※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【MOVIEブログ】2017東京国際映画祭 Day6

30日、月曜日。5時間寝たら、まるで10時間寝たかのような爽快感。外に出ると美しい青空。今日から映画祭も折り返し、素晴らしいリスタート!

最新ニュース スクープ
注目記事
『勝手にふるえてろ』
『勝手にふるえてろ』 全 1 枚
/
拡大写真
30日、月曜日。5時間寝たら、まるで10時間寝たかのような爽快感。外に出ると美しい青空。今日から映画祭も折り返し、素晴らしいリスタート!

10時に事務局入りして、1時間ほどゆっくりメールをチェック。未読未返信の山で、人間失格だ…。11時にシネマズに行き、『さようなら、ニック』の上映前の、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督ビデオメッセージを紹介。2分程度で終わり。月曜日の朝なのに、客席が埋まっていて嬉しい。大雨が平日でなくて逆によかった!

11時から、スプラッシュ部門の『おじいちゃん、死んじゃったって』の2度目のQ&A。森ガキ侑大(ゆきひろ)監督との話はくいくいと進んで楽しい。昨日の舞台挨拶は、主演の岸井ゆきのさん、共演の池本啓太さん、松沢匠さんらが登壇。そしてQ&Aは連日森ガキ監督とじっくりトーク。

監督デビュー作はオリジナルで勝負したいという気持ちが強く、何年も粘ってここまでこぎつけた経緯を聞くと、漫画や小説を原作に持たない企画が通りにくいという日本映画の状況はまだまだ継続中のよう。そんな中、魅力的なキャストを揃え、笑いを交えながら生と死を描き、しっかりエンタメとして通用する王道のオリジナル脚本で勝負に出た森ガキ監督の気概に頭が下がる思いだ。

インドのネタが出てくることを全く知らずに見に来たインド人のお客さんがいたり(とてもウケていた!)、台湾からの方がいたり、昨日はいろんな奇跡があり、本日も家族や性に関する深い質問や指摘に交じり、爆笑を誘うシーンの裏話など硬軟富んだ内容のQ&Aであっと言う間の30分。とても楽しく充実。公開も間近なので、この勢いが興行に繋がりますように!

続いて12時40分から、『さようなら、ニック』の2度目のQ&A。本日もベッティーナさんの受け答えは完璧で最高だ。フォン・トロッタ監督がライト・コメディー(しかし従来の「フェミニズム/ポスト・フェミニズム」的テーマはしっかり盛り込む)を作るに至った経緯や、彼女の経済至上主義に対する考え方を、ベッティーナさんは淀みなくクレバーに説明してくれる。質問も多く受けられるし、とにかくご本人がとっても明るいので、本当にベストゲストの1人。

会場の反応もとてもよく、外に出るとお客さんが声をかけてくれて「コンペにこういう作品が入っていると、いい意味で一息つけてありがたいです」とのこと。もちろん、フォン・トロッタ新作がワールド・プレミアで紹介できるというのは選定時の大きなモチベーションになったけれど、全体のラインナップの中で目先が変わると思ったことも確かなので、そういうアクセントとしても受け入れられているとしたらとても嬉しい。

事務局に戻って13時半。ここから1時間ほど分刻みのスケジュールから解放されてちょっとリラックス。14時にクロージング(もう?)の相談ミーティングが1件あるだけ。

劇場に行くべく外に出ると、ものすごい強風だ。今日は晴れたはいいけど、風が強くて寒い。昨日の豪雨よりはマシとはいえ、外でサイン会をするにはちょっと寒すぎるかもしれない。

15時10分から打ち合わせをし、15時半から日本映画監督協会と東京国際映画祭の提携上映へ。今年の同協会新人賞を受賞した小路紘史監督『ケンとカズ』の上映前の挨拶。なんといっても一昨年の「日本映画スプラッシュ」部門の作品賞作品、2年ぶりの凱旋上映だ。僕が協会のジャン・ユンカーマン監督を壇上に招き、ジャンさんが企画主旨を説明し、そして上映スタート。

いったん事務局に戻って、少しだけパソコン。

16時15分にシネマズ前の階段を駆け上がろうとすると、ばったり杉野希妃さんに遭遇!久しぶりだったのでエアハグで再会を祝し、希妃さんが見た作品の感想を速攻で伺うと、概ね好評で僕は安堵。あと、希妃さんいわく「EXシアターに若者層が増えた気がする」。僕もちょっとそういう気がしていて、しばし盛り上がる。3分程度の立ち話だったけど、映画祭でたくさんの友人知人と遭遇できるのは嬉しい。

16時半から、コンペ『グレイン』の2度目のQ&A。『グレイン』上映後の劇場は空気が濃いというか、映像美を堪能しつつメッセージを大回転で咀嚼している観客の脳の音が聞こえるような、刺激的な空気が流れている気がする。そしてその雰囲気に上手く乗った今回のQ&Aは、今年のベストQ&A候補かもしれない。

ロケ地の話から始まり、本作を貫く精神性について、そして軸となる「息吹か、穀物か」の問いかけの由来と意味の解説を通じて、カプランオール監督が映画を理解するヒントを与えてくれる。観客に答えをゆだねる、という言い方をカプランオール監督はせず、核心に近いことを説明してくれようとする。その説明は決して平易ではないのだけど、とにかく何かに近づいた感じを僕も含めた観客に与えてくれようとしている。そして監督の答えを懸命に吸収しようとする観客の集中力も伝わってくる。素晴らしい雰囲気だ。

そして後半はジャン=マルク・バールさんにもちゃんとしゃべってもらう時間が確保でき、映画に参加した経緯、そして肉体的にも精神的にも過酷であった撮影について語ってくれる。さらにカプランオール芸術の伝播する力について言及し、作家と作品の魅力を総括してくれた。もう、ほぼ完ぺきな流れのQ&Aだ。会場の観客も刺激を受けてくれたはず!

余韻を楽しみたかったけど、次があるのでスクリーンをダッシュで移動。『ケンとカズ』の上映が終了し、続いて小路監督とエドモンド・ヨウ監督との対談トークが企画されたので、僕はその司会進行を担当。

お互いの作品を見てもらっていたので感想を交換してもらい、それぞれの問題意識を語ってもらう。さらに国は違えど同じ30代前半の映画監督として、いまどういう問題意識を持っているかというところに踏み込みたかったのだけど、あっという間に30分が過ぎてしまった。通訳入りの対談トークは30分だとなかなかに辛い。それでもマレーシアと日本の注目の若手が顔を合わせたのは貴重な機会で、10年後に二人がどういう立場になっているかを追っていきたい。

17時40分にトーク終了し、ダッシュでスクリーン7の舞台袖に到着。入ると、全員揃っている! 誰かというと、コンペ『勝手にふるえてろ』の上映前舞台挨拶の関係者のみなさま。僕も待ちに待った日。ついに『勝手にふるえてろ』が世に出る!

18時から舞台挨拶開始で、僕は司会。大九明子監督、松岡茉優さん、渡辺大知さん、石橋杏奈さん、北村匠海さんが登壇。一人ずつ呼ぶたびに、超満席の劇場内がどよめいたり、黄色い歓声が飛んだりする。僕としてはホームであるはずのスクリーン7にアウェー感が漂うけど、心地よい緊張感が自分でも嬉しい。

僕は初日のカーペット上で松岡茉優さんにご挨拶を済ませており、そのときに完全に魂を持っていかれていたので(正確には握手した瞬間に)、もはや彼女の魅力を文字化する能力を持たないのだけど、とにかく正対すると倒れてしまうので、今日は挨拶はそこそこにしてあとは松岡さんを視野見(意味が分からない人は映画を見て下さい)。

渡辺大知さんとは数日前の「SHINPA」で長時間ご一緒したばかり、そして大九監督とは初日以来すでに数回ご一緒したので、僕もそれほど緊張しすぎることなく、とても華やかに盛り上がりながら舞台挨拶は無事終了。

それから上映。僕は初見時から数か月が経ってしまったし、大スクリーンで見たかったので、客席に入って作品を見ることにした(幸いこの上映中に他の作品のQ&A司会をブッキングしていなかった)。そして、中盤と終盤にぶわあーっと涙が流れ出てしまった。この映画のすごさに改めて震える。これは本当に大した作品だ。コンペでお迎えできた幸せを座席で噛みしめる…。

グシュグシュの目をこすって、上映後のQ&A。もう泣いてしまって司会がまともにできません、と壇上で大九監督に打ち明ける。すぐさま客席から質問をもらい、監督が的確に答えて行く。時間が20分しかなかったのだけど、核心的な話が出来たはず。次回もQ&Aがあるので、続きは今度書こう。

21時にシネマズから監督協会のパーティーに移動。とても盛り上がっている! 小1時間ほど滞留して交流。もちろん今日も飲まず。

22時過ぎにEXシアターに移動し、『ザ・ホーム - 父が死んだ』の2度目のQ&A司会へ。前回は少し答えが長かったアスガー監督は、今回はかなり回答をコンパクトにまとめて、たくさん質問を受けることが出来た。葬式をモチーフにした作品を作った背景を尋ねると、現代の人々は仮面をかぶり、自分のアイデンティティーから離れてしってしまっている。その状況を描きたかったとのこと。この回答を反芻し、映画のことを改めて考えたくなる。

あるいは「父の遺体を見せないのはどうしてか」という質問に対し「父の遺体が解剖に回させることに反対する状況において、人々の仮面がはがれ、解剖されるのは生きている者たちだということが分かってくるのであり、そうなると父の遺体を見せる必要はないのです」という回答には膝を叩く。

「イランは男性社会という印象があるが、本作では女性が圧倒的に強い。これは現実?」という質問には、「イランでは母親という存在がほかの何よりも強い」という答えに続いて「イランの葬式は女性が仕切るのが伝統で、なのですべての指示を女性が出し、男性はそれに従わなければならないのです」という答えも面白い。

もちろん、本作の特異な撮影手法についても質問が出て、執拗なクローズアップは人物の心理に迫るためであり、同じフレームに複数の人物が入らないように気を配ったり、観客が抱く疑念を一気に終盤まで引っ張っていくべく、映画内の時間と上映時間がほぼシンクロするというリアルタイム映画を作った意図など、興味深い回答ばかり。

これまたとても充実のQ&A。EXを出て、かなりの寒さの中を事務局に戻り、弁当を食べたりして、しばし休憩。1時からブログを書き、そろそろ3時。今日は絶対に4時前に寝よう!

《矢田部吉彦》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]