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【MOVIEブログ】2019カンヌ映画祭 Day4

17日、金曜日。6時半起床でルーティンこなして、外へ。朝からどんより曇り。やはり寒め…。

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17日、金曜日。6時半起床でルーティンこなして、外へ。朝からどんより曇り。やはり寒め…。

今日も8時半のコンペ上映からスタートで、ケン・ローチ監督新作『Sorry We Missed You』(写真)。無理をして小型トラックを購入し、宅配業者に個人事業主としてフランチャイズ契約を結ぶ男と、その家族の苦闘の物語。男は隷属的な労働を強いられ、妻は介護ヘルパーとして幾つもの家を周り、夫婦共々ギリギリの生活を送る中で、高校生の息子が問題を起こし続ける…。

ケン・ローチ監督がその健在ぶりを如何なく発揮する、ぐうの音も出ない傑作だ。流れるようなストーリー・テリングの素晴らしさ、ネット販売の発達によって過酷を極める宅配業のリアルな描写、温かみとユーモアを忘れないスタンス、しかし容赦のない現実認識。家族愛を縦軸に据えながら、横軸には宅配業務や介護業という現在ならではの労働環境に対する痛烈な問題提起を配し、まさにケン・ローチの面目躍如たる新たな代表作であると断言したい。

数十年に亘って高水準の作品を発表し続けるケン・ローチの偉大さに、改めて震撼する。莫大な予算をかけているわけでもなく、世界のどこでも作れるようなシンプルな物語なのに、誰にも真似できないレベルの面白さに仕立てるケン・ローチのマジックとは、いったい何なのだろう? まさに唯一無二の存在だ。三度目のパルムドールも夢ではない。

続けて11時半から「監督週間」のペルー映画で『Song Without a Name』へ。80年代の実話をもとにしたドラマで、安価なクリニックで出産したものの、そのまま子供を奪われてしまう女性の悲劇。おそらく独裁政府ぐるみの陰謀であり、新聞記者の助けを借りて子供を取り戻そうとするが…。

スタンダードサイズの画面にモノクロのアート作品で見入ってしまうものの、残酷ではあるけれど南米映画において拉致蒸発誘拐という主題に既視感は否めず、スローモーションの多様などのテクニックが邪魔に思える時もあり、僕は少し態度を保留。しかし決して悪い映画ではない。

上映終わって即移動し、メイン会場の「リュミエール」(昨日まで「パレ」と書いてしまっていたけれど、「リュミエール」の誤り)で14時からコンペのフランス映画の『Atlantics』。長編1作目となるマティ・ディオプ監督が描くセネガルを舞台にした移民映画の変形版だ。

何が「変型版」なのかは書かないようにしないといけないけれど、セネガルからスペインにボートで密入国を試みる青年と、セネガルに残る女性の愛のドラマと呼んでいいかな。女性は両親から押し付けられた金持ちとの結婚が決まっており、しかし彼女の心は海を渡った青年の元にある…。

一見クラシカルな悲恋物語で、そこに発生する意外な事態を楽しめるかどうかが、作品の評価を分けるはず。僕は、会場の最後方に近いひどい席になってしまったために集中力を保てず、コンペには少し弱いのではないかと思いながらも、感想は保留かな。コンペ作としてケン・ローチと見比べる順番になってしまったのも分が悪かったかもしれない(そういうことに左右されてはいけないけれど)。

上映終わって15時半、ジャパン・パビリオンで15時から開かれているミニ・レセプションに駆け付け(一応ホスト側なので)、17時まで交流。

17時半に上映に戻り、こちらは特別に用意してもらったプライベート試写なので、タイトルは割愛。きちんと満足はしたものの、1点どうしても合点のいかない箇所があり、それが映画全体の出来に影響しているかどうかを見極めないといけない…。

続けて19時45分から「監督週間」でベルトラン・ボネロ監督新作『Zombi Child』と、その後に22時半から同じ「監督週間」で三池崇史監督新作『初恋』。

上映終わってホテルに戻って0時45分。本日も昼も夜も抜いてしまったので、パンをかじって所用を済ませてブログに取り掛かったときには2時を回ってしまい、どうやらケン・ローチ礼賛で本日は終わってしまいそう。眠気に勝てそうにない…。しかしボネロと三池ももちろん重要作なので、感想は明日以降に改めて!

《矢田部吉彦》

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