【MOVIEブログ】2017カンヌ映画祭 Day8

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"The Beguiled" 全 1 枚 拡大写真
24日、水曜日。アラーム時計の力を借りずに目覚め、窓を開けると夜明けに雨が降ったようで地面が濡れている。朝食を済ませて7時半に外に出た時には晴れに転じて、とても気持ちがいい。

本日は8時半のコンペ上映からスタート。期待の高まるソフィア・コッポラ監督新作『The Beguiled』(写真)で、本作がドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の『白い肌の異常な夜』(1971)のリメイクだということを「予習ブログ」を書いていた段階で忘れていた。あの作品をリメイクするとは、ソフィア、さすが目の付け所のセンスが抜群だ。

南北戦争末期の南部、森の中で戦火から隠れるように運営されている女子の施設があり、その施設でひとりの負傷北軍兵をかくまうことから起きる事態を描く物語。ドン・シーゲル版は恐ろしいスリラーになっていたけれど、ソフィア版ではスリラー色は後退し、男性を迎え入れる女性たちの揺れ動く心境の描写に重点が置かれ、まさに100%ソフィア・コッポラの世界だ。

とにかく映像が美しい。森の中に差し込む陽光や、暗い室内を照らすろうそくの光など、光線の操り方にため息が出る。フィルムで撮影したと思われる映像の質感に、まさに「陶酔」するのみだ。様々な作風を持つソフィアだけれど、本作は『ヴァージン・スーサイド』の味わいに近いか。主演はニコール・キッドマン、コリン・ファレル、エル・ファニング、キルステン・ダンストら。これは賞に絡むはず。

今年のカンヌコンペではヨルゴス・ランティモス監督作品に続き、2度目のニコール・キッドマンとコリン・ファレルの共演だ。それにしてもニコール・キッドマンは分かるとして、コリン・ファレル? いや、失礼。こんな偶然もあるのだなあ。

そういえば、映像美へのこだわりはなんと字幕にまで及んでいて、画面の中に表示されるフランス語字幕がクラシカルなフォントになっていた。これはちょっと過去に例を見ないのではないか。脱帽。

続いて11時半から、「監督週間」部門のオープニング作品で見逃していたクレール・ドゥニ監督『Let the Sunshine In』のマーケット試写へ。ようやく追いつくことができて嬉しい。恋愛依存体質気味のバツイチ独身中年女性アーティストが、今後の恋愛の行く末について真剣に思い悩む姿を描く内容。

何というか、ある意味珍しいトーンの作品で、中年女性の悲喜こもごもの恋愛模様を描くけれどもロマンティック・コメディーではないし(ユーモラスな部分はあるけれど)、かといって暗くシリアスなドラマでもない(でもヒロインは真面目に悩んでいる…)。ヒロイン演じるジュリエット・ビノシュが絶妙に上手く、ラストのサプライズ展開もほのかな笑いを誘って後味もナイス。んー、確かにこれはクレール・ドゥニの新境地かもしれない!

そのまま同じ会場で「ACID」部門のヴァンサン・マケーニュ初監督作品『Comfort and Consolation in France』に並ぶ。13時半開始の予定が30分押して14時スタート。本来ならこれを見ても15時からのミーティングに間に合う予定だったのが、30分押したおかげで途中で出るはめになってしまった。なので感想は割愛するけれど、現代フランスが抱える格差の状況を、若者たちが衝突する中で描く内容には引き付けられる力があり、必ず再見しないといけない。

少し遅刻してミーティングに駆けつけ、そのまま17時半まで場所を移動しながら4件ミーティング。

18時からマーケットが主催する映画祭関係者と映画会社の交流パーティーに一瞬だけ顔を出してみる。でもどうしても上映が気になって落ち着かないので30分程度でパーティーを抜け、19時からの「監督週間」を見るべくダッシュする。

アフガニスタンで100本以上のZ級映画を作っている監督を追ったドキュメンタリー『The Prince of Nothingwood』がどうしても見たかったのだ。そして、期待に違わぬ面白さに満足。やはりパーティーを抜けて正解だった。とはいえ、上映を見ていると「社交もしないとダメだな…」という気持ちにもなってしまうので、煮え切らない自分の性格を恨むばかり。

続けて同じ「監督週間」でインドネシアのモーリー・スーリヤ監督『Marlina The Murderer in Four Acts』へ。上映前にモーリーが登壇して挨拶。曰く、インドネシア映画のカンヌでの公式上映は12年振りで、「監督週間」では初だそうだ。インドネシアは若い才能の宝庫なので、今後どんどん欧米映画祭に進出していくはずだ。モーリーはエドウィンと並ぶインドネシアのトップ・ランナーになりつつある。いや、インドネシアだけでなく、アジア映画界を牽引する存在だ。

今作は、人でなしの野郎どもから被害を受ける女性たちの受難をマカロニ・ウェスタンの風味で描く内容で、いままでの繊細なモーリーの過去作と比べると一見ガラリと世界観が変わっているけれど、映像センスの素晴らしさは相変わらずだ。突出した個性を堪能する。

終わって23時半。ホテルに戻ってみると、日本の映画会社の方から感動のおにぎりの差し入れが届いていた! まともな食事と無縁なカンヌなだけに、こんなにありがたいことはない…。むせび泣きながらおにぎりを頬張り、本日はブログを短めに切り上げ、早めに寝て終盤戦に備えることにします!

《矢田部吉彦》

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