ファッション小噺vol.66 ふくれっ面アンナのブルジョワファッション
いまでこそ、服で身分格差を感じることはさほどないかもしれませんが、昔は、いま以上に服が語る身分の違いは顕著でした。ちょんまげだって着物の着方だって、町人と武士とでは違っていましたし、ヨーロッパならちょっと前までブランド物を持てるのはごく限られた人々で、そういう上流階級の女性たちは、きれいに整ったヘア、カシミアのセーターにタイトスカート、パールのネックレスといったスタイルから、ひと目でそれとわかったものです。まあ、少しはその傾向は残っていますが。
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2008年1月下旬に日本公開となるフランス映画『ぜんぶ、フィデルのせい』は、1970年のパリを舞台に、ブルジョワ家庭に育つ少女・アンナが、共産主義の影響を受けた両親の変化、それに伴う生活の激変を受け入れていく様子を描いた作品。ここに登場する両親というのが、絵に描いたようなハイソな人々なのですが…。
スペインの貴族階級出身で弁護士という父と、「マリ・クレール」誌編集者であるお嬢様ママ。なのに、当時の世界情勢に刺激され、「富は分配すべし」との思想を持ったことで、暮らしの全てを一変させます。ブルジョワ的なスタイルを捨て、思いっきりヒッピーファッションに身を包むようになるのです。当時は、いま以上に庶民と上流階級の人々の格差があったはず。となれば、ブルジョワ階級の人々が、ヒッピーファッションで出歩くなど、強い意志の表れ以外の何ものでもないのですから。
そんな両親たちの劇的な変化に、最初、反発するのがアンナ。ふくれっ面で、あれもいや、これもいやと騒ぎ立てては、両親を困らせます。お手伝いさんのいる庭つきの広い家に暮らし、美味しい食事に舌鼓を打ち、バカンスには祖父母の暮らすボルドーのシャトーで過ごす。アンナにとって当たり前だったこんな生活が全て消えてしまうのですから無理もなし。ミッキーマウスさえ、「ファシズムだ」と言って取り上げられる始末。キューバから逃げてきていたお手伝いさんは、「これはみんなフィデル・カストロのせいなのよ」とアンナに耳打ち。実はこれがタイトルの由来になっているのです。
そんな不満のせいでしょうか。衣裳の話に戻りますと、両親が変化を続けるも、アンナだけは相変わらずブルジョワ的キッズ・ファッションで貫かれます。ちょうちん袖の花柄ワンピース、紺色のタートルネックセーター×オレンジのタータンチェックスカート×カラータイツ、ブラスボタンのついた丸い襟のコートなど、とにかく良家のお嬢様風でかわいい。そんな彼女が、変化を受け入れるときは果たして来るのか。もちろん、それは本編を観てのお楽しみ。
ファッションが見せる登場人物の心理変化も見逃せないこの作品。監督は、名匠コスタ=ガヴラスの愛娘、ジュリー・ガヴラス。父譲りの社会派視点と女性らしいお洒落感を披露したこのデビュー作、なかなかのものですよ。
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