小雪インタビュー 「いまは、ものを捨てに捨ててる。わたし、出してます(笑)!」
“クールビューティ”という言葉で形容されることが多いが、愛犬と共に現れた彼女は飾ったところがなく、何よりよく笑うひとだった。「美貌の秘訣は?」という問いにも、ニッコリ笑って「自炊です。食べたいと思うものを食べるのはいいことだから自分で作って食べてます! 今回のロケ地の函館でも自炊だったんですよ」と生活感を感じさせる答えが返ってくる。さて、そんな小雪の最新出演作『わたし出すわ』。この不思議なタイトルの映画で彼女は、かつての同級生たちの夢や希望のために、ポンッと大金を差し出す女・麻耶を演じている。謎めいた空気を持ちつつも、見ていてどこか温もりや安心感を与える麻耶は、自然体の小雪さんの姿とぴったり重なる。映画の公開を前に話を聞いた。
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麻耶を理解するポイントは函館にあり
「自分だけが満たされるのは本当の幸せではない。(お金を)何かに還元しようとするところには共感を感じますね」と麻耶について語る小雪さん。だが、その人物像についてほとんど説明のないこの役を演じるのは簡単なことではなかった。そんな彼女が「麻耶が掴めた」と感じた瞬間があったという。ポイントは撮影が行われた“函館”という街だった。
「監督がおっしゃるニュアンスをどう繋げて伝えていくか…正直、撮影しながらもすごく悩んでました。ふと『なぜ彼女は函館に執着するのか?』って考えたとき、この街特有の空気感や土地柄、人々が彼女を惹きつけているんだということを肌で感じたんです。人間の感情と行動って論理的に結び付いてないことが多くて、必ずしも『こういう理由でこうする』という風に動いているわけではないんです。大人はそれをすぐに結び付けようとするけど、無自覚なままに行動してる人って実は結構いて…。それはそれで意味があるんだって思い始めたら、麻耶という役に対して気負いがなくなったんです。私は撮影の期間中ずっと函館にいて、『本当に悩んでたのか?』って疑われるくらい満喫してて(笑)。そうすることで無意識に麻耶に近づいていったのかなと思います」。
映画を観ると、否応なく「幸せとは?」、「お金と幸福の関係」などについて考えさせられる。小雪さん自身の“お金との付き合い方”を尋ねた。
「18歳くらいでモデルの仕事を始めて、年齢には見合わないような収入があったんですが、成人するまでお金に関しては両親に管理を任せていたのでずっとお小遣い制で(笑)。特にその頃はお金を意識したことってなかったですね」。
「失くした方がいろんなものを受け入れる余裕ができる」
そうして仕事を続けていた小雪さんだったが、年を重ねていく中である変化が…。
「20代の頃、身につけるものなどについて、何が自分に合っているのかを見定めるためにいろいろと買った時期がありました。逆にいまは、全く何も買わなくなって一掃のときなんです。捨てに捨てまくって(笑)、友人が家に来るたびに『家のものがなくなってるね』って言われてます」。
そういった心境に至るきっかけが何かあったのだろうか?
「人は、持てば持つほどいろんなものが受け入れられなくなるんだって気づきました。いつもきれいにメイクして、アクセサリーをつけてると、そうでない自分ではいられなくなる。得ることよりも失くすことの方が難しいですね。でも、失くした方がいろんなものを受け入れる余裕ができるんです。楽しいですよ(笑)。この前も、ダンボール13箱分の本を出しました。わたし、出してます(笑)!」
その上で、自らのお金に対する哲学をこう語る。
「自分を豊かにするためにお金を使うのはすごくいいことだと思いますよ。セーブするだけがお金との付き合い方じゃないんですね。私も、さっきも言ったようにいろんなものを買った時期があったし、それが必要じゃないと思えるようになって、いまの状態があるわけで。お金の使い道をふり返ることは必要ですが、自分で納得ができるなら、いいと思います。(買うことで)モチベーションが上がることもあるしね」。
「出来ないことを発見するのが楽しい」
ハリウッド作品にアクション、そして今回のようなドラマとこの10年で数々の作品に出演してきたが、自身の中で感じている女優としての変化や成長は?
「出来ないことの方が増えますよ。出来るようになったなんて全く思わないです。以前は大人になれば完全になる、得意なことばかりになるって想像してました。でも、年齢を重ねるごとに感じ方も深くなり、他人を許すキャパシティも増える。そうするとその分、自分に対して厳しくなるんです。そこで『出来ないことってこんなにもあるのか?』って感じてます。でも、そういう壁や現実とどう向き合うかは自分次第ですね。私はそれが“発見”になっていて、すごく楽しんでます。そこでどうするか? 私は根が体育会系なので(笑)、出来ないことをやりたくなるんです。もちろん、仕事もあって時間も限られてくる。そこでどう付き合うか、人生って勉強だなって感じてます」。
今回、意外にも映画単独初主演となったが「主役か? 脇役か? そういう立ち位置には興味ないです。逆に、『この人とやりたい』って思ったらワンシーンだけでも出ますよ」とあくまで自然体で、“女優”でいることを楽しんでいる小雪さん。彼女の言葉のひとつひとつ、そして挑戦は全ての女性へのエールのように響く。“クール”なんて言葉では表せない“熱”が彼女の内から伝わってきた。
衣裳
・ワンピース:PINKO(ピー・エム・ジェイ 03−5468−2081)
・ピアス:TENTHOUSANDTHINGS(テンサウザンドシングス伊勢丹新宿店 03−3351−7374)
・ブレスレット:シェイスビー(ラ・フェリア 0120−03−7299)
・靴:マグリット(フェド&ビヨンド 03−5467−7555)
《photo:Hirarock》
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