン監督の新作です。74歳にして毎年のように新作を発表してくれるのでとても嬉しい。新作はホスピスを舞台にしていて、タイトルの「12 Jours(12日間)」というのは、患者がホスピス入りすべきか否かを判断する期間であるようです。東京国際映画祭でも上映した『レイモン・ドゥパルドンのフランス日記』(2012)のような、陽光降り注ぐ世界とはかなり異なる内容と予想されますが、ワイズマン的作品になっているのか、これまた必見と言わざるを得ません。

Anahita GHAZVINIZADEH監督は1989年生まれのイラン出身の女性で、今作の『They』が長編監督第1作。2013年に撮った『Needle』という短編がカンヌの「シネフォンダシオン」(学生部門)で受賞していて、そこから本線へ繋がってきているのでしょう。ファジル映画祭帰りの身としては、イランの女性監督デビュー作と聞いただけで血が騒ぎます。見られますように。

ちなみに、今年の「シネフォンダシオン」には、日本の井樫彩監督の『溶ける』が選出されています。僕は昨年の東京学生映画祭で本作を観客として見ていて、心の中でグランプリに推した作品でした(結果は準グランプリ)。井樫監督もこのチャンスが将来の長編作品のカンヌ入りにつながりますように。応援します。

ホン・サンス監督、驚愕のカンヌ2本目が『Claire’s Camera』。本作は昨年のカンヌ映画祭の最中に撮影されたそうで(だから「特別上映」部門なのかな?)、グランゼコール(フランスの高等職業教育機関)の女性教授と女性作家の物語とのこと。イザベル・ユペール主演でキム・ミニちゃん(失礼)共演。ホン・サンスのふたりのミューズがどう絡んでいくのか、これまた楽しみでなりません。

社会派のドキュメンタリー作家であるユージーン・ジャレッキー監督新作が『Promised Land』。エルヴィス・プレスリーの自伝を通じて、現代アメリカの社会政治を読み解いていくという紹介文だけで好奇心を刺激されます。ジャレッキー監督のいままでの作品を僕は未見なのだけれど、映画祭受賞歴も多く、ドキュメンタリー界では著名な存在のはず。

こちらは説明不要なクロード・ランズマン監督の新作で、『Napalm』。ランズマンは『ショアー』(1985)があまりにも有名だけれども、91歳にして新作を仕上げてくるのがすごすぎる。朝鮮戦争でナパーム弾の爆撃を受けた北朝鮮の60年後を舞台に、ランズマンがかつて著した旅行記もモチーフにしたドキュメンタリー作品であるらしい。これまた必見ではないか!

スリランカ出身のJude Ratnam監督は今回の『Demons in Paradise』が監督1作目。情報があまりないのですが、同国の政治状況に深く関わるドキュメンタリーなのではないかと推察しています。

60年近いキャリアを誇る女優のヴァネッサ・レッドグレイヴが初監督したのが『Sea Sorrow』。移民を巡る危機的状況を描くドキュメンタリー作品で、ラルフ・ファインズやエマ・トンプソンの名前がクレジットされています。そういえばレッドグレイヴは「カメラドール」(監督作1本目に贈られる部門横断の新人賞)の資格がある!

バーベット・シュローダー監督の新作もドキュメンタリーで『Le Venerable W.』。ミャンマーの高名な僧侶に会いに行く過程で、現在の世界をとりまくイスラムへの嫌悪感やヘイト・スピーチの存在について考察していく内容であるようです。

ああ「特別上映部門」、こうやって書いていくと全部見たいじゃないか! これは、困る。本当に困ります!

【VR/インスタレーション】
いまを象徴するVRにもカンヌは敏感、ということですね。

アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督『Virtually Present, Physically Invisible』がその1本で、タイトルはずばり「バーチャルには存在しており、物理的には見えない」。どんな形で「上映」されるのでしょう。イニャリトゥほどのビッグネームが取り組むとなると、いよいよVRも素通りできないですね。

【70回記念イベント】
今年のカンヌは70回。下記の作品が70回記念枠として紹介されるようです。

ジェーン・カンピオン監督&アリエル・クライマン監督『Top of the lake: China Girl』
アッバス・キアロスタミ監督『24 Frames』
デビッド・リンチ監督『ツイン・ピークス』
クリステン・スチュワート監督『Come Swim』

ジェーン・カンピオンの『トップ・オブ・ザ・レイク』はイギリスで放映されているTVドラマで、そのうち数エピソードが今回上映されるようです。僕は同作の最初の数話をロッテルダム映画祭で見ているだけなのだけど、ダークな事件もので滅法面白かった記憶があります。まとめて見てみたい…。

『24 Frames』はキアロスタミの短編群のひとつで、昨年亡くなった巨匠へのオマージュ上映でしょう。

デビッド・リンチ『ツイン・ピークス』に関しては、オリジナルのTVシリーズなのか、現在の新シリーズなのか、はたまた映画版の『ローラ・パーマー』なのか、何をどう上映するのかちょっと調べが追い付いていないです。すみません。ゆっくりと参加したいところだけど、これは無理だろうなあ。デビッド・リンチ来るのかな。拝みに行きたいものだなあ。

そして、クリステンが監督する短編が『Come Swim』。印象派の絵画に触発されたという実験的なテイストの映像であるようで、17分の短編です。これまたどういう形で上映されるのか、クリステンは来るのか(来るでしょう)、気になります。

以上、コンペ以外の「公式部門」を予習してみました。コンペ作品の華やかな面ばかりがクローズアップされがちなカンヌですが、「特別上映」のラインアップを見ると、しっかりと硬派な面も備えていることがよくわかります。カンヌでは体がいくつあっても足りない、という所以でもあります。

次は「公式部門」のもうひとつのコンペ、「ある視点」部門を見ていくことにします。

《矢田部吉彦》

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