※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

『脳内ニューヨーク』監督インタビュー 「金があれば僕もN.Y.をもう一つ作るよ」

言葉で説明するのがこれほど厄介な映画もなかなかない。人生に行き詰った劇作家が、突如手に入れた大金で新作の芝居を作り始める。それは、自身の頭の中にある“理想のN.Y.”を実際のN.Y.のとある倉庫の中に作り上げてしまうというもの。己の人生そのものを投影させつつ、十数年もの歳月をかけて“もう一つのN.Y.”が作り上げられていくのだが…。この複雑怪奇な映画『脳内ニューヨーク』でメガホンを握ったのは『マルコヴィッチの穴』、『エターナル・サンシャイン』などの話題作の脚本を執筆してきたチャーリー・カウフマン。何を意図し、何を訴えたくてこんな凄まじい映画を作ったのか? 公開を前に作品について語ってくれた。

最新ニュース インタビュー
注目記事
『脳内ニューヨーク』 チャーリー・カウフマン監督 -(C) Shu Tokonami
『脳内ニューヨーク』 チャーリー・カウフマン監督 -(C) Shu Tokonami 全 3 枚
拡大写真
言葉で説明するのがこれほど厄介な映画もなかなかない。人生に行き詰った劇作家が、突如手に入れた大金で新作の芝居を作り始める。それは、自身の頭の中にある“理想のN.Y.”を実際のN.Y.のとある倉庫の中に作り上げてしまうというもの。己の人生そのものを投影させつつ、十数年もの歳月をかけて“もう一つのN.Y.”が作り上げられていくのだが…。この複雑怪奇な映画『脳内ニューヨーク』でメガホンを握ったのは『マルコヴィッチの穴』、『エターナル・サンシャイン』などの話題作の脚本を執筆してきたチャーリー・カウフマン。何を意図し、何を訴えたくてこんな凄まじい映画を作ったのか? 公開を前に作品について語ってくれた。

まず、主人公・ケイデンを劇作家にした意図を尋ねてみた。劇中のケイデン同様に、作品の中の登場人物に脚本家・監督としての自らを投影させた部分はあるのだろうか?
「最初に脚本を書くときに、芸術家のカップルで、しかもそれぞれが別の分野のアーティストという設定にしようと考えたんだ。劇作家を描くのは初めてで、どう展開していくのか、見てみたかったんだ。この人物に限らず、僕は常に、全てのキャラクターに対して自身を投影させているよ。感じていることを真摯に描こうと思ったら、自分自身がガッチリと入り込む必要がある。具体的にどこに投影してるか? それはプライベートに関わるから言えないよ(笑)!」

実際にケイデンを演じたのは、オスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン。監督から見た彼の魅力とは?
「彼は、微妙な細かい演技ができる俳優であり、独特のユーモアを持ってるんだ。僕は(フィリップの出演作)『ブギーナイツ』('97)以来、彼のことが大好きで、この作品の撮影の前に彼と夕食に行って、映画について説明したんだ、時間をかけてゆっくりとね。彼は忍耐強く話を聞いてくれて、『自分の人生において考えていたことと重なる』と共感してくれたよ」。

では監督自身、もしケイデンのように大金を手に入れたら何に使うのだろうか? 劇中と同じく巨大なN.Y.を作る気は…?
「うん、それがいいね! 子供の頃に丘の上に登ってN.Y.の街を見渡して『これは僕の(映画の)セットだ!』って想像するのが好きだったからね。同じことをしてみるよ」。

続いて話は劇中で展開される“N.Y.作り”に。ケイデンは、これまでにない全く新しい世界を作り上げようとしているようにも見えるし、これまで失敗や後悔を取り戻すべく、壊れた“何か”を作り直そうとしているようにも見えるが…。
「彼は十数年もの期間をかけて作業を進めているので、その過程で動機は徐々に変わっていくんだ。最初の内は、奥さんとの関係のこじれがあって、アーティストとして『リアルなものを作りたい』という思いで、新しい世界…彼にとって真実味のある世界を作ろうとしていた。それが最後の方では、以前の幸せな時代を思い出して『もっとこうしていれば…』という後悔を抱えて『もう一度やり直したい』という要素が入り込んでくる。全体を眺めて言うなら、このプロジェクトは彼にとって大きくなり過ぎてしまったんだ。人間は成長するにつれて、自分の物語を増殖させていくものだけど、自分の手を離れても物語は増え続けるんだ。彼の意図を離れ、エスケープできない状態に陥ることになる」。

映画製作を進めていく中で、この複雑な構造を持つ物語を作りながらどこからが妄想か分からなくなったり、制御不能な感覚に陥ることはなかったのだろうか?
「僕が妄想で悩んだことはないよ。というのは、僕にとってはここで描いているのは夢でも妄想でもなく、現実なんだ。現実に起きていることとして感じつつ、俳優と共に探りながら進んでいったよ」。

まずは何も考えずに観るべし。いつの間にか嫌でも“何か”を考えさせられるので…。

© Shu Tokonami

《シネマカフェ編集部》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]