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『おわらない物語 アビバの場合』トッド・ソロンズ監督インタビュー

『ウェルカム・ドールハウス』、『ハピネス』などで、人間の屈折や残酷さを乾いたユーモアとともに描いてきた異才トッド・ソロンズ監督。彼の待望の最新作が、2004年ヴェネチア映画祭コンペティション部門に出品され、絶賛を浴びた『おわらない物語 アビバの場合』だ。本作の日本公開に合わせて初来日したソロンズ監督に生の声を聞いた。

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『ウェルカム・ドールハウス』、『ハピネス』などで、人間の屈折や残酷さを乾いたユーモアとともに描いてきた異才トッド・ソロンズ監督。彼の待望の最新作が、2004年ヴェネチア映画祭コンペティション部門に出品され、絶賛を浴びた『おわらない物語 アビバの場合』だ。本作の日本公開に合わせて初来日したソロンズ監督に生の声を聞いた。

物語は『ウェルカム・ドールハウス』の悲劇のヒロイン、ドーンの死から始まる。この衝撃的なシーンから物語が始まることに、ソロンズ監督は「主人公のアビバは13歳の女の子ですが、『ウェルカム・ドールハウス』でも11歳の少女を描いていたので同じように見せたくありませんでした。あえてドーンを登場させることで観客の混乱を避け、2つの作品の違いを明快にしたかったのです」と狙いを語った。

また、アビバという1人の人物を8人の女優が演じていることも見どころのひとつである。「キャスティングの決め手は“イノセンス”と“デリケート”でした。これが8人のアビバを結びつける糊になると思ったのです。実際、母親役のエレン・バーキンは複数のアビバと接したわけですが、彼女は『黒人でもラテン系でも赤毛でも、それこそジェニファー・ジェイソン・リーであろうと全員同じに感じた』と言っていました」。ちなみに撮影中にそれぞれの女優たちが顔を合わせることはなかったという。

原題の『Palindlomes』とは「回文」(上から読んでも下から読んでも同じ言葉)の意であり、主人公である「AVIVA」の名前も回文となっている。そこにはソロンズ監督のこのような思いが込められている。「人間の持つ“変化を拒む”という回文的な性質のメタファーとして使っています。姿やかたちは年齢とともに変化しますが、一方で変わらない部分もあります。この映画でアビバの外見がどんなに変容しても、イノセントなところは最初から最後まで変わりません。人が自分の欠陥や限界を受け入れることによって解放され、自由になるのはいいことなんじゃないかと思っています」。

これまでのソロンズ監督の作品と同様に、本作もサバービアの住人を通して普段は隠されている人間の本音と体裁の間にあるものを暴き出す。そのあまりの正直さゆえに“ダーク”や“ブラックユーモア”と形容されることも多いが、監督自身には必ずしもそういう認識はないようだ。「私の作品のテーマは人間や人生であり、そういったものを扱うとダークになってしまうというだけです。それが他人から見て“タブー”と言われるものであったとしても、テレビや新聞などのメディアで取り上げられていない題材などひとつもありません。ただその探求の仕方がメディアとは異なり、私は(現象そのものよりも)どうしてこういうことになるのかを理解しようとしています」。

この作品でも中絶などの社会的な問題を扱っているが、決してスキャンダラスに語られるわけではない。「問題に対して賛成・反対の立場を主張することが目的ではありませんし、観客が映画によって簡単に自分の意見を変えるとも思いません。それだけ人間は自分の持っている偏見に引きずられているものです」。

最後に「(ことの是非が問われる問題について)意見を言うのは簡単ですが、実際に危機に面したときにどう対応するのか…この作品を観て自分の価値観を再評価し、見つめ直して欲しいと思います」と、作品への思いを語ってくれたソロンズ監督。言葉のひとつひとつに独自の世界観が凝縮されていた。

《シネマカフェ編集部》

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