※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

「エイリアンチックな映像が撮れて良かった」『バグズ・ワールド』カルデロン監督

オオキノコシロアリとサスライアリ。この2つの種族による闘いを記録した『バグズ・ワールド』。フランス・ドキュメンタリー界の鬼才、フィリップ・カルデロンは、「彼らの生態を普通のドラマティックな映画として製作したかった」と言う。

最新ニュース インタビュー
注目記事
『バグズ・ワールド』フィリップ・カルデロン監督
『バグズ・ワールド』フィリップ・カルデロン監督 全 3 枚
拡大写真
オオキノコシロアリとサスライアリ。この2つの種族による闘いを記録した『バグズ・ワールド』。フランス・ドキュメンタリー界の鬼才、フィリップ・カルデロンは、「彼らの生態を普通のドラマティックな映画として製作したかった」と言う。

「アリは興味深い体つきをしています。いわゆるSF映画に出てくるエイリアンのような、もしくは現代の彫刻を思わせるような体つきをしているんです。そういった面で彼らの姿をフィルムに残すということが非常に面白いのではないかと思いました」と、本作を制作した理由を語る。撮影はアフリカのブルキナファソで行われた。
「まるでギリシャ悲劇に出てくるカテドラルのような、美しい城と言っても過言ではない蟻塚、しかも肉食・雑食のサスライアリと、シロアリという2種類のアリが同時に生息している場所がブルキナファソだったんです。雨季になりますと、サスライアリは遊牧します。その途中でシロアリの蟻塚に到着して、そこを食い荒らすということはよくあるんですが、実際にそのようなことが起こって物語になりました」。

そうなのだ。本作はドキュメンタリーでありながら、まるでフィクションのようにストーリーが展開する。
「撮影前にアリの研究者と一緒にシナリオを書いたんです。科学的根拠、アリの生態に基づいたストーリーです。それをフィクションのような形で撮りました。確かに演出の部分もあります。いわゆるドラマツルギーと呼ばれるものを、本当の虫の世界を映画として作るために使ったと言えると思います。アリというのは外的要因に対して非常に機械的な、まるで自動装置のような反応をします。そこを理解して、いわゆるサスペンス映画のような演出をしたんです」。

その撮影を可能にしたのは、ボロスコープ・レンズという新機材。
「カメラ自体は1台で、レンズを変えながら撮影していきました。医療用で人間の体内に入れられるようなレンズですので、蟻塚に穴を開けて、その中を通して蟻塚の撮影をしました。あとは、本当にある蟻塚を切り取って、スタジオの中でも撮影しています。大きな蟻塚と小さなアリという対比が、大きなカテドラルと小さな人間というギリシャ悲劇のような効果をもたらすことも意識しました」。

撮影はスムーズに、シナリオ通りに進んだが、やはりそこは自然が相手。予想外の出来事も起こった。
「予想外というか、これまで知られていなかったアリの実態が分かったということはあります。研究者はアリの生態、蟻塚の中でどういう暮らしをしているのかは研究しますが、アリがほかの種類のアリをどうやって攻撃するのかということについてはあまり研究していません。ですから本作にあるように、サスライアリがどうやってシロアリを襲ったのか、どうやって軍隊を組んでいったのかというようなことは、今回実際に映像を撮りながら初めて知ったことでもあったんです。僕自身、とても印象に残っているシーンで、上から鎖のようになりながら、アリが下りてくる場面があります。こうしたアリの姿は、いままで映像で撮られたことはありません。ですから、高いところにアリを集めて、はしごを外して下りられないようにしたんです。彼らが自分たちで鎖のように連なって下りてくるというエイリアンチックな(笑)、ちょっと気持ち悪い映像が撮れたので良かったですね」。

《シネマカフェ編集部》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]