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【第92回アカデミー賞総括】歴史的快挙!『パラサイト』と米・映画業界の意識改革

第92回アカデミー賞授賞式が2月10日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)が作品賞に輝いた。韓国映画が同賞を受賞するのは初めてとなる。

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ポン・ジュノ監督ら『パラサイト 』キャストも大集結/第92回アカデミー賞授賞式 (C) Getty Images
ポン・ジュノ監督ら『パラサイト 』キャストも大集結/第92回アカデミー賞授賞式 (C) Getty Images 全 11 枚
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第92回アカデミー賞授賞式が2月10日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)が作品賞に輝いた。韓国映画が同賞を受賞するのは初めてとなる。

文字通り「歴史が動いた」と感じた映画ファンも多いはず。ハリウッドの資本が一切入らない韓国映画が作品賞に加えて、監督賞、脚本賞、そして当然ながら国際長編映画賞も受賞し、映画界最大の祭典であるアカデミー賞に見事“寄生”したわけで、第92回にして訪れた歴史的快挙は、これからも多くの人々の記憶に残るはずだ。

ポン・ジュノ監督ほかキャスト&スタッフ/『パラサイト 半地下の家族』作品賞受賞【第92回アカデミー賞】 (C) Getty Images
投票権をもつ会員の大幅増に伴い、選択肢の幅がより広がったともいわれる近年のアカデミー賞。一方で、その投票システムにより“平均的に優れた作品”が選ばれる傾向も強かっただけに(だから『1917 命をかけた伝令』が本命だった)、一癖も二癖もある『パラサイト 半地下の家族』の主要部門受賞はやはり驚くべき結果だった。メキシコ映画『ROMA/ローマ』が快進撃を続けながら、作品賞は『グリーンブック』に落ち着いた昨年とは大違いである。

ひとつ見えてきたのは、現代社会の急速な変化を目の当たりに、「自分たちも変わらなければ」とようやく重い腰をあげた、アメリカの映画業界の意識改革だ。多様性をトレンドとして持ち上げ、やり過ごそうとしていた“支配層”の思惑は崩れ、多様性こそが主流である時代が到来した現代。それを受け入れなければ、映画の未来がないことに、彼らも気づき始めているのだろう。

『パラサイト 半地下の家族』(C) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
『パラサイト 半地下の家族』の快挙の裏で、ハリウッド黄金期を懐かしむ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(10部門候補で2部門受賞)、ポン・ジュノ監督も敬愛するマーティン・スコセッシ監督のNetflix映画『アイリッシュマン』(9部門10候補で無冠)といった話題作は、大きな勝利を収めることができなかった。映画界が視線を注ぐべきは輝かしい過去ではなく、不穏な現代、そして不透明な未来であり、『パラサイト 半地下の家族』にこそ、それらが映し出されていたのだ。

一夜にして起こった映画界の地殻変動は2020年も継続するはずだ。今後の課題は、やはり女性映画監督に対して、いかにチャンスを与えるか。今年の授賞式では、女性の存在感が発揮されるシーンが多かったが、その裏には女性監督が1人もノミネートされなかった監督賞への痛烈な批判があった…。こうして、変化の道を歩みだしたアカデミー賞。今後、『パラサイト 半地下の家族』のシナリオがそうであったように、アカデミー賞にも予想もつかない展開が待ち構えているとすれば、映画ファンはそれを大いに期待すべきだろう。

《Ryo Uchida》

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