『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』原作者・葉田甲太×峯田和伸 ガチ対談!
「僕たちは世界を変えることができない」。一見、ネガティブに思えるこの言葉で結びつけられた2人の男が初めて顔を合わせた。「銀杏BOYZ」のボーカル峯田和伸と、医学生時代にふとした思いつきからカンボジアに学校を建設し、向井理の初主演映画の原作となる本を執筆した葉田甲太。確かに世界を変えることはできないかもしれない。だが彼らは、確実に人の心を動かし、いや心だけでなく実際に人を動かし、自らの思いを“形”に残している。年齢も歩んできた道も違うが、隠すことなく自らをさらけ出して生きているところに共通点がある。そんな2人が互いの思い、自らの活動や表現、生き方についてガチンコで熱く語り合った。
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「世界を変えることはできない」という言葉に込めた思い
元々、「僕たちは世界を変えることができない」というのは「銀杏BOYZ」の楽曲およびメンバーの活動を追ったドキュメンタリーDVDのタイトル。中学時代から峯田さんの大ファンであった葉田さんが自らの活動を綴った本の題名として借用したのだ。
——そもそも、峯田さんはどのような思いでわざわざこんなネガティブなタイトルを?
峯田:実は僕自身、あまり分かってなくて(笑)、メンバーと「タイトルどうしよう?」って話して、適当にいくつか言ったうちのひとつなんです。意味は分からないけど、何とでもとれる。なぜか引っかかって…まあDVDはタイトルと関係なく下ネタ満載なんだけど(笑)。でも引っかかるということは何かが良いんだろうな、と。いろんな人に意味を聞かれるけど、みんな深読みし過ぎなところもあって。いろんな状況がこの言葉の意味や見方を変えてくれるようなところはあるんだなと感じてます。この言葉がある“場所”は変わらないけれど、状況がこの言葉の捉え方を変えてくれる。そういういろんな捉え方ができる言葉は好きですね。
葉田:タイトル、借用してすみません。僕自身、すごく深くあれこれ考えてました(笑)。ただ、僕が本のタイトルに選んだのは、僕のやってきた活動は相手がいてこその活動で、自分が幸せだと思うことを相手に押し付けてはいけない。僕らではなく、当事者の人たちが「変える」ものなんだという意味で、自分に対して調子に乗るなよっていう気持ちが9割です。残りの1割は、乱暴な言い方ですが、世界が変わらなくてもいいんじゃないかって思い。変える必要はないんじゃないかと。
峯田:最初に映画の話を聞く前に、本屋で積まれているのを見たんですよ。「なんかこのタイトル、見たことあるなぁ」って(笑)。あぁタイトルが一緒だと気づいてやっぱりこの言葉が引っ掛かった人がいたんだと思いましたよ。
葉田:高校の頃とかずっと「銀杏」聴いてて、「恋と退屈」(峯田さんの著書)読んだら一言では言い表せない感情があって…峯田さんてカッコ悪いところも全部出すからカッコ良いんです。
峯田:僕はカッコ悪いことをカッコ悪いって思ってなくて、もちろんカッコ良いとも絶対に思ってないんだけど。これやったらマズいとか、これ書いたらヤバいとか、そういう気持ちがないんだよね。
葉田:一般論で言うところのカッコ良いとかカッコ悪いっていう価値観を(峯田さんに)崩されましたね。
共感、ボランティア、さらけ出すということ
葉田:僕はこの本を書く上で「何かを伝える」とか「共感してほしい」とかそういう思いはなかったんです。だから出版者の人にも怒られて(笑)、経験も実績も知識もない中で「何ができるのか?」って考えたとき、「こうあるべき」とか「こうしろ」じゃなくて「僕はこう思いました。どう思いますか?」としか言えなかったんです。
峯田:海外でなくても日本国内でも世の中にはいろんな問題があるけど、海外に行ってボランティアをやる人はいる。僕はボランティアの経験ないんだけど、どういう思いでカンボジアに行ったの?
葉田:郵便局でたまたま見たパンフレットがカンボジアだったというだけで、それが日本だったら日本で活動してましたね。いつも「何となく」と言ってます。ただ、“誰か”が悲しんでるだけじゃ人は動かないと僕は思っていて、その誰かが知っている“あの人”になれば動くのかなと。縁があって現地に行ったことで、カンボジアは僕にとって“誰か”じゃなくて“あの人”になったんです。
峯田:すごく良いことしてると思うけど、日本に帰って気持ちが落ちて、デリヘルを呼んだとかまで書いたのはなんで(笑)? 正直、そういう部分があるからこそ僕は信頼して読めたんだよね。これがボランティアやって子供と遊んでってだけなら、「ウソくせぇ」って思ってた。
——葉田さんは抵抗はなかったんですか? やましいことがなくても自己満足だとか偽善だとか言って足を引っ張る人たちがいる中で、あえてここまでさらけ出すことに。
葉田:いや、全部出したくなかったんですよ、デリヘルのエピソードだって(苦笑)。でも書かざるを得なかったんです。
峯田:なんで?
葉田:書かなきゃ勝負できなかったんですよね、やっぱり。それ以外、自分にはないと思ったんです。
峯田:うん。そこ書かなきゃ植村直己さんは超えられないよね(笑)。椎名誠さんは書いてないですからね。書いてほしい! まあ、書きゃいいってもんじゃないけど。よく書いたよ!
葉田:「深夜特急」にもないですね(笑)。でもオカンは泣いてましたけどね。「何でそんなこと書くの?」って(苦笑)。シラフのままじゃ書けなくて、梅酒飲んで気づいたら出来上がってた感じ。ちょっと脱線しますけど、僕は“ボランティア”って好きじゃないんです。勝手にやればいいものだと思ってて。語弊があるかもしれないですが、“自分探し”とか言ってカッコつけて、恋愛してそこから逃げてボランティアにすり替えたりってすごく多い。それは違うなって思ってて…。
峯田:まぁ僕がボランティアをやるとしたらまず間違いなく女の子狙いですね(笑)。
——葉田さんはいま、エイズ問題や建設された学校の維持に携わってますが、葉田さん自身の中でどういう位置づけでやってらっしゃるんですか?
葉田:出会った人が泣いていたり悲しんでいるから、僕の勝手な“エゴ”で笑ってほしいと思ってやってるのかな。それを何て呼ぶのか、いまだに僕にも分からない。友達が悲しい顔してるから笑顔になってほしいっていうのはボランティアとは言わないですよね?
峯田:僕だったら絶対ヤッてますね。
葉田:いや、そんなこと聞いてないですから(笑)!
批判を受け止めるということ
葉田:峯田さんも昔、TVでデリヘル呼びまくってるって言ってましたけど…。
峯田:TVで言ってた? まあ…いろんな弊害はありましたけど(苦笑)。でもこうなると何言ってもネタか本当か分からなくなってるからね。
葉田:批判やネット上でのバッシングとかもあると思いますが、峯田さんはどういう気持ちでそれを受け止めるんですか?
峯田:評論家の声もネットの声も含めて、別にいいかなと思ってる。言ってもらった方が良くないですか? さっきの本と一緒でキレイごとだけでなく、いろんなことを含めて作品として面白いんだから。褒められるだけだと気持ち悪い。世に出した以上は嫌ってる人も含めて両方いないとね。
葉田:僕は毎回、ヘコんでました。だから峯田さんのその言葉聞けて良かったです。
峯田:あんまり考えてないからね。お母さんに怒られたらヘコむけど、それ以外はどうでもいいの。
葉田:お母さんに怒られることあるんですか?
峯田:あるある。「最近、お金遣い荒いよ」とか。うちはお母さんが通帳持ってるから。
——葉田さんは医師として勤務しながらカンボジアのために活動し、本も執筆されていますけど、どうやって両立されてるんですか? カンボジアに学校を建てた後で、医師になるという現実を前に虚脱感とかはなかったんですか?
葉田:情けないんですが僕、マザコンなんですよ。子供の頃、病院で母親に医者になって治してあげるって言ったら喜んでくれて、それで何とかなれました(笑)。やってく中でバランスがとれるようになりましたね。右脳と左脳みたいなもので、医者の自分と表現する自分は全く別人格なんです。医者のときはロジカルに、書いたりするときはエモーショナルに、本書いたりするだけじゃ酒ばかり飲んでダメになる。2つでバランスとってます。だから、峯田さんのように表現してお金稼いでいる人はすごいなと尊敬してます。
峯田:いやいや、カンボジアの前に僕を助けてほしいです。今度、診てください(笑)!
この後もここでは書けないような彼女についての話や、デリヘルの話などで大いに盛り上がる2人。世界を変えようなどとはこれっぽっちも思ってもいない、ただ自らの道を進む似た者同士の男たちの激し過ぎる初対面だった。
「僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.」(小学館文庫刊)
定価:500円(税込)
発売中
「それでも運命にイエスという。 」(小学館文庫刊)
定価:500円(税込)
10月6日発売
銀杏BOYZ ドキュメンタリーDVD
「僕たちは世界を変えることができない」 (初恋妄学園)
定価:3,990円(税込)
発売中
『僕たちは世界を変えることができない。』3連続インタビュー
http://www.cinemacafe.net/ad/bokuseka/
:: 松坂桃李インタビュー
:: 向井理インタビュー
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