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【MOVIEブログ】2019カンヌ映画祭 Day8

21日、火曜日。本日も5時間寝られたのでスッキリ。しかし外はどんより曇り。いまにも雨が降り出しそう。

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"Fire Will Come"(c)Pyramide Distribution 全 1 枚
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21日、火曜日。本日も5時間寝られたのでスッキリ。しかし外はどんより曇り。いまにも雨が降り出しそう。

7時半にメイン会場「リュミエール」に行き、1時間並び、8時半からコンペ部門でアイラ・サックス監督『Frankie』から本日もスタート。監督の前作『リトル・メン』が秀逸だったので、とても楽しみにしていた1本だ。主演にイザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、ジェレミー・レニエ、パスカル・グレゴリー、マリサ・トメイ、グレッグ・キニア、などの英米仏の有名俳優が揃っている。

ポルトガルの風光明媚な村に、スター女優のフランキー(ユペール)とその夫と息子、さらに前夫や義理の娘や孫や友人たちが集まってくる。フランキーが彼らを集めたのには、ある理由があった…。

とても魅力的な設定なのだけど、しかしこれが不発だった!有力キャストと魅力的なロケ地は必ずしも映画の出来を正当化しない、という好例になってしまった。

三世代の数組の男女の関係や事情が語られるのだけど、状況があるばかりで全体を貫く物語が弱く、映画が前に向かってドライブしない。基本的に会話劇なのに肝心な会話に面白みがなく、ユーモアも感じられない。ウッディ・アレンやホン・サンスの偉大さを痛感するばかりだ。

アイラ・サックス監督は今後も注目したい存在なので、前のように練り込まれた脚本で戻ってきてもらうことを願う!

続けて11時から「ある視点」部門で、スペインのオリヴェル・ラクス監督新作『Fire Will Come』へ(写真/予習ブログでは『A sun that never sets』というタイトルで紹介していたけれども、こちらが正しい英題のよう)。これが実に素晴らしく、個人的年間ベスト級の作品だった!

山火事を起こして服役していた男が仮釈放で故郷の山村に戻ってくる。実家では母が老体にムチ打って家畜の世話をしており、男は手伝いをしながら山の暮らしに馴染んでいくが…。

冒頭、夜の闇の中、巨大な伐採トラクターが山の木々をメリメリとなぎ倒していくシーンから圧倒的な迫力に満ち、直ちに映画に引き込まれる。続いて、ドキュメンタリー的に地域の人々や暮らしがミニマルに、静かに描かれる。至上の映像詩の世界であり、息子を案じる老母の姿に胸が締め付けられる親子のドラマであり、そしてやがて訪れる圧巻のクライマックスに息を飲むスペクタクル映画でもある。ああ、これは本当に素晴らしい。

傑作との出会いに胸の高まりが治まらない。上映終了とともに万雷の拍手。僕も腕が痛くなるほど拍手を送った…。

ロビーに出て監督に挨拶したかったけど見失ってしまい、セールス会社のブースに寄って感想を伝えたら、作品のトートバッグをもらってしまった。そういうつもりではなかったので少し恥ずかしいけれど、ありがたく頂戴する。

昼は、香港映画祭のトップの方と打ち合わせを兼ねたランチ。自然食品系のカジュアルなお店でトマトとナスの炒め物をご飯にかけたものを頂く。なかなか美味しい。昼から晴れて雨は大丈夫そうなので外のテーブルで食べながら貴重なお話をし、それからマーケット会場に戻って別のミーティングを数件。

15時半に上映に戻り、とある作品(カンヌ映画祭出品作でない)のプライベート試写へ。タイトルはまだ書かない方がいいと思うので感想も割愛。ともかく3時間近くあったので、いささかくたびれた。

劇場を移動して、ちょっと早いかと思いつつも、昨日入場できない経験をしてしまったので(別会場のことだけれども)、20時の作品に18時半から並びに行ってみる。着いてみるとまだ列は3人。ああ、心配性過ぎで恥ずかしい…。

せっかくなので良い席を確保してじっくりと臨んだのは、コンペのダルデンヌ兄弟新作『Young Ahmed』。ベルギーで家族と暮らす13歳のアフメド少年が過激なイスラム教に傾倒してしまい、不穏な指導者にそそのかされて長年教育を受けた女性教師を刺そうとするが…。という物語。

さすがダルデンヌ兄弟、現代ならではの状況を密度の濃いドラマで仕上げてくる。人物に密着するトレードマークのカメラワークで緊迫感とリアリズムを煽り、しかし省略が極めてうまいので上映時間は90分を切っている。これは本当に名人芸だ。

この流れるようなストーリー・テリングと上映時間の関係はマジックとしか言いようがない。短いと全く思わせないのは、観客を完璧な集中に引きずり込むからだろうか。あまりに根が深く難しい問題を取り上げながらも、安直だとの誹り受ける余地が微塵もない、絶妙なエンディング。もう深く唸るばかり。

ただ、ダルデンヌほどの存在になると「このくらいは出来て普通」と思われてしまうから、才人は辛い。ほかの並の作品は到底太刀打ちできないクオリティーなのに、過去の自作と比べられてしまうというのは、超一流の表現者の宿命なのだろうか…。

ならば過去作と比べて具体的にどうなのだ、という突っ込みにはコメントを控えるようにしよう。本作単体で十分以上に見応えがあるのだから!

続けて22時半から「監督週間」部門のフランス映画で『An Easy Girl』へ。南仏に暮らす16歳を迎えた少女が、奔放で豊満な従妹に振り回される夏休みを経て、成長をする物語。

んー、こちらは残念ながらあまりコメントをするほどでもない作品だったかな…。ただ、個人的にはブノワ・マジメルが好きなので、彼がヒロインに影響を与える良い大人の役で登場した点だけでも見て損は無かった。

ホテルに戻って0時半。なかなか文章が座らないブログを1時間書いていると、眠くなってしまい、諦めてこのままアップ申請することにして、そろそろ2時半。

あ、そういえば、本日はタランティーノ新作の公式上映があり、ディカプリオとブラピも登場して大いに盛り上がっていたみたい。僕は全く目撃できなかったので、華やかな報告がこのブログでは全く出来ていないことに申し訳ない気持ちを抱えながら、ダウンします…。

《矢田部吉彦》

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