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ナタリー・ポートマン インタビュー 最善を尽くして“不完全性”を追求し続ける

『レオン』の孤独を抱えた少女・マチルダ役で鮮烈な銀幕デビューを果たしたとき、彼女は13歳の少女だった。それから16年の時を経て、ナタリー・ポートマンは新たな生命をお腹に宿すと同時に、アカデミー賞主演女優賞という最高の栄誉を手にした。13歳で世界中にその名を轟かせた少女は、この『ブラック・スワン』で世界中を魅了し、そして戦慄させた。イノセントというよりはピュア——ただ、純粋にバレエに心血を注ぐ純白の心を持ったバレリーナが狂気を帯びた漆黒の中に身を沈めていく。この変遷をナタリーはどのようにとらえ、表現したのか? そのとき彼女の心に浮かんだものとは——?

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『ブラック・スワン』ナタリー・ポートマン -(C) AFLO
『ブラック・スワン』ナタリー・ポートマン -(C) AFLO 全 8 枚
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『レオン』の孤独を抱えた少女・マチルダ役で鮮烈な銀幕デビューを果たしたとき、彼女は13歳の少女だった。それから16年の時を経て、ナタリー・ポートマンは新たな生命をお腹に宿すと同時に、アカデミー賞主演女優賞という最高の栄誉を手にした。13歳で世界中にその名を轟かせた少女は、この『ブラック・スワン』で世界中を魅了し、そして戦慄させた。イノセントというよりはピュア——ただ、純粋にバレエに心血を注ぐ純白の心を持ったバレリーナが狂気を帯びた漆黒の中に身を沈めていく。この変遷をナタリーはどのようにとらえ、表現したのか? そのとき彼女の心に浮かんだものとは——?

「恐ろしい要素がたくさんあるからこそこの役に惹かれた」

無垢なる白鳥と妖艶な黒鳥。名作バレエ「白鳥の湖」のプリマに抜擢されながらも、2つの対照的な存在を表現するプレッシャーで徐々に狂気に侵されていくニナ。肉体を酷使するバレエのパートに加え、精神的にも大きな負担のかかる役柄だが、役を引き受ける上で「戸惑いはなかった」とナタリーは言い切る。
「この作品には恐ろしい要素がたくさんあるけれど、だからこそ魅かれるのだとも思う。精神的にも、肉体的にも自分自身に挑戦する素晴らしいチャンスだったし、素晴らしい人たちと仕事できた。ダーレン(・アロノフスキー監督)やヴァンサン(・カッセル)やミラ(・クニス)ね」。

生真面目に完璧を求めるがゆえに、奔放で魔性を秘めた黒鳥の感性を表現しきれずに苦しむニナ。今回のバレエのシーンで披露するプロ顔負けの踊りを見ても分かるが、パーフェクトを追及するという点でナタリー自身にも同じような傾向があるのでは?
「アートはたいてい、パーフェクトな瞬間を追求する活動なのだと思う。数分の一秒という瞬間に介在する美の探求ね。それは非常に捉えにくいものでもある。見つけたと思ったら、もうなくなっている。私は最善を尽くしたいと思っているし、だから自分にも厳しいけれど、演技においては完璧への追求は非常に独特なものだと思うわ。何せ元来、“不完全”である人間を表現するわけだから、不完全性を追求しなければならないのよ」。

では、その“不完全性の追求”の一端をご紹介。バレエシーンの過酷な撮影では「もう死んじゃいそう!」って思ったことは何度かあったそうだが…。
「考える時間すらなかったわ。サバイバルみたいなものね。考えるスキを与えられずに前進するしかない状況。撮影時間も毎日長かったしね。撮影開始は月曜の朝6時。でも、1日の撮影時間が日ごとに延びていくものだから、次の日はスタート時間を遅くするという具合で、金曜日には夜の8時に撮影を開始して明け方までやるようになっていたわ。土曜の朝4時だというのに、私はトウシューズを履いたまま。とにかく足の怪我をしないように気をつけなければならなかったので、撮影前は必ずウォーミングアップをしなくてはいけないの。シーンの前には、必ずバーで基礎練習するんだけど、それが朝の4時だから、キツいわよ」。

“年齢”による世代交代というパラダイムに対する彼女の答えは——?

女優とバレリーナ。共通する点、大きく異なる点いずれも多々ある。劇中、ウィノナ・ライダー扮する花形ダンサーが引退することでニナにチャンスが訪れるわけだが、女優として彼女にも同じ恐怖があるのでは?
「もちろんあるわ。女性として、限界の年齢までくると、若い女性にとって代わられてしまうというパラダイムは、演技の世界でも顕著だと思う。社会一般でも、女性に対する扱いを見ていてそういう価値観が伝わってくるわ。でも、そういうパラダイムから脱皮することも可能だと思う。映画の中で、ニナは変わっていくけど、ひとつには彼女自身がそういう脱皮を図ろうとしているからだと思う。男によって自分を定義づけるのではなく、自身で自分を定義づけられるようになるの」。

“女性”という点を踏まえた質問をもうひとつ。ミラ・クニス演じる若く奔放なバレリーナを相手にしての官能シーンも披露しているが、映画の中で描かれるセクシャリティをナタリー自身はどのように捉え、演じたのだろうか?
「そのテーマは間違いなくニナの心理の一部ね。彼女は、みんなを喜ばせなければならないと、がんじがらめになっている自分からの解放を求めている。だから、自分自身の快楽を見つけなければならないの。そうやって彼女は芸術を追求していく。もはや、他人の目を通してではなく、自分の快楽という視点からビジョンを作り上げていくの。彼女の成長にとっては欠かせない過程ね。みだらな一面も見せるけど…まあ、みなさんの反応は大体予想できるわね」。

大学で心理学を専攻した彼女らしい、クールな分析と言えるが、一方で仕事を引き受ける上では「何でもやってみたい。いままでやったことがないことに挑戦すること」をポリシーとして挙げる。“心理学者”になったつもりでニナを患者として診療するなら? という問いには「強迫神経症、拒食症、過食症、自己愛性人格障害、それに双極性障害…」との答えが。では治療法は?
「セラピーに何年も通い続けることね(笑)」。

© AFLO
© 2010 Twentieth Century Fox.

『ブラック・スワン』
2011年5月11日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開

《シネマカフェ編集部》

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