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【インタビュー】俳優・長澤まさみ、まだ会ったことのない“自分”に出会うとき

第43回日本アカデミー賞で、長澤まさみは最優秀助演女優賞を受賞した。受賞コメントにて、長澤さんは、「まだ会ったことのない自分を目指して、これからも励んでいきたいと思います」と誠実に語った。

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長澤まさみ『MOTHER マザー』/photo:You Ishii
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第43回日本アカデミー賞で、長澤まさみは最優秀助演女優賞を受賞した。受賞コメントにて、長澤さんは、「まだ会ったことのない自分を目指して、これからも励んでいきたいと思います」と誠実に語った。その言葉から半年も経たぬうちに、彼女は有言実行した姿をスクリーンに映し出すことになる。

気高く・強く・美しい楊端和(『キングダム』)から一変、最新主演映画『MOTHER マザー』で、長澤さんは瞳を濁らせ、気性の激しい、息子への歪んだ愛を心に宿したシングルマザー・秋子になった。

『MOTHER マザー』(C)2020「MOTHER」製作委員会
「『MOTHER マザー』に関しては、秋子のような役を周りの人がやらせたかったんじゃないのかな? って、ちょっとだけ思ったりもしました。ある意味で、秋子のようなイメージのない私が、この役をやることの意外性みたいなものもあるのかもしれないな、って」と、長澤さんは新たな役どころについて反芻する。周りも本人も見たことのないキャラクターを、確かに作り上げた手ごたえを感じながら。

「演じていて面白いかどうかもわからない」けど、魅力を放つキャラクターを演じて


長澤まさみ『MOTHER マザー』/photo:You Ishii
仕事もせず、その日暮らしで、周囲のすねをかじって生きる母親――にわかに理解し難い秋子というキャラクターを演じる上で、長澤さんは、これまでとは異なる準備期間の過ごし方をしていたという。

「実は、秋子を演じる前まで、明るい役や強い役が続いたりしていたんです。ワッと感情的な雰囲気を持つ役が多かったので、1度払拭したい思いがありました。それに、お芝居をするときは、いつも自分の感情が巻きついている感じがしていて」。

『MOTHER マザー』(C)2020「MOTHER」製作委員会
「秋子になるためにはダラッとした生活感が見えるといいなと思って、撮影に入る前までは、家でテレビを観ながら、お菓子を食べながら、すごくダラダラした生活をするようにしていました。撮影の前の日とかは、ちょっとむくむような物を食べたりとかして。ふしだらに見えたらいいなと思ったんですよね(笑)。小さい積み重ねかもしれないですけど、そのダラダラの時間を持てたことが、振り返ってもよかったです。纏う空気感は、自分の意識していないところについている気がするので」。

長澤まさみ『MOTHER マザー』/photo:You Ishii
たびたび見せるうすら笑いも、急に怒鳴りつける情緒不安定さも、何を考えているのか・考えていないかのすら読めない秋子の心情を、細かく巧みに掬い取るような演技は、物語のトーンを作り出し、居心地の悪さまで漂わせる。およそ俳優冥利に尽きる役とも言えそうだが、本人は「演じていて面白いのかどうかも…ちょっとわからないですね」と苦笑。「こんな人、だって嫌いだもん(笑)。全然好きになれないですよ、秋子なんか。正当化もしたくないし、認めたくないです」と吐露した。

好感も共感も抱けない役柄ではあるものの、遼(阿部サダヲ)、宇治田(皆川猿時)、赤川(仲野太賀)と、男たちは次々と秋子に陥落していく。外見や中身の美しさではない、得も言われぬ魅力に虜になる様子は実に本能的であり、本作のキャッチコピーにも踊る、「聖母か、怪物か」という秋子の不思議な二面性を醸す。

『MOTHER マザー』(C)2020「MOTHER」製作委員会
「秋子は天性の人たらし、みたいな感じなのかな。ある意味、裏のマドンナと言ったら変だけど、闇のマドンナなんですかね(笑)? 何が魅力なのかはわからないけど、魅力がある人って、いますよね。例えば、男の子にすごく人気な女の子を見ていると、愛らしいとも天真爛漫とも違う…言葉で形容するのが難しい、言動やたたずまいの魅力を思う瞬間があるんです。秋子はそれに当てはまるんじゃないかな、人の心が動くってそういうところなのかな、と思いました。秋子の息子・周平(奥平大兼)目線だけだったら、ここまで物語に興味を持てなかったのかもしれないですし、だから『MOTHER マザー』自体も映画になったのかな、と思うんです」。

長澤まさみ『MOTHER マザー』/photo:You Ishii
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《text:赤山恭子/photo:You Ishii》

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