【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭 Day7

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"The Workshop" 全 1 枚 拡大写真
23日、火曜日。カンヌも後半戦。本日も晴天の良い天気。久しぶりに5時間寝たので、生まれ変わった気分!

本日のコンペ公式上映は河瀬直美監督『光』だけで、僕は既に日本で見ているのでほかの上映に回ることにする。前半が終了したコンペの目下の評価は、総じてロシアのズビャギンツェフ監督『Loveless』が高いみたい。去年の『ありがとう、トニ・エルドマン』のように、誰もが口を揃えて絶賛する発見作は無く、どの作品も少しずつ評価が割れている。果たして『光』はどうだろうか? そして本命との呼び声も高いソフィア・コッポラが明日に控えているし、サフディ兄弟は明後日だ。どうなるだろう?

というわけで本日は8時半から「批評家週間」の日本映画『Oh, Lucy!』でスタート。ここまで全く「批評家週間」を見られていないので、我ながらダメだ。昨日ある作品の列に並んでいたら、後ろのフランス人の中年女性が『Oh, Lucy!』を絶賛する会話が聞こえてきたので、よっしゃと思ったのだった。

平柳敦子監督の長編1本目、(敬称略で)主演に寺島しのぶ、共演にジョシュ・ハートネット、南果歩、役所広司、忽那汐里ら。孤独なOLが一瞬の希望にしがみつこうとする姿を描くドラマで、コメディーと呼ぶほど軽くなく、人間ドラマと呼ぶほど重くなく、絶秒なバランスを保ちながら淀みなくストーリーが展開していく流れがとてもうまい。とても新人の作品とは思えないのだけど、逆に言えばカンヌに選ばれる新人にはこの水準が求められ、NYで映画を学んだ平柳監督にしてみれば日本のほかの新人と比べられることは本意ではないだろう。

寺島しのぶさんがやはり抜群にいいのと、共演の南果歩さんが素晴らしい。仲の悪い姉妹を演じていて、ふたりが並ぶととてもはまる。この姉妹を、ノア・バームバック作品で兄弟を演じたアダム・サンドラーとベン・スティーラーに思わず重ねてしまう。大人になった兄弟姉妹の物語が妙に心に響くのはなぜだろう。

他の批評家部門の作品を見ていないので何とも言えないけれども、『Oh, Lucy!』は賞に絡む水準の作品ではないだろうか? 全部門串刺しの新人賞「カメラドール」だって十分に射程内だ。

続いて11時から「ある視点」部門でフランス映画の『Montparnasse Bienvenue』という作品へ。新人女性監督で、主要スタッフにも多く女性が起用されているとのことで、上映前に監督は「女性が中心となって作った作品ですが、そういうことが当たり前になって話題にすらならない時代が来ますように」と挨拶して喝采を浴びる。御意。

エキセントリックな性格で職も家もなく、そして男に捨てられて大騒ぎするヒロインが徐々に人生を立て直していく物語。性格に難があるヒロインが魅力的でないので感情移入が出来ないのだけど、それはあくまで男の目線で「魅力的でない」のかもしれず、女性が作った等身大のリアルな女性像であるとしたら考え方も変わってくる。むしろクリシェを慎重に避けていく展開はなかなか上手いし、監督の次回作が楽しみだ。

上映終わってサンドイッチをかじって、14時からアンドレ・テシネ監督新作の『Golden years』へ。テシネ監督へのオマージュとして公式上映された作品で、14時からの上映はそのマーケット試写。第一次大戦の脱走兵である夫を女性に扮装させてかくまう妻の物語で、実話だとのこと。テシネ監督の作品がまとう優雅な香りを僕は愛するけれど、どういうわけか本作は少し退屈してしまった。

16時から17時半までミーティングを3件。おそらくこの時間あたりに、メイン会場ではカンヌ映画祭の70回を記念するイベントが行われていたみたいで、超豪華な俳優や監督たちが集まって記念写真を撮ったのかな(会場内でどのようなイベントが催されたのかは不明)。そういえば、10年前の60回記念の際には北野武監督がちょんまげのヅラを被って登場して話題になったっけ。ちらりとでも覗きに行ければよかったのだけどなあ。

ミーティングが延びたので夕方の上映に間に合わなくってしまい、サラダを買ってホテルで食べながらブログを少しだけ書いて、18時半にまた会場へ。19時15分のハネケを見ようと思ったのだけど、満席で追い返されてしまった。ああ、ホテルに戻るくらいならもっと早く並んでいればよかった…。まあハネケは明日以降も上映があるので、またチャンスはあるだろう。

気を取り直して、19時半からの「ある視点」部門に出品のローラン・カンテ監督新作『The Workshop』(写真)に並び、無事入場。おさらいすると、ローラン・カンテは『パリ20区、僕たちのクラス』(08)でカンヌのパルムドールを受賞していて、今回は「ある視点」に出品。その『パリ20区、僕たちのクラス』の脚本をカンテと共同で手掛け、今回の『The Workshop』の脚本にも参加したロバン・カンピヨの監督作品『120 Beats Per Minute』が今年のコンペ、という関係。結論から言うと、コンペの『120 Beats Per Minute』よりもこちらの方がよかった!

陽光降り注ぐ南仏のラ・シオタを舞台に、小説執筆ワークショップを開く女性の小説家と、そこに参加する若者たちを巡る物語。ワークショップで議論を交わす若者たちのしゃべくりリアリズムの部分と、小説家と問題児の関係を描くドラマの部分とのバランスがとても巧みで惹きこまれる。近年いささか迷走していた感があるローラン・カンテだけれども、今回は『パリ20区』に近いというか、やはり彼は若者を活写することに秀でているのではないかと思わせる。

本日最後は22時15分から「ある視点」部門でイタリア人女性監督による『After the War』。上映がなかなか始まらず、またまたセキュリティー問題かと思いきや、監督キャストが渋滞に巻き込まれて会場到着が遅れているとのこと。これはこれでしょうがない。30分遅れの22時45分に舞台挨拶が無事に行われ、上映スタート。

元テロリストでフランスに亡命して20年が経つイタリア人が、ある事件に関連したとされて母国に強制送還させそうになり、無関係な娘を無理やり伴って逃亡しようとする物語。主人公の男性の身勝手な言動にフラストレーションが溜まる。もちろん狙っているのだろうけど、まずまずと言ったところかな。とはいえ新人監督(女性)が挑む主題としてはスケールが大きく、大画面に映えるクオリティーの作品を完成させたことは最大限の称賛に価する。

上映終わって0時。空腹に耐えかねて、深夜営業の店でフライド・ポテトを買ってしまい、禁断の揚げ物をホテルでワインとともに頬張りながらブログを書き、そろそろ2時半。ダウンです。

《矢田部吉彦》

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