『ぼくを葬(おく)る』レビュー
余命3ヶ月を宣告されたゲイのフォトグラファーは、その事実を告げぬまま、不仲の家族と和解もせず、愛する恋人を部屋から追い出す。『まぼろし』から始まったフランソワ・オゾンの死をテーマにした3部作の2作目の主人公は、相手にはその機会を与えぬまま、自分のほうだけ別れを告げて死んでゆく。これを勝手と見るか許せるかが好き嫌いの分かれ目。普通の話になりそうなネタにばっちりついた“オゾン印”は、子供を作るためにカフェで妻のセックスの相手を探している不妊夫婦のエピソード。死を前に父親から主治医まで次々と押し倒しそうな男の生への憧憬は、ひょんなことから女相手に子供を作ることで結実。もちろん女相手じゃムリなので、望みもしないのに3Pに付き合う羽目になった夫が気の毒やら笑えるやら。『スイミングプール』より『まぼろし』に近いウェルメイドなこの作品には少ないけれど、個人的にはこういうヘンで意地悪オゾンが好き。
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《text:Shiho Atsumi》
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