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【MOVIEブログ】2019東京国際映画祭 Day6

11月2日、土曜日。8時45分起床、3時間半睡眠で、ちょっとギリギリ。でも外に出ると薄曇りだけど気持ちいいので、大丈夫。いよいよ後半戦!

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11月2日、土曜日。8時45分起床、3時間半睡眠で、ちょっとギリギリ。でも外に出ると薄曇りだけど気持ちいいので、大丈夫。いよいよ後半戦!

ところで、昨夜は寝る直前に『戦場を探す旅』の反応が見たくてツイッターを見ていたら、かなり好意的な感想が多くてとても嬉しくて、このまま気分よく寝られそうと思いきや、映画はよいけどQ&Aの司会がクソなのでもう映画祭には来ないというツイートがあり、深く凹む。なかなかよいことばかりが続くわけはないけれど、後半への戒めだと思うことにして、気を引き締めて臨むしかない…。

さて、事務局にて9時半から本日の予定を確認し、もろもろの想定を整理していると時間があっという間に過ぎてしまう。

11時から東京国際映画祭のネット配信番組「TIFF Studio」で、渡辺紘文監督と弟で音楽家の渡辺雄司さんをお迎えして配信。スプラッシュ作品賞受賞者である上に、現在特集がアップリンク吉祥寺で組まれていることもあり、出演を打診したところ、ご快諾下さった次第。映画作りへの姿勢や、「孤高」の存在と呼ばれつつあることについて、そして何よりも日本映画大学時代の師、天願大介監督から言われた「人にほめられようなどとゆめゆめ思うな」という言葉についてなど、30分弱の内容にも関わらず濃い話ができたので、面白い内容になったのではないかな?

そのまま、シネマズにて今年のスプラッシュに出品されている渡辺監督新作『叫び声』の上映後Q&A司会へ。今回は作品に出演している3人の子供たちも監督と雄司さんとともに登壇し、一緒に挨拶してもらう。9歳とのことだけど、しっかりしていてみんな可愛い。

本作を『叫び声』と名付けることとなった背景が、とても辛いものであり、渡辺監督の過去作を見てきている我々にとっても、監督の心中は察して余りある。しかし渡辺監督は作品を作り続けており、さらなる新作を完成させていることを発表した。大田原愚豚舎の邁進は止まらない。

シネマズ内のスクリーンを移動して、12時半からコンペのトルコ映画『湖上のリンゴ』。レイス・チェリッキ監督は本作の開幕を飾るショットを数年前に撮っており、そこからいかに物語を展開していったかを語ってくれる。チェリッキ監督は旅をしながら映画や舞台のアイディアを練るといい、今作の舞台は、ジョージアとアルメニアとロシアの国境が近い東アナトリア。本当に美しい土地。いつか行ってみたいものだ…。

面白かった応答は、「下から煽るショットが多いと思ったが意図は?」という質問に対して、「人間の目線ではなく、大地が人をどう見ているのかという視点で描いた」という答え。そして詩人や歌手を登場させ、言葉の重要性を改めて強調したかったとのことで、多様な思いが込められていることがよく伝わるQ&Aだ。

13時15分に『戦場を探す旅』のオーレリアン監督と落ち合い、ヒルズ内の寿司店に行き、ランチをとりながらじっくりと1時間かけて個人インタビューをする。オーレリアン監督のこれまでのキャリアや、個性的な作家たらんとする信条を語ってもらい、実に刺激的。これもテープ起こしをしなければ。

14時40分から、「ユース」部門のスウェーデン映画『約束の地のかなた』のQ&A司会へ。ヴィクトル・リンドグレーン監督と、プロデューサーのデレース・ヘーグベリさん。舞台となるスウェーデンの田舎町について、地域が現在抱える問題について、監督特有の即興演出について、あるいは手持ちカメラの意図や、主演の少女ふたりのリアルな姿を引き出す演出などについて語ってもらう。

僕はどうしてもラストシーンについて聞いてみたかったので、終了間際に聞いてみると、エンディングはいくつかのパターンがありえたかもしれないけれど、ほぼ最初から決めていました、との答えをしてくれて満足。終わって外に出ると、2度ほどお客さんに話しかけられ、ラストについて質問したお礼を言われてしまった。やっぱりみんな気になっていたのだな! 聞いてよかった。

15時半から明日のTIFF Studioのミーティング。なんだか頭が真っ白になってしまい、言われたことに全然反応できない。まずい。ちょっと宿題を今夜まで待ってもらうことにする。

16時にEXシアターに行き、コンペのイラン映画『ジャスト 6.5』(写真)Q&A司会へ。ここで一瞬の疲れが全て吹っ飛んだ! サイード・ルスタイ監督にようやく会うことができ、そしてナヴィド・モハマザデさん! 映画では悪役の貫禄を付けるために体重を増やしていたけれど、いまでは完全にスリムでカッコいい。本当に素晴らしい俳優で、イラン映画の未来を担う存在でもあり、眼前に立っていることが信じられない。とても気さくな態度で接してくれて、本当に感激だ。

もちろん、直前のペイマン・モアディさんの来日中止には(イランのスター俳優がふたり揃うことに1か月以上興奮し、それを喧伝してもいたから)深く落胆したけれども、こればかりはどうしようもない。Q&A前に僕が登壇してコメントした上で、ペイマンさんが送ってくれたビデオメッセージを流し、そこから改めてサイード監督とナヴィドさんを迎え入れてQ&Aスタート。

サイード監督は少し硬めに話をし、そこをナヴィドさんがユーモア交えてフォローしていくという構図。ナヴィドさんはスターの余裕たっぷりだ。イランにおける、隣国アフガニスタンから流入するドラッグの問題という状況が序盤で語られ、ここはさすがに真面目なトーンで進行する。やがてナヴィドさんの演技の取り組みの話になると場の緊張は和らいでいき、やがて最高の雰囲気の中で終わっていった。作品を堪能したことがはっきりと伝わる会場の空気と合わせて、今年のベストQ&A候補ではないかな? とはいえ、聞きたいことの半分も聞けていないので、制限時間が恨めしい!

その後のサイン会では100人近くのみなさんに、ナヴィドさんは1時間以上をかけて全ての方にサインされ、もう本当に頭が上がらない。ナヴィドさんといい、ドゥニ・メノーシェさんといい、1時間以上もサインをし続けてくれるなんて、真のスター俳優とはこういう人たちのことを指すのかと震える思いがする。

17時に事務局に戻り、少しパソコンに向かう。ふと、ラグビーW杯の決勝がもうすぐ始まることを思い出す。ベスト8以降、全く見られておらず悲しい思いをしていたけれど、いや、オレはオレのW杯を戦っているのだと心の中で強がってみる。もっともその強がりにあまり効果はなく、見たい思いは募る…。まあしょうがないさ。

束の間の遠い目を封印して気分を切り替え、17時45分にシネマズに向かい、「ユース」部門のアイスランド映画『人生、区切りの旅』Q&A司会へ。エルヴァル・アダルステインズ監督から、企画の起源、キャスティング、ロケーションなど、基本的だけれど重要な点を簡潔かつ的確に説明してもらい、スムーズで網羅的なQ&Aになる。

上映後に学生応援団のメンバーとすれ違うと、本作にいたく感動している。若い人に刺さってほしいと思って選定した映画でもあるので、僕もとても嬉しくなる。

事務局に戻って18時半にお弁当を見に行くと、カレーだ! 中辛のポークカレーにサフランライス。チンして頂くと、これが絶妙に塩気が効いた感涙の美味しさ。生き返る!

EXシアターに向かい、19時半からコンペのスペイン映画『列車旅行のすすめ』。さっきの『ジャスト 6.5』に勝るとも劣らない会場の熱気だ。決して簡単な作品ではないけれど、その異様な迫力を多くの観客が楽しんだことが伝わってくる。アリツ・モレノ監督と、原作者のアントニオ・オレフドさん、そしてプロデューサーのティム・ベルダさんが登壇。

モレノ監督は日本語で挨拶し、途端に会場が祝祭的な雰囲気で包まれる。筒井康隆を連想させるクレイジーな映画を楽しんだという意見や、和風の音楽についての質問、そしてフィクションの意義を問うような高度な質問まで、なんとも濃密な30分。内容からして30分で到底語り切れる作品ではないので、もうここはあまりツッコミ過ぎることなく、濃厚なブラックユーモアと迷宮的物語世界を経験した共犯者的歓びを会場で分かち合って楽しむに限る。

興奮の余韻に浸りながら、20時半に作品ゲストが集う六本木の居酒屋パーティに赴き、ウーロン茶片手に乾杯の音頭を取り、監督たちに挨拶したりして、1時間ほど滞在。

21時45分にシネマズに戻り、スプラッシュ部門『タイトル、拒絶』Q&A司会。山田佳奈監督、伊藤沙莉さん、恒松祐里さん、片岡礼子さん、池田大さんのみなさんによるQ&Aで、とても華やかで賑やかでハッピーなワールドプレミア!

山田佳奈監督は本作が長編第1作とはいえ、劇団を率いて久しく、よい意味で新人の佇まいではない。完全にチームのリーダーであり、演出家として全体を掌握している。

とここまで書いて、本日は時間切れ。『タイトル、拒絶』のQ&Aは素晴らしく、作品の将来性は無限であり、もっと書きたいのだけど、後日改めることにして、下記は箇条書き。

・23時からEXシアターにてコンペのウクライナ映画『アトランティス』のQ&A司会。

・0時から、スプラッシュ部門の「特別上映」で上映される『れいわ一揆』の、上映前に企画したトークの司会進行へ。作品はオールナイト枠での上映。

・原一男監督に近年のドキュメンタリーについて抱いている思いをお伺いする前半30分と、れいわ新選組から夏の参院選に立候補した方々(本作の出演者でもある)が加わってトークする後半30分、という構成。そして島野千尋プロデューサーに、原監督の新たな試みについてもかたってもらう。原監督の熱い語りのおかげで、とてもいいトークになったと思う。詳しく書きたい! けれど、ここも時間切れ。

・1時を少し回って『れいわ一揆』上映開始。

・事務局に戻り、残っていたカレー(野菜)弁当を頂いて、同僚たちと少しおしゃべりしながら、パソコンに向かう。ブログを書き始めるものの、普段の数倍筆が遅く、全然進まない。上述のとおり、『タイトル、拒絶』の途中まで書いて、5時。

・『れいわ一揆』の終映予定が5時半なので、本日ブログはここでやめ、これから劇場に向かいます。最後に原監督が挨拶するはずなのでその呼び込みをしてから、観客を送り出し、6時には帰れるといいのだけど。

ということで、行ってきます!

《矢田部吉彦》

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