「ババアだって何だってやりたい」鈴木京香『アルゼンチンババア』インタビュー
よしもとばななが2002年に発表した同名小説を映画化した『アルゼンチンババア』。その“ババア”を鈴木京香が演じることで、製作前から話題になっていた本作が完成。3月24日(土)の公開を前に京香さんにお話をうかがった。
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子供の頃、近所に強烈なキャラクターはいなかっただろうか? いつも同じ場所で見かけるような、かといって仲良くなるわけでもないような…。
「伝説のホームレスみたいな人がいました。時々、車で通りかかるとその人が見ていたりするような。だからそういう人の役だな、と(笑)。それくらい子供に覚えられてて、気味悪がられているような外見にしなくちゃと思って、最初はどんどんエスカレートしそうになったんです」
確かに、あの京香さんが!と驚くような出で立ちだ。白髪のロングヘアに、どこがどうなっているのか分からないような洋服。こうした扮装は京香さん、メイクさんや監督、衣裳さんと話し合いながら決めていったそうだ。
「奈良(美智)さんのイラストで長い黒髪の姿や、原作の中での描写もありましたから、白髪のあるロングヘアみたいなイメージは、みんなが持っていました。ただ、そこに時代からちょっとずれたアルゼンチン風の洋服を着ても、まだ“ユリ(アルゼンチンババア)”じゃないな、という感じだったんです。近所の子供が気味悪がるような雰囲気をなかなか出せなくて。より汚くしようとして逆にやりすぎてしまったりもして、決まるまでに時間がかかったんです」
そうしてスタッフと話し合っていく中で、今回はいつも以上に気になることがあったという。
「やっぱり、みんなの意見ってすごく大事だなと思いました。特に今回はメイクさんや監督や衣裳さんだけじゃなくて、他のキャストの方たちの、堀北真希さんが演じるみつこちゃんが思うアルゼンチンババアってどんな感じだったのかしら?とか、役所広司さんが演じる悟の描くユリと離れてないだろうかと、いつも以上にほかのキャラクターがどう見るか、というのがすごく気になりました」
その悟という男性。妻が亡くなったことを受け入れることが出来ずに、娘のみつこもほったらかして、ユリの元へ逃げ込んでしまう、という少々情けない役。京香さん自身は、こんな男性をどう思うのだろうか?
「自分が高校生の時に、こういうお父さんを目の当たりにしたら、本当にイヤだし許せないと思うんだけど…でも役所さんが演じていらっしゃるお父さん像は、今の自分なら全然許せちゃうんですよね。お父さんの弱さみたいなものを分かってあげたい気持ちになっちゃって(笑)。きっと今の私はそういうお父さんを、弱くてどうしようもないけれども、そういうお父さんなんだって受け入れてあげられそうな気がするんですよね。私自身、娘としてみても、『アルゼンチンババア』のおかげで、自分の父に対しても、前よりおおらかになれたような気がするんです」
「よしもとさんの原作を映画化するの? やりたい!って思った」と、本作に出演した理由を教えてくれた京香さん。しかも共演は『バベル』などでハリウッドでも活躍している役所さんだ。「自分も女優ですけど、役所さんみたいな役者になりたいと思うんです。そういう、尊敬している方とご一緒できる自分は幸せです。もし、一緒にできないことになったら、自分で自分のことを反省しなきゃいけないような気もするし」
「今は、割烹着の似合うおふくろさんっぽい役がやりたいんです。周りに言うようにしてるので、いつか来るんじゃないかと思っているんですけど(笑)」と言う京香さん。では次回作は決まっているのだろうか?
「本当にお母さんっぽい役がやれそうなんです。まだはっきりと決まったわけではないんですけど、自分の気持ちではそれかな、って(笑)」とのこと。「やってみたい、演じてみたいと思っていると、そういうお話をいただくんです。ご一緒したい俳優さんだったり、監督だったり。だから、すごく幸せですね。タイミングの良さと幸運にいつも感謝しています。だから、そういうお仕事をいただいた時は絶対やらなきゃ。ばばあの役だって何だって(笑)」
《photo:Toru Yoneyama》
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