「あとは観客が好きに解釈してくれればいい」フランソワ・オゾンが語る『エンジェル』
『まぼろし』や『8人の女たち』、『スイミング・プール』といった作品で、女性の美しさばかりか業の深さまでも、誰も思いつかないような形で活写してみせたフランソワ・オゾン。前作『ぼくを葬る』は、彼の分身とも思える青年の死生観の物語だったが、最新作『エンジェル』は、再び女性が主人公。その波瀾万丈な半生を思いきりドラマティックに描く。貧しい家庭に生まれ、上流階級に強い憧れを抱いて育った少女・エンジェルが、やがて人気小説家となり、夢見た人生──富も名声も愛する男性も手に入れる。だが、過去やつらい現実とは向き合わず、自ら作り上げた虚構の世界に逃避することで、彼女の人生には、取り返しのつかない歪みが生じていく。往年のハリウッド映画を意識したカラフルな映像と、新たに見出したミューズ、ロモーラ・ガライの怪演が、ヒロインの悲哀をヴィヴィッドに訴えかけてくる。
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「僕は、男性の方が実は女性を描けるメリットがあると思う。男性の目で少し距離をおいて、女性を客観的に理解できるから」とオゾンは語る。「感性で物事をとらえる、女性ならではの思考が好きなんだ。映画では、男性はどうしてもアクション主体になりがちだけど、女性の方が豊かに描けると思う」。
オゾンにとって、初の英語作品となる本作は、イギリスの女流作家、エリザベス・テイラーの小説が原作。「友達から『このヒロインを気に入ると思うよ』と薦められたんだ。彼の言う通りで、僕はエンジェルに夢中になった」。
「映画を撮り終えたから、彼女との恋はもう終わり」と笑って前置きした後で、エンジェルというキャラクターの魅力をこう語った。
「自分に嘘をついている彼女の脆さに惹かれた。現実逃避したいという思いは僕自身も感じたことがある。子どもの頃は誰だって空想をするものだけど、エンジェルは大人になっても変わらず、生涯嘘をつき通した。そこに、切なさを感じたんだ」。
実際のロモーラ・ガライは金髪だが、『エンジェル』では黒髪のヒロインを演じている。
「原作に従ったわけだけど、とても良かったと思う。白い肌と青い瞳に黒髪という白雪姫みたいなビジュアルで、ヒロインの強い個性が表現できる。ちなみに、あれは日本製のウィッグなんだよ」。
『まぼろし』と『エンジェル』を比較して、「どちらも現実を受け入れず、妄想の中に生きている女性の物語」と言い、「形を変えても、僕は結局同じことを描いているのかもしれない」と分析するオゾン。
「自分が感動した物語を、観客にも伝えたいと思って作ってる。だから、映画を作ったら、あとは観客が好きなように解釈してくれればいい」と言う。
「とても知的に自分の映画を解説する監督はフランスには大勢いる。『すごいインテリだ』と感心して、その監督の作った映画を観に行くと、駄作だったりしてね(笑)。僕自身はそういうギャップはなるべく作りたくない。くだらないことばっかり言ってるけど、映画は良かった、と思われるようにしてるよ」。
『エンジェル』は12月8日より日比谷シャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。
『エンジェル』公式サイト
http://www.angel-movie.jp/
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