世界の映画館vol.13 ヘルシンキ「キャンディ食べながら、パンク映画を観る!」
ヘルシンキの中央駅周辺に見つけたシネコンにふらりと立ち寄った。ハリウッド映画やイギリス映画の中にフィンランド製作の映画も上映している。平日は6ユーロ(約900円)の入場料だが、日曜日だったため、週末料金の10ユーロ(約1,500円)を支払い、フィンランド製作のパンクのドキュメンタリー映画を観ることにした。100名程度の客席にはスキンヘッドの男性やカラフルな頭の女性などパンク映画に相応しい姿は目につくのだが、何よりオレンジの袋を持っている客が、かなりの割合でいて、時折、その袋の中から取り出したキャンディを口の中に放り込んでいる。そういえばロビーから劇場に向かう途中、キャンディ屋があった気がする。
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
フィンランドではみんなキャンディを食べながら映画を観るのか、それともたまたまキャンディ屋のあるシネコンだったからかは分からないが、どちらにせよ僕もキャンディが食べたくなり、一度、客席を出てキャンディ屋に向かった。100種類以上はあろうキャンディやチョコからスコップ状のスプーンで好きなだけすくって、オレンジ色の袋の中に放りこみ、レジで重さの分だけお金を払うシステムのようである。5、6種類放りこみ、約2ユーロ(約300円)支払って、客席に戻るとすでに予告編が始まっていた。
予告編の音に混じって袋の中を漁る音が、かすかに聞こえる。恐らくキャンディを選んで口に放り込んでいるのだろう。僕も同じように口に放り込み始めた。中には、なんじゃこりゃというキャンディもあって、なかなか楽しい。最初は、袋の中から一つ一つ確認しながら口に放りこんでいたのだが、そのうち面倒になり指でつまんだ物をそのまま放り込むようになっていく。まるでキャンディの闇鍋をやっているように。
映画は、パンクが好きな若者とパンクに生き続けた高齢者を綴ったドキュメンタリーだった。英語字幕もなく全くわからないフィンランド語のみの上映だったが、かなり楽しめる作品だった。この映画の影響を受けたのか、翌日、僕はヘルシンキの美容室で髪の毛に赤色を入れた。
(text/photo:ishiko)
《シネマカフェ編集部》
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