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元気になれる動物映画vol.3 ここに犬あり! 『ホルテンさんのはじめての冒険』

今月は動物映画を取り上げてきましたが、今回は異色作をご紹介したいと思います。動物映画とは呼べませんが、動物がいい演技を見せている映画です。

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『ホルテンさんのはじめての冒険』 -(C) 2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RIGHTS RESERVED
『ホルテンさんのはじめての冒険』 -(C) 2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RIGHTS RESERVED 全 3 枚
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今月は動物映画を取り上げてきましたが、今回は異色作をご紹介したいと思います。動物映画とは呼べませんが、動物がいい演技を見せている映画です。

2008年のカンヌ国際映画祭ある視点部門に出品されたのをはじめ、各国の映画祭に出品され、またアカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表となった作品なので、ご存知の方もいるかもしれません。ベント・ハーメル監督の『ホルテンさんのはじめての冒険』です。ハーメル監督といえば、最小限の描写の中で驚くほど雄弁にストーリーを展開した『キッチン・ストーリー』で、私の心を鷲掴みにした人。その彼の新作とあって、大喜びで観に行きました。

主人公はノルウェー鉄道の運転士オッド・ホルテン。女っ気のない規則正しい生活を送り、もうすぐ67歳の定年を迎えるところ。それなのに、退職当日に初めての遅刻をしてしまいます。混乱したホルテンでしたが、そこを発端にして崩れていく日常には、驚くほど楽しい冒険があふれていたのです。

とはいえ、彼が体験する冒険とは、さほど突飛なことではありません。いままで出会うことのなかった個性的な人々との出会いだったり、プールで靴をなくしたために赤いハイヒールを履くことだったり。“何事にも始めるのに遅すぎることはない”という静かで温かなメッセージに似合う、愉快で優しいエピソードが満載なのです。

そこでホルテンが出会う者の一人(?)が、とある老人の愛犬モリー。のっそりと動き、家にいる間はほとんど寝転がっていて、人間を上目遣いで見ている大型犬。このモリーは、登場場面は少ないながら、犬ならではのチカラ(日々の生活を豊かにしてくれる存在感と温かさ)を存分に感じさせてくれます。愛想はないのに、その堂々たる佇まいがどうも気になる。フレームの端に入ってきただけで、どうしても目で追ってしまうのです。

実はこのモリー、本作で2008年のカンヌ国際映画祭パルム・ドッグ賞審査員特別賞を受賞している名優。パルム・ドッグ賞とは、2001年に創設された賞で、その年の出品作で優秀な演技を見せた犬に贈られているもの。お気づきの通り、同映画祭の最高賞であるパルム・ドールをもじって名づけられた賞。犬たちが飼い主とともに電車やバス、カフェに自由に出入りしている様子を頻繁に目にできる欧州らしい粋なはからいですよね。受賞犬には、“PALM DOG”の文字が入った首輪が贈られるそうですが、モリーは“HONORABLE PRIZE”の文字が入った首輪をもらった模様。授賞式には監督が代理で参加したそう。ただ、映画の中のモリーの様子から想像すると、名誉ある首輪をしてもらっても、「それが何か?」と素っ気ない表情を見せそうですが。

ちなみに過去の受賞犬が出演した作品は『アニバーサリーの夜に』、『過去のない男』、『ドッグヴィル』、『モンドヴィーノ』、『天空の草原のナンサ』、『マリー・アントワネット』、『ペルセポリス』。この賞を設けた英国人ジャーナリスト、トビー・ローズ氏は「犬は映画にとって非常に重要な存在だが、完全に忘れられるから」と、パルム・ドッグ賞の存在意義を語っているそう。

このラインナップを見て、「あっ、あの犬かな」と思い当たった人は、相当の犬好きかもしれませんね。気になった人は公式サイト( http://www.palmdog.com/)で確認を!



『ホルテンさんのはじめての冒険』公式サイト
http://www.horten-san.jp/

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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