世界の映画館vol.24 ラスベガス「映画を観る気にならない街?」
「映画」は非現実な世界に連れて行ってくれるが、「映画を観る」という行為は生活の一部になる。生活感のないラスベガスという人工の街に、映画館という建物はひょっとしたら似合わないのかもしれない。街を5日間歩きながら、映画館を見つけることができない理由を考えていた。MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)映画のシンボルでもあるライオンが飾られた「MGMグランドホテル」、『ラスベガスをぶっつぶせ』の舞台になった「プラネットハリウッドホテル」など、映画にまつわるホテルはあるのだが、肝心の映画館が見つからない。
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ラスベガス最終日の午後、ホテルが立ち並ぶメイン通りから少し離れたフリーモント・ストリートの中で地味に上映しているシネコンを見つけた。今、この原稿を書きながら、建物の写真を見ているとそんな地味でもないのだが、ラスベガスの街に滞在していると古びて地味に映るから不思議である。映画館に向かう人の姿はなく、3階のフロアにあるシネコンに向かうエスカレーターに乗る。チケット売り場の周囲も、若いカップルが一組いるだけで活気は感じられない。6.5ドル(約700円)を支払い、日本でもまもなく公開予定の『ゲット スマート』というスパイコメディを観ることにする。定員100名程度の館内は、40度を超えるラスベガスの街から急転直下、アイスクリームの格納庫に入れられたような寒さである。客がいないから冷房が効き過ぎているのか、ただ冷房が強いだけなのかは分からないが…。
僕以外の観客は親子二組の計4名のみ。どうやら一緒に来たようで、子供たちは一番前の席、お母さんたちは真ん中の席とお互い友達同士で観る。彼らは席に座るとすぐに売店に向かった。太ったアメリカ人をイメージしたときにモデルになりそうなお母さんたちは、右手にバケツのような入れ物に入ったポップコーン、左手に丸太のような入れ物に入ったコカ・コーラを持って席へと戻ってきた。僕まで吸い込まれそうな勢いでコカ・コーラを飲んでいる。一人のお母さんのストローから「スコッ!」と飲み物がなくなる音を知らせる頃、映画は始まった。彼女は飲み物なしで残り全てのポップコーンを食べるのだろうか。
(text/photo:ishiko)
《シネマカフェ編集部》
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