【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭 Day0&Day1

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"Ismael's Ghost" 全 1 枚 拡大写真
カンヌ映画祭が始まりました。今年もブログ日記をスタートします!

<5月16日>
16日、火曜日。前夜はギリギリまで残業した上に壮行会と称して一杯だけ飲んでしまったので、出張準備をしないまま寝てしまった。5時半にガバっと起きて、速攻でパッキングを開始する。2週間の出張なのでそれなりに荷物は膨らむのだけど、でもまあ毎年のことなのでもはやあまり悩むこともなく30分くらいで完了し、成田空港へ。

10時30分のチューリッヒ経由ニース行きのスイス航空。機内映画は見ず、パソコンを開いて持参した仕事のDVDを見始める。なかなか面白く、カンヌとは関係ない作品だけどなんとなく幸先がいい気がして嬉しい。

仕事したりウトウトしたりしているうちに12時間のフライトを追えてチューリッヒ着。17時の便に乗り換えて、18時半にニース着陸。タクシーでカンヌに向かい、19時15分にホテル到着し、挨拶もそこそこにマーケット会場にダッシュする。19時半には映画祭のマーケット会場に行きたかった。

到着日に会場内の受付カウンターで映画祭パスやら何やらを受け取って、すべて整えてから翌日の初日に臨みたいので、受付が閉まる20時までにいかにちゃんと会場にたどりつくかを計算することに毎年とても神経を使っているのだ。なので、予定通り19時半に到着できたことに一安心していた。

すると、会場入り口で「もう入場できません」と係員が言うではないか。「事前に送られた案内には20時まで営業と書いてあったので、19時半に入口を閉めるのはおかしい」と厳重に抗議する。諦めるのはあまりに癪なので、「これに間に合わせるためにどれだけの労力をかけてきたと思っているのか? カウンターに並んでいる最中に20時になったから帰れと言われるならまだしも、19時半の段階で入場すらできないということは到底納得できない」と訴えるものの、係員たちは「自分はただの担当者だから」と全く取り付く島もない。

やがて「今日は想定以上に来場者が多く会場が混乱しているから」と係員が説明するので、中から出てきた人に聞いてみると場内はガラガラだとのこと。ここで僕を含めた怒れる人たちが俄然勢い付き、順番に抗議の声を上げ始める。「ちゃんと場内と連携できているのか?」、「そもそも想定以上に人が来てしまったなら、取るべき対応は受付時間を延長することで、早めることではないだろう? それがホスピタリテイというものではないか?」「みんな20時に間に合うように空港から走ってきているのだ!」「そうだそうだ!」「責任者を呼んで来い!」というプチ騒ぎになり、押し問答しているうちに、どこかから連絡が入ったのかオーケーお入り下さい、ということになった。

会場内に入ってみると、やはり受付周辺は全く混乱しておらず、数分ほどで同僚5人分の映画祭パスやら資料入りのバッグやらを引き取ることができた。結局19時55分には全て済んでいた。やれやれ。一体なんだったのだ?

おそらく、昨今の情勢からの判断で今年から警備体制が強化されることになり、その体制が整っていない間に連絡指揮系統が乱れ、必要のない指示が誤って入場口に伝えられたのではないかと想像する。セキュリティーの強化は必然なのでしょうがないけれど、これはちょっと先が思いやられる…。

スーパーに行って買い物をし、それからホテル近所のイタリアンでピザをワインとともに頂き、終わって23時。目を開けていられないくらい眠くて、そのままベッドへ直行。

<5月17日>
17日、水曜日。カンヌ初日。5時に目が覚めて、パソコンを叩いているうちに日が昇ってくる。昨日の到着時もかなりの好天で気温も高かったけど、本日も初夏の陽気になりそうだ!

8時に同僚たちとカフェに入ってパンとコーヒーで朝食ミーティングをして(フランスの朝食はもともと質素でいささかつまらない)、今日を含めたここ数日の予定を確認し合う。早くも陽射しが強い。ここ数年で最も暑いカンヌになりそうな予感がする。

9時半から、フランスの大手映画会社の新作プロモ上映へ。20分ほどで終了。その後マーケット会場に行き、グルっと一周してみるものの、まだまだ準備中の雰囲気全開で人も多くない。まだちょっと早すぎたかな。それから「監督週間」と「ACID」の事務局に行ってそれぞれのパスを受け取る。事務局が開くのを10分ほど外で待っていただけで日焼けした気がする。空は、これ以上は無いというくらいの青空だ。

11時からマーケット試写(カンヌ映画祭に正式出品されていない作品も多く上映する)に行き、『My Friend Dahmer』というアメリカ映画を見る。これは先月開催されたNYのトライベッカ映画祭で好評だった作品で、連続殺人犯として悪名高いジェフリー・ダーマーの少年時代を描く物語。ダーマーのことを事前に知っていないとポカンとするばかりの内容だけれども、逆に知っていると大層面白いという作品で、あとで本物のダーマーの少年時代の写真をググってみたらあまりにも映画の俳優に似ているのでびっくりした。

上映終わり、チキンのサンドイッチを買ってかじり、マーケット会場に戻ってミーティングを3件。

16時から再びマーケット試写に行き、これまたトライベッカで好評だったアメリカ映画『The Boy Downstairs』を鑑賞。『フランシス・ハ』的なオフビートNYガールズ・インディー映画で、とてもセンスの良い恋愛映画で大満足。エンドクレジットになると同時に劇場を飛び出てホテルに戻る。

大急ぎで黒スーツに着替えて蝶ネクタイをつけ、映画祭のメイン会場へ向かう。カンヌでオープニング上映に行くことなど滅多にないのだけど、今年は何といってもデプレシャンなのでやり過ごすわけにはいかない。同僚がとても頑張ってオープニングの招待状を確保してくれたので、心から感謝しつつ、汗だくになって入場してまずまずの席を確保してひと段落。

隣の席の若い女性が「日本人ですか?」と話しかけてきたので、そうですよと答えると、なんでも熱烈な日本と日本文化のファンとのことで、過去2年で2回訪れた東京と京都の旅行のすばらしさを熱く語ってくれる。どうやらまったくお世辞ではないのがよく伝わってくる。そして、なんと、東京国際映画祭でも2年連続で映画を見ているというではないか。僕はそこで働いている人間なのですが、と言ったら、めちゃくちゃ驚いていた。そりゃあ、僕も驚きます。もしかしたら僕が司会を担当した回で質問をしたかもしれない可能性も浮上し、世界の狭さ(というか映画業界の狭さなのかも)をお互い実感しているうちにセレモニーが開始。

70回を記念した華やかでかつ簡潔な演出のオープニング・セレモニー。モニカ・ベルッチが司会で登場し、ペドロ・アルモドバル審査委員長を紹介し(いままでの監督作を紹介する編集映像が素晴らしい!)、続いてファン・ビンビン、アニエス・ジャウイ、パオロ・ソレンティーノ、マーレン・アーデ、そしてひときわ大きな拍手が起こるウィル・スミスらの審査員たちが登壇し、最後はアスガー・ファルハディとリリー=ローズ・デップのふたりによる開幕宣言により、今年のカンヌ映画祭は正式にスタート。

19時15分くらいに始まったセレモニーが40分ほどで終わると、あと20分ほどでオープニング作品の上映が始まりますとのアナウンスが流れ、同時に豪華なセットが施された舞台のバラシが始まる。セレモニーに出席するのは10数年振りだけど、観客の前で檀上の転換を堂々と行うのは以前と変わらない。作業員たちが大きなセットを片付けていく。華やかな演出から一瞬にして現実に戻される。この屈託のなさというか、メリハリというか、セレモニーはセレモニー、バラシはバラシ、という開き直りが何とも気持ちいい。

20時20分になり、大きいスクリーンが現れ、いよいよアルノー・デプレシャン監督『Ismael’s Ghost』(写真)の上映開始。デプレシャンならではの、精緻な構成と大きな感情のうねりが合わさった傑作だ。映画監督に扮するマチュー・アマルリックの演技は近年で最高かもしれず、彼の相手役となるシャルロット・ゲンズブールとマリオン・コティアールの組み合わせも抜群で、ルイ・ガレルとアルバ・ロルヴァケルがサイド・ストーリーを固める。

もっと感想を書きたいところだけれども、ホテルに戻って23時半、時差ボケには勝てず猛烈に眠い。感想は改めることにして、本日は限界…。ともかく、無事に初日は終了し、明日からが本格的な活動開始だ!

《矢田部吉彦》

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