大森南朋×松嶋菜々子インタビュー 思わずふたりがキュンとした犬の仕草は…?
喜びをともにし、時に救いをも与えてくれるペットたち。人間よりもずっと短い寿命を生きる中でかけがえのない存在として、私たちの人生に灯りをともし、大切な何かを残してくれる。映画『犬とあなたの物語 いぬのえいが』は文字通り、犬と飼い主たちのひとときを切り取った作品。大森南朋と松嶋菜々子は新たなマンションに越してきて、犬を飼い始める夫婦を演じている。初共演となったふたりが、どのように“夫婦”という関係を築いていったのか? 悲しい運命に立ち向かうふたりの姿に何を感じたのか? そして大森さん、松嶋さんと犬のカンケイは…?
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「“あまりにも自然にいる”というのが僕が想像した夫婦」(大森さん)
ふたりが演じたのは、翻訳家の一郎と妻の美里。一郎は子供の頃の辛い出来事をきっかけに犬は飼わないと決めていたのだが、美里の強引な決定でラブラドールレトリバーのラッキーを引き取ることに。少しずつラッキーとの距離を縮めていく一郎だったが、そんな彼を病魔が襲う。病との闘いの中で少しずつ変化していく夫婦の関係——。まずはふたりに、この夫婦の距離感、関係性をどのように作り上げていったのかを尋ねた。
大森:僕は結婚したことありませんが、「あまりにも自然にいる」というのが僕が想像した夫婦というものだったんです。だから自然にいる、ということを大切にしました。松嶋さんもそういう気配を出してくださっていて。わりと、カメラの前で夫婦然としていられたような…。
松嶋:そうですね。ふたりがそれぞれ自分を持って自立し、互いを尊重している。だから、お互いに合わせることもできるし楽しむこともできる、そういう前設定を自分なりに持って臨みました。(物語の前に)ある程度の夫婦の期間があって、築かれてきたものがあると。
だが、そんなふたりを大きく揺るがす一郎の病が明らかに——。揺れ動き、病との闘いの中で押しつぶされそうになっていくふたり。当然のことながら関係性にも変化が。
大森:やはり、それ(病気)が大前提としてありますから、元々あった夫婦の部分に対し、気持ちのぶれで変わっていく距離感というのは細かく意識しましたね。
松嶋:病気をきっかけに、いままで分かっていたはずの人が思いもよらない反応をするということで衝撃も受けるし、この先の将来にも不安を感じる。そういう気持ちの動きは、長崎監督と細かく話し合って作っていきました。ふたりの間にいるラッキーが、関係を取り持ってくれたおかげで、冷静さを失う一歩手前でとどまることができた。そこから、また新たな家族が始まる。“第二のスタートライン”に立つ夫婦、という気持ちでした。
「“かわいそう”ではなく“変わりゆくあなたをこの先も理解する”」(松嶋さん)
大切な人がもし病に冒されたら…。見ていてふたりを襲う困難を自らの身に置き換えてしまいそうになるが、ふたりは彼らが辿る運命から何を感じたのだろう? 劇中の美里のように、それでも強く、相手を支えられるものだろうか?
大森:やっぱり辛いと思います。何とかしてあげたいという気持ちはあるので、全力で何かを…。それでも「どうしようもない」と言われたら…一緒に生きていくしかないですよね。
松嶋:なぜ気づいてあげられなかったのか? もっと早くに私が何かしてあげられることがあったのでは? というような後悔がよぎるでしょうね。それでもやっぱり、自分の何かを犠牲にしてでも支えてあげたいと思います。長崎監督からは「お母さんみたいにならないで」という演技指導があったのですが、確かにそうだな、と思いました。「かわいそう」ではなくて、変わりゆくあなたをこの先もずっと理解する、という気持ちでした。
監督の指導の話が出たが、今回メガホンを握った長崎俊一監督とは、大森さんは『西の魔女が死んだ』以来、そして松嶋さんは初めての顔合わせとなる。現場で大森さんと松嶋さんで、また監督を交えて話をしたことは…。
大森:僕がなんとなく思っていたことと、監督の考えているイメージが近かったので、基本的なことに関しては話し合わなくてもまとまっていたと思います。細かい部分でどこまで感情を出すのか? 抑えるのか? といった部分は…たまにやり過ぎちゃうので止めてもらって(笑)。松嶋さんと演技について話したことはほとんどないです。「何か飼ってましたか?」とか(笑)。僕は共演者の方とお芝居の話はしないです。あまりしないですよね?
松嶋:そうですね。私も役について共演者の方と細かくお話したことはあまりないですし、シーンの中に入ってしまえば、その中で会話ができますよね。テストの段階で本番に近いものを見て変えていったり。大きくではなく、そういうところで小さな会話をしている感じでした。監督は、ハッキリおっしゃるらずに、単純ではなくすごく抽象的な言葉で、こちらに返されるんです。「ということはどういうこと?」とか「こういうことかな? ここかな?」と集中して、考えながらやらせていただきました。簡単な言葉で「もっと早く」とか「明るく言って」ではない演出。それはすごくこの作品の繊細さに表れているように思います。
共に「楽しかった」とふり返る撮影の日々
ちなみに、大森さんは過去に猫を飼っていたことがあり、松嶋さんはいま、まさに犬を飼っているそうだが、今回、ラブラドールレトリバーのラッキーと現場を共にして、キュンとさせられた犬の仕草やエピソードは?
大森:どのシーンで、というよりも、トレーナーさんに「もう少し後ろ」とか言われて無理やり後ろに下げさせられている姿が非常に可愛かったです(笑)。
松嶋:顔を動かさずに目だけでチロっとこちらを見る仕草が可愛いです。私が飼っている犬も、怒られると、耳を寝かせたまま顔を動かさず、目だけでチロっと(笑)。
最後に撮影全体をふり返ってもらうと「日々楽しかったですよ。悲しいシーンは、消えていくものが多くて寂しかったけど…『あぁ、映画の撮影をしてるな』と思いながら現場にいました」と大森さん。松嶋さんも「苦労はあったんでしょうけど、それに立ち向かうのすら楽しかった」と笑顔。
松嶋:撮影してたマンションが夜10時までの使用だったので、深夜に及ぶこともなく(笑)。
大森:近所迷惑ですしね。
と、なぜかここでも夫婦のような会話の2人だった——。
《photo:Toru Hiraiwa》
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