『そして、ひと粒のひかり』カタリーナ・サンディノ・モレノ、ジョシュア・マーストン監督来日記者会見
コロンビアの社会問題を扱った話題の映画『そして、ひと粒のひかり』。貧困と麻薬問題を中心に、ひとりの女性が困難に直面しながらも、新たな人生を切り開いていく姿を綴り、アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、世界各国の映画祭で46部門にノミネート、サンダンス国際映画賞観客賞を始め、24部門で受賞を果たした。
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秋の日本公開に先立ち来日したのは、監督のジョシュア・マーストンとデビュー作でいきなりオスカー・ノミネートを手にした主演女優のカタリーナ・サンディノ・モレノ。都内で行われた記者会見では、揃って満面の笑みを見せた。
まずは、各国で映画賞を受賞してきた感想を聞かれ、「賞を受け取るのはいつも嬉しいこと。ただ、どんなフィルム・メーカーもそうだと思うけれど、皆何かを受賞するために映画を作るわけじゃない。観客と繋がりたいという思いがあるんだ。だから、サンダンスで受賞した観客賞が一番嬉しかった。観客と心が通じたということだと思うからね。もちろん、オスカーのノミネートも光栄だったよ」と答えた監督。
アカデミー賞授賞式に出席し、その時の心境を「楽しかった!」と語ったのは、主人公マリアを演じたカタリーナ。「まさか、この作品がアカデミーに絡むなんて信じられなかったわ。考えられる最も素晴らしい経験のひとつよ」。コロンビアからN.Y.へとやって来る“ミュール”(麻薬を飲み込み、胃の中に入れて密輸する運び屋)を繊細に演じた彼女。役作りについて聞かれ、主人公母親の友人が経営するバラ農園での、2週間にわたる労働が、マリアへの理解を深める良いきっかけとなったと言う。「それまでは、ミュールをやろうとする人たちの決断をなんて安易なんだろうと思っていたの。でも、マリアが経験するようなバラ農園でのきつい労働を実際にやったことで、彼女の気持ちを深く理解するための貴重な経験になったわ」。
麻薬絡みの内容だけに、記者からは「製作の際に危ない目に遭ったのでは」という声も。「そうだよ、危険と隣り合わせだったんだ、なんて言えたらちょっとはセクシーに聞こえるかもしれないけれど(笑)、実はそんなことはなかったよ。僕が話を聞いた人々は、逮捕されて刑務所に入っていたからね。我々は、彼らが麻薬に関わることになった背景を理解するべきなんだ。子供にご飯も食べさせられないという屈辱的な状況で、決断を下した男性もいる。責任ある行動とは言えないけれど、子供にとっては良い父親かもしれないんだよ」。
『そして、ひと粒のひかり』の原題には、“Based on 1000 true stories.”(1000の実話にもとづく)というサブタイトルがつけられている。「これは、映画の中で描かれていることが、特別なことでもなんでもなく、日常茶飯事だということをわかってもらいたくてつけたんだ。ミュールたちを、悪者として刑務所に放り込み、自分とは関係のない人たちとして社会と切り離すのは簡単。でも、映画を通してマリアに同情し、彼らを人間として観てもらえるなら、多くの人が今起きているドラッグ戦争で何が行われているのか理解し、意識を変えてくれるんじゃないかな」。
日本公開はこの秋、渋谷シネ・アミューズほかにて。
《シネマカフェ編集部》
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