映画界にも90年代リバイバルの流れ? アラフォーのノスタルジーを呼ぶ作品が続々

最新ニュース コラム

『リバーズ・エッジ』 (C)2018映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
『リバーズ・エッジ』 (C)2018映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社 全 9 枚 拡大写真
ふらりと立ち寄ったラーメン屋のBGMが90年代のヒットメドレーで、懐かしい気持ちになって、ラーメンをすすりつつ耳を傾けていたら、店を出た後も頭の中でリフレイン! ついYouTubeに懐かしい曲名を次々と入力してしまい…なんて経験はないですか?

時代は90年代リバイバルです。特にその傾向が強いのが、人々の消費に深く関わるCM業界。「○○が売れない時代」(CD、本、雑誌…)、「若者の■■離れ」(※自動車、ビール、海外旅行 etc…)が叫ばれる中、それならばとターゲットを若者ではなく、少し上の世代に定め、彼らの“ノスタルジー”に訴えて、購買意欲を高めようという目論見ですね。

そのあたりのことは、「ラーメンと愛国」(講談社現代新書)などの著書で知られる速水健朗さんが、「1995年」(ちくま新書)、「アラフォー男子の憂鬱」(日経プレミアシリーズ)で詳しく論じています。同書では、2011年に放送されたビール「サッポロ冬物語」のCMで、90年代に絶大な人気を誇った萩原聖人、「私、脱いでもすごいんです」のCMの北浦共笑が、かつての恋人同士という関係で共演し、槇原敬之のヒット曲「冬がはじまるよ」がCMソングとして再起用されていることなどが例として挙げられています。


最近では、全日空のCMで、NYと東京で離ればなれに暮らすカップルの姿が描かれる中、挿入歌として流れているのが1992年から93年にかけて180万枚を超える大ヒットを記録した「世界中の誰よりきっと」ですね。WANDSと中山美穂のコラボレーションによる曲で、中山さん主演のドラマ「誰かが彼女を愛してる」の主題歌であり、中山さんは同曲を92年の紅白歌合戦でも歌っています。現在CMで流れているのは、徳永英明によるカバーバージョン。30代、40代の人にとっては懐かしい曲であり、20代の中には初めて聴いたという人もいるかもしれません。


さて、30代、40代以上をターゲットにした、この90年代ノスタルジーとも言える流れは、映画界にもジワリと押し寄せており、そこには映画界ならではの傾向も見られます。

まず、タイトルを聞いただけで、“90年代ノスタル汁”がじわじわっと分泌されそうなのが8月公開の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。このタイトルを目にした瞬間、30代、40代の多くの人の脳内を「強い気持ち 強い愛 心をギュッとつなぐ…」という歌詞とメロディが駆け巡ったことは想像に難くありません。そして、そのうちの何人かは、YouTubeに「オザケン」と入れて「ラブリー」、「ぼくらが旅に出る理由」「今夜はブギーバック」…と周回を始めたかと思います。 94年発売の「愛し愛されて生きるのさ」の中でオザケンは「10年前の僕ら」が「胸をいためて」聴いてた曲として「いとしのエリー」を挙げてますが、二十数年経って、僕らはあの頃を思い出してオザケンを聴いてるわけですね。

同作は2011年の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイク作品。主人公が、末期ガンに侵された親友の最後の願いを叶えるべく、かつて青春を共にした女子高校生の頃の仲良しグループのメンバーを再結集させようと奔走するという物語です。韓国のオリジナル版では、主人公たちの青春時代を80年代後半とし、70~80年代の洋楽のヒットナンバーなどが多数、使用されていました。日本版では、ヒロインたちの青春時代を90年代に設定されています。

『サニー 永遠の仲間たち』-(C)2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED『サニー 永遠の仲間たち』(C) 2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
メガホンを握るのは『モテキ』の大根仁監督。監督自身、1968年生まれで90年代に20代の大半を過ごした世代です。そういえば、前作『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』はタイトル通り、奥田民生に憧れる男が主人公でしたが、ユニコーンが解散したのが1993年であり、奥田民生のソロデビュー曲「愛のために」が発売されたのが1994年。つまり“奥田民生になりたいボーイ”もまた90年代青春男なわけですね。

この『SUNNY 強い気持ち・強い愛』はストーリー自体、主人公たちの青春時代(90年代)へのノスタルジーを内包してことが予想されますが(まだ映画が完成してないので詳しくはわかりませんが…)、それとはまた違った形で、90年代回帰を促す作品が『リバーズ・エッジ』『ママレード・ボーイ』という、90年代に人気を集めた漫画を原作とした映画です。

『ママレード・ボーイ』文庫版書影 (C)吉住渉/集英社 (C)2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会「ママレード・ボーイ」文庫版書影(C) 吉住渉/集英社
『リバーズ・エッジ』の原作は、1993年から1994年にかけて雑誌『CUTiE』(宝島社)で連載された、80~90年代を代表する漫画家・岡崎京子の代表作。『ママレード・ボーイ』は雑誌「りぼん」(集英社)にて1992年から1995年にかけて連載された、吉住渉による累計1,000万部突破の人気漫画であり、1994年から1995年にかけてTVアニメ化もされ、人気を呼びました。実際、90年代にこれらの作品に触れた世代は、実写映画化のニュースを聞いて「マジで?」と驚き、「なぜいま?」という疑問が頭をよぎったのではないでしょうか? 「なぜいま?」の答えのひとつはやはり、90年代回帰でしょう。10代の若者たちの青春、恋を描きつつ、当時、原作に共感し、胸を焦がした30代、40代にも映画館に足を運んでほしい…。そんな思惑が感じられます。

『リバーズ・エッジ』 (C)2018映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社『リバーズ・エッジ』(C) 2018映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
『リバーズ・エッジ』の主題歌を担当するのは小沢健二! 原作者の岡崎さんとはかねてより親交があり、本作のために新曲「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」を書き下ろしています。『SUNNY』ではタイトルに「強い気持ち・強い愛」とあるのに、現時点で主題歌などに関しての情報は不明なのですが、こちらの『リバーズ・エッジ』は正真正銘、オザケンが主題歌です。

『リバーズ・エッジ オリジナル復刻版』(宝島社)「リバーズ・エッジ オリジナル復刻版」(宝島社)
主演は二階堂ふみ、吉沢亮という、話題作への出演が続く2人ですが、もうひとり、物語の中で独特の存在感を放つ・女子高生モデルの吉川こずえの役を演じているのが、次世代のファッションアイコンとして注目を浴びるモデルのSUMIRE。彼女は、浅野忠信とミュージシャンのCHARAの娘です。その美貌、存在感はもちろんですが、90年代を彩った浅野忠信とCHARA(※2人は1996年公開の岩井俊二監督作『PiCNiC』に主演)の娘の起用には、ドラマ性を感じさせます。あの2人の娘がもう22歳ということに、時の流れを感じますね…。

これらの作品、映画でも原作の90年代を舞台にしているのか? それともあくまで現代に置き換えて描かれるのかは不明ですが、90年代回帰による30代、40代の客層の取り込みはもちろん、主人公たちは10代の若者たちということで、従来の青春映画同様に、若い観客層がターゲットであることは間違いありません。『ママレード・ボーイ』に関しては、2013年より「ママレード・ボーイ」の13年後、光希&遊の妹と弟を主人公にした「ママレード・ボーイ little」が雑誌「Cocohana」(集英社)にて連載されており、若い読者層で映画化を楽しみにしている人も多いでしょう。また原作や時代背景は知らずとも、純粋に吉沢亮(どちらの作品にもメインで出演!)の青春映画、ラブストーリーが楽しみで映画館に足を運ぶ10代も多いかと思います。

『ママレード・ボーイ』(C)吉住渉/集英社 (C)2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会『ママレード・ボーイ』(C) 吉住渉/集英社(C) 2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会
30代、40代のみならず、若い層をも巻き込む形での映画界における90年代回帰がどんな結果をもたらすことになるでしょうか? 今後、さらにこの流れが加速するのか否かも含め、注目です。

《text:Naoki Kurozu》

この記事の写真

/

特集

友だち追加