※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【シネマモード】人間とは、ないものねだりな生き物なのね。『17歳の肖像』

とにかく、すこぶる評判が良い『17歳の肖像』。主演の新星、キャリー・マリガンが本年度のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、さらには作品賞、脚色賞にも選ばれているということは、キャスティングが良く、脚本が素晴らしく、作品としての総合評価ももちろん高いという、バランスの取れた秀作であるということの証明でもあります。脚色したのが、『ぼくのプレミア・ライフ』『アバウト・ア・ボーイ』『ハイ・フィデリティ』の作家ニック・ホーンビィで、監督が世界を大いに泣いて笑わらせた『幸せになるためのイタリア語講座』のロネ・シェルフィグですから、外すはずもありませんよね。

最新ニュース コラム
注目記事
『17歳の肖像』
『17歳の肖像』 全 9 枚
拡大写真
とにかく、すこぶる評判が良い『17歳の肖像』。主演の新星、キャリー・マリガンが本年度のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、さらには作品賞、脚色賞にも選ばれているということは、キャスティングが良く、脚本が素晴らしく、作品としての総合評価ももちろん高いという、バランスの取れた秀作であるということの証明でもあります。脚色したのが、『ぼくのプレミア・ライフ』『アバウト・ア・ボーイ』『ハイ・フィデリティ』の作家ニック・ホーンビィで、監督が世界を大いに泣いて笑わらせた『幸せになるためのイタリア語講座』のロネ・シェルフィグですから、外すはずもありませんよね。

少女時代の揺らぎをとても丁寧に、大人から見れば痛いくらいに懐かしく描いているこの作品、青春物語というよりは人生ドラマ。大人に憧れる世間知らずの少女が、現実世界へと入っていく覚悟を決めるまでを緻密に描写しながら、大人たちがもつ大人特有の“スレ”を密かに皮肉る。ピーター・サースガード演じる上っ面のいい大人、ヒロインの両親のように善良だけれど無神経でだまされやすい大人、知的だけれど頭の固い教師陣など、早熟で知識欲いっぱいのヒロインを取り巻く大人のタイプもいろいろです。その人々に囲まれて、それぞれから少しずつ何かを得ながら、理想と現実の違いを学び、成長していく主人公。観客に、ヒロインは何て無謀なんだ、そんな行動は若気の至りだ、と思わせつつ、それでも彼女の成長を応援させてくれる。そんなストレートな語り口に、非常に好感が持てる作品でした。

作品の出来もさることながら、60年の頃のイギリスを映したファッションも魅力のひとつ。親では決して教えてくれない刺激的な魅惑の世界を、手取り足取り教えてくれる年上の異性への憧れと夢、そして現実の中で揺れ動く少女の心を、ファッションを使って描き出しました。制服を脱ぎ捨て、大人びたワンピース×スカーフ×ハイヒール×ハンドバッグを身につけるヒロインは、まだ大人のファッションがしっくりくるわけではありませんが、なんとか大人のフリをしようとする背伸び具合に、女性なら誰しも昔の自分を思い出すのではないでしょうか。一所懸命に、ブラウス×タイトスカート×アップスタイルのヘアなどを自分のものにしようとする少女を、瑞々しい知性を感じさせつつ演じたキャリー・マリガンは本当に素敵。アカデミー賞ノミネートも頷けます。

でも白状すると、私がより気になったのは、脇を固めたロザムンド・パイクの方。ロザムンドが演じているのは、年下のヒロインに、美しくなるためには何を着るべきか教え、自分の服も惜しみなく譲る寛容で優しい女性ですが、賢いゆえに人生や教育、親に決められた将来に疑問を抱くヒロインとは対照的に、自分で考えるということをせず、地味なオックスフォード大学の女学生を見て、「進学なんかしなければ、綺麗でいられる」と本気で口にする教養も知性も感じられない美女。女性を美しくするものは、教養でも知識欲でもなく、いい男と素敵な服だと信じ込んでいるような人です。本当ならば、こんな女性は輝くはずもないのですが、ロザムンドが演じることで、憎めない、チャーミングなおとぼけ女性になっているのです。大人の女性なのに、表情がどこか幼稚で可愛らしいのですが、これも知性があまりないせいかも。実生活でも男性に寄り添って生きることに疑問を持たず、何でも恋人の言いなり。若く、美しいときはいいけれど、本作のヒロインが、後にジャーナリストとなって、この映画の原作を書く人物になったと考えると、古い価値観(当時は当たり前の価値観?)を持った彼女が、どうなったかも気になるところ。これほどまでに、演じた人物の行く末が心配になるなんて、やっぱりロザムンドの演技がなかなかだったせい? 彼女自身は、舞台経験もあって、実際にオックスフォード大学で英文学を専攻した才女。才女が演じるおとぼけというのも、味があっていいものですよね。

好きなおとぼけキャラクターといえば、ヒロインの同年代ボーイフレンド役を演じたマシュー・ビアード青年もとってもかわいい。初めてガールフレンド(=ヒロイン)の家にお呼ばれしたときの、すべてにおいて間の悪い様子など、私から見ればキュートな限りです。でも、ヒロインの両親、特に父親からしてみれば、ただの子供に見えたようで、娘の相手には不足といったところだったよう。損得ばかり考えるいんちきそうな大人よりも、ドン臭いけれど誠実な男子の方がいいのに、と思う私でしたが、それも人生をそれなりに経験してきたから思えることなのでしょう。

もしかすると、ピーター・サースガード演じる大人代表と、マシュー演じる青年代表と、どちらに好感を抱くかで、“少女度”がわかるのかも。大人に憧れる少女たちは、迷わずオシリの青そうなマシューではなく、ピーターを選ぶことでしょう。でも、少女に憧れる(?)大人たちは、初々しいマシューを選ぶはず。ああ、人間ってないものねだり。「まずは、自分のまわりにあるものに感謝しましょう」とは、私の書道の師、武田双雲氏の言葉。がんばります!



キャリー・マリガン インタビュー
http://www.cinemacafe.net/news/cgi/interview/2010/03/7752/

《シネマカフェ編集部》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]