心技一体となり、闘うヒロインに チョン・ジヒョン「目に見えない、心の痛みが魅力」
凛とした、揺るぎないたくましさ。韓国きってのクール・ビューティ、チョン・ジヒョンはそんな魅力を放つ。『猟奇的な彼女』、『僕の彼女を紹介します』で男性を翻弄する、強引でエキセントリックな女性像を鮮明に印象づけたかと思えば、『デイジー』では寡黙で繊細な女性を演じるなど、演技の幅を広げてきた。そんな彼女が次に選んだのは、人類と“オニ”の壮絶な闘いを描いたサバイバル・アクション『ラスト・ブラッド』。人類の運命を背負うヒロイン・サヤを通して、全く新しい女性像をスクリーンに放つ。
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初アクション挑戦へと導いた、サヤの魅力
圧倒的な映像美と独自の世界観で各国のクリエイターから絶賛を浴びた、フルデジタルアニメーション『BLOOD THE LAST VAMPIRE』待望の実写化となった本作。元々、原作は観ていたそうだが、今回の出演の決め手は“キャラクターの魅力”だったと言う。
「俳優というのは、常にいいシナリオ、いいキャラクターとの出会いを探しているものです。自分が得意とする表現や、あるいは表現したいものをキャラクターの中に反映させたいという気持ちを常に持っていますから。この原作のアニメーションを観たときには、サヤのキャラクターや映画の雰囲気に魅力を感じ、とっても気に入りました。いつかこういう役をやりたいなと思っていた矢先に、今回のシナリオをいただいたので、すごく嬉しかったですね」。
黒髪のおさげにセーラー服、手には日本刀、そして宿敵“オニ”を鋭く見抜く黒い瞳——。原作の鮮やかなビジュアルをそのまま体現、さらに約3か月の訓練を積み、過酷なワイヤーアクションにも果敢に挑戦し、サヤを完璧なまでに演じてみせた彼女。「女優として苦労したことはいままでそれほどなかったけど、今回は二度とアクションに出たくないと思うくらい、肉体的につらかった」とふり返るが、おかげで「数多くいる女優の中で、一番足蹴りが美しいと言えるかも(笑)」とも。
「今回、このサヤというキャラクターは、刀さばきももちろんですが、空中で足蹴りをするという動きが多かったんです。制服で回し蹴りをすると、スカートがヒューと舞うんですが、そこはビジュアル的にも素敵に撮れるので、足を使うことに重点が置かれてましたね。でも実際やってみたら本当に難しくて大変でした…」。
父を殺した宿敵への復讐を誓う人間の心と、自分の体に流れる“オニ”の血。その間で、自身の中にある“悪”を恐れながらも、宿命づけられた闘いに身を投じていくサヤ。ハードな身体的な演技と並行して、彼女の内面を表現することはさらなる試練となった。
「肉体的な大変さもさることながら、そういう中で感情表現するというのは、本当に精神的に大変なことでした。でも、彼女を作る周りのいろんな要素に助けられた部分もあります。例えば、サヤが着ている制服というのは彼女の気持ちを隠してくれる、そういう仕掛けでもあったような気がするんです。それから、彼女の感情の変化にも気をつけました。最初はとにかく復讐しなければという気持ちだけなので、演じる上でもほかの感情は必要ないかなと思っていたんですけど、彼女も周りの人たちを通して、忘れてしまっていた昔の感情をどんどん取り戻していくんですよね。そういう部分を表現するのも、自分にとってはとてもやりがいがありました」。
強さの中にある、心の痛みに共鳴
また、サヤを演じるにあたり「表からは見えない、心の痛みにすごく魅力を感じた」と語るチョン・ジヒョン。
「映画を通して、サヤは鬼をどんどん殺していきます。でも、その殺した鬼を見て、哀れみの情を抱く彼女を演じたときに、その内面をうまく出せたのではないかと思います。また、サヤって表向きは10代の普通の高校生に見えますよね。でもいざ刀を持って、敵を倒すという行為も彼女の日常になっているんです。その対極にある2つの表現が出来たということ自体が、この映画の魅力になっているのではないかと思います」。
そして、本作の最大の見せ場となるのが、悪の根源であり最凶の敵“オニゲン”演じる小雪との対決シーン。先日揃って並んだプレミアイベントでは、すっかり打ち解けた様子の二人だったが、共に世界を視野に入れる女優として、互いにいい刺激を与える存在となったようだ。
「小雪さんは『ラスト サムライ』を観て素敵な女優さんだと思っていましたし、現場でご一緒できる日を指折り数えてました。何とか親しくなろうと、最初は英語で話すべきかなどと考えたりしてたのですが、実際に会ってみたらとっても率直な方で、とても良い友達になることが出来ましたし、おかげで気楽に、楽しく撮影に臨めました」。
いままでにない試練を乗り越えて、「自分が成長するきっかけになった」と充実した表情でふり返る彼女のその言葉は、スクリーンを通して確実に証明されている。
《シネマカフェ編集部》
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