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クリント・イーストウッド インタビュー 異色の題材から学び続ける80歳

毎回、全く異なるテーマ、作風の作品を世に送り出しつつ、そのいずれも「これぞイーストウッド!」と唸りたくなるような独自の世界観を見せるクリント・イーストウッド。彼は最新作『ヒア アフター』のテーマを「愛、喪失、そういったものに人がどう対処するかということ」と明かす。“ヒア アフター(=死後の世界)”の存在から、逝ってしまった人々、そして己の生に向き合う登場人物たちの姿を通じて80歳の彼は何を感じたのか?

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『ヒア アフター』 -(C) AFLO
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毎回、全く異なるテーマ、作風の作品を世に送り出しつつ、そのいずれも「これぞイーストウッド!」と唸りたくなるような独自の世界観を見せるクリント・イーストウッド。彼は最新作『ヒア アフター』のテーマを「愛、喪失、そういったものに人がどう対処するかということ」と明かす。“ヒア アフター(=死後の世界)”の存在から、逝ってしまった人々、そして己の生に向き合う登場人物たちの姿を通じて80歳の彼は何を感じたのか?

大津波に遭遇し、臨死体験をしたジャーナリスト、かつては霊能力者として活躍したが、死者との対話に疲れいまはひっそりと暮らす男、そして双子の兄を事故で亡くし、もう一度彼との会話をしたいと霊能力を訪ね歩く少年。直接的、間接的に“死”に直面した3人の人生が少しずつ交差していく。『ラストキング・オブ・スコットランド』『クィーン』といった近年の名作を手掛けてきたピーター・モーガンの手による脚本をイーストウッドはこう解説する。
「3つの異なるストーリーがあり、たくさんの要素を含んでいた。それぞれのストーリーには克服すべき障害がある。死から始まるストーリーもあった。映画は臨死体験から始まり、人はそこから何かを学ぼうとするんだ。マリー(セシル・ドゥ・フランス)というキャラクターの場合、彼女はほかの人々の臨死体験と、その影響を知ろうとする。というのも、ある意味で彼女の人生がそれによって悪い影響を受けているからだ。次に、兄を亡くした少年は、兄なしでは途方に暮れてしまい、兄と何らかのつながりを求めようとする。そしてマット・デイモンが演じるジョージは、どこにも進めなくなってしまっている。彼の人生はずっと、死後の世界が見えるという能力に縛られてきた。難しい部分は、それぞれのストーリーにある混乱を検証し、泥沼からの出口を見つけようとすることだね」。

毎回、テーマが異なるイーストウッド作品においても明らかに異色の題材を扱った本作。その意外性について監督自身はどう考えているのだろう?
「意外性があるというのは、私が故意にそうしているのか、年をとってきた過程で自然にそうなってきたのかは分からない。私は映画製作を長い間やってきたので、必然的にそれまでにやったことのない題材に手を伸ばし、探し始めるわけだ。歴史上には、自分が以前作った映画をリメイクする監督たちがいることは知ってるが、私は自分がそれに耐えられるかどうか分からないな。というのは、いったんストーリーが世に出れば、それがそのストーリーのあるべき姿なわけだ。俳優を変えて、別の解釈でそれを作ることはできるだろうし、それは前作よりもよくなるかもしれないし、よくならないかもしれない。だが、私にとっては、いったんひとつの映画を作り終えたら、それはそこで終わり。何か別のものに進むものなんだよ」。

今回、“死後の世界”を物語の軸に据えたことで、否応なしに監督自身も死後というものについて否応なしに考えさせられたのでは?
「それについて考えずにいることも可能だとは思うけど、考えないといけない。それが存在すると想像しないといけない。だが、それはどのストーリーでも同じだ。ありそうにない状況にでも自分を置いてみないといけないんだ」。

“映画製作者”としての立場でそう語るイーストウッド。劇中にはニセモノの霊能力者たちも登場するが、彼らあの存在は物語上、重要であると同時に製作者の意図もうかがえるが…。
「あれは脚本の中でも興味深い要素のひとつだった。死後の世界が見えるなどと言って人々をだますことで生計を立てているニセモノたちの世界を掘り下げている。多くの人がああいうものを信じていて、それはそれで構わないんだが、死後の世界が見える本物と、ニセモノを比較するために、彼らの話を盛り込みたかった。だから、マット・デイモンが演じるジョージと共に彼らを登場させたんだ」。

マットとは『インビクタス/負けざる者たち』に続いてのタッグとなるが、互いの信頼関係は深い。彼の魅力を簡潔にこう断言する。
「マットは全く芝居がかっていないところが素晴らしい。彼は演じているように見えない。とても自然で、とてもさりげない。つまり、俳優として優れているが、古いスラングを使って大げさな演技をしたりはしないんだ」。

では最後に、長い、本当に長いキャリアを積んできたイーストウッドがこの作品から新たに学んだことを聞いてみよう。
「私は映画を作るたびに何かを学んでいるよ。毎回違う俳優と組み、違うテーマを扱っているわけだから、そこが映画作りの面白いところだ。この映画の前に津波や地下鉄(の爆破)などを描いたことはなかったしね。やっていないことはたくさんあり、それを毎回経験していくわけだ。そして多くのことを学ぶ。だが、生きていればいずれにせよ、毎日何かを学ぶんじゃないかな。新しい出会いがあれば、人間について新しいことを学ぶし、初めての場所へ行き、初めての通りを歩けばそこでも何かを学ぶ。だから生き続けていけるし、頭と心を若くしていけるんだ」。

© AFLO

《シネマカフェ編集部》

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