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『シャネル&ストラヴィンスキー』アナ・ムグラリス 「No.5」がもたらしたもの

劇中と同じように、紫煙をくゆらせながら特徴的なハスキーボイスでゆっくりとこちらの質問に答える姿に不思議と惹きつけられてしまう。アナ・ムグラリス、31歳。現代では稀少な存在となってしまったタイプの女優と言えるかもしれない。そんな彼女が演じたのは、まさに“カリスマ”と呼ぶべき、ファッション史における最も偉大な人物の一人、ガブリエル・ココ・シャネル。シャネルを主人公に昨年来、立て続けに公開されてきた『ココ・シャネル』、『ココ・アヴァン・シャネル』と比べ、この『シャネル&ストラヴィンスキー』はある意味“異色”の作品。シャネルの代名詞とも言えるパフューム「No.5」、およびストラヴィンスキーの代表作「春の祭典」の誕生の裏側と、2人の秘められた恋——。アナは何を感じ、何を想いながら伝説のデザイナーを演じたのか?

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『シャネル&ストラヴィンスキー』 アナ・ムグラリス
『シャネル&ストラヴィンスキー』 アナ・ムグラリス 全 7 枚
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劇中と同じように、紫煙をくゆらせながら特徴的なハスキーボイスでゆっくりとこちらの質問に答える姿に不思議と惹きつけられてしまう。アナ・ムグラリス、31歳。現代では稀少な存在となってしまったタイプの女優と言えるかもしれない。そんな彼女が演じたのは、まさに“カリスマ”と呼ぶべき、ファッション史における最も偉大な人物の一人、ガブリエル・ココ・シャネル。シャネルを主人公に昨年来、立て続けに公開されてきた『ココ・シャネル』『ココ・アヴァン・シャネル』と比べ、この『シャネル&ストラヴィンスキー』はある意味“異色”の作品。シャネルの代名詞とも言えるパフューム「No.5」、およびストラヴィンスキーの代表作「春の祭典」の誕生の裏側と、2人の秘められた恋——。アナは何を感じ、何を想いながら伝説のデザイナーを演じたのか?

アナは、本作の製作以前の2002年からシャネルのミューズを務めてきた。アナとシャネルのこうした関係性から、監督は当初、彼女をキャスティングすることを躊躇したというが、アナ自身は「私のとってそのことは、全く問題にならなかったし、むしろプラスに働いた」と断言する。
「シャネルというメゾンは、ファッションだけでなくフランスの歴史や伝統を引き継いでいる、という点でほかのブランドとは違います。シャネルが押し出している女性像は、近代的なものであり、ココ・シャネル亡き後も、彼女の後進のデザイナーたちは、新たなデザインの発表に際し、常にココが生きていた頃に対する目配りというのを決して忘れることがありません。歴史の積み重ね…私自身、シャネルと長く仕事をする中で自分の中に積み重ねができてきたと感じていました。監督から言われたのは『彼女のエスプリを表現してほしい』ということ。(ミューズを務めてきたことは)まるで今回の役のために何年間も準備してきたようなものね(笑)。役どころや作品のテーマを含めて、すでに多くを理解していたし、だからこそ自由に演じることができたと思うわ」。

製作過程で衣裳に関してアナが監督に提案することもあったとか。
「ココ自身、すごく多様なスタイルを自分の服に取り入れてる。それを映画でも表現したかったの。それから、前衛的なシーンでは、その時代の一般的な女性よりもスカートの丈をずっと短くしたりね。ただ、この映画に関してはファッションの部分よりも演技面について監督と話をすることが多かったわ。自分で口に出してなじみやすいセリフかどうか——例えば、ストラヴィンスキーとシャネルのベッドシーンの後の別れの場面。どうやって緊張感を伝えるか、といったことについて、私からも提案したわ。

物語の重要な位置を占める、「No.5」の誕生。アナは、映画を「フィクション」と表現しつつ、シャネルの人生に思いを馳せ、このように解釈する。
「この時期、すでに彼女はある程度の成功を手にしていた。ただ、この『No.5』の誕生が彼女をさらに高みに導いたことは間違いないわ。そしてそれは、彼女が男性と、確かなしっかりとした関係を築くようになった時期とも重なっていて非常に大きな意味を持っている。確かに彼女は洋服に関して、革命的なデザインを生み出してきましたが、洋服には着る人の好みやスタイル、体型といったものがついて回り、全ての女性に、というのは難しい。その点、“香り”はあらゆる女性につけてもらえる。また、この時期は彼女が、身近にいた様々な人を失った時期でもあるの。彼女のそばからいなくなってしまう人がいる一方で、香りは永遠に残る。彼女自身が悲しみを打ち破る上でも重要なアイテムだっのではないか、と思うわ」。

最後に、アナがシャネルという人物を通して影響を受けた部分は? そう尋ねるとこんな答えが返ってきた。
「彼女は厳しい人…自分にも他人にもね。功績を見ても、彼女が強くなければそんなことはなしえなかっただろうと思うわ。見方によっては残酷だったと思う人もいるかもしれない。でも、その“強さ”がどこから来たのかを考えたとき、いまになって思うのは、彼女は内面的な脆さから自らを守るために、そうした“よろい”を身に着けなくてはならなかったのではないか? ということ。彼女は、間違いなく男社会の中で時代を切り拓き、それは現代にも多くのものを遺したんです。フランスで女性が選挙権を手にしたのは1947年。スイスでは71年。日本も戦後だと聞いています。それだけのことでも、何世紀も経っていない、“ほんのつい最近”なのよ。いまなお、女性が置かれているのは“男社会”。そんな状況を考えた上で、私自身、権利を主張し発言できる場に身を置いて、意識しながら女優の仕事をしていきたいわ」。

そう語る彼女は男よりも強く凛々しく輝いていた。

《シネマカフェ編集部》

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