『ジョン・カーター』プロデューサーが語る、100年越しの“ヒーロー”映画化のワケ
原作小説が発表されたのはおよそ100年も昔のこと。1世紀近くにわたって、多くの読者を魅了し続けてきた物語を、最新の技術を駆使して実写映画化するというのは決して簡単なことではない。これまで人々を熱狂させてきた映画ヒーローの系譜に新たな1ページを加えるべく、ウォルト・ディズニーが全力を傾けて作り上げたアドベンチャー巨編『ジョン・カーター』(4月13日公開)。プロデューサーを務めるジム・モリスは言う。「何より大切にしたのは、原作が持つ“スピリット”だ」と。2012年、ディズニーは一体どんなヒーロー像を世界に提示するのか? 主演を務めるテイラー・キッチュと共に来日を果たしたプロデューサー、モリス氏に話を聞いた。
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原作が持つ“スピリット”。それは原作者エドガー・ライス・バローズが作り上げた魅惑的な世界観にほかならない。
「この物語がこれだけ人気を博した理由は何なのか? それはバローズが作り上げた壮大なスケールの物語に対し『ジョン・カーターが戦っているバルスームという星はいったいどんなところなんだろう?』と人々がワクワクしながら想像をめぐらせたということにあると思います。だからこそ映画化に際して原作に忠実であることをまず意識し、その上で現代の観客が共感し、好きになってくれるようなキャラクターを作ることを考えました」。
主人公のジョン・カーターが生きたのは19世紀の南北戦争の時代。そこからたどり着いた惑星・バルスームはまさに滅びゆこうとしている星であり、現代人にとって決して現代的でも近未来的でもない。こうした設定をより現代的に変更しようとは考えなかったのだろうか?
「この非現代的な部分がいいと思ったんです。観る人の興味を惹きつけるだろうってね。原作通りということでもあるんだけど、その“時代性”を大切にしました」。
監督を務めるアンドリュー・スタントンは、ピクサー・スタジオのクリエイターとして2度のアカデミー賞に輝いた異才。モリス氏も同じくピクサーでプロデューサーとして辣腕を振るってきたが、その2人の世間話から今回の企画は動き出したという。
「パートナーとして何気ないおしゃべりの延長としてよく『次に何を撮ろうか?』という話をするんだけど、そのとき、彼が『実は僕は昔から『火星』シリーズ(※原作)が大好きで…』と言い出して、そこから派生していったんです。ジョン・カーターがバルスームで出会うタルスタルカス(先住民)はウィレム・デフォーが演じているんだけど、その表情のニュアンスをスタントンが演出し、アニメの手法を使って作り上げていきました。ほかにもたくさんのクリーチャーが登場するし、その多くがCGで生み出されてるわけですが、まさにアニメーターとしてのスタントンの力が存分に発揮された仕事と言えるでしょうね」。
カーターを演じるテイラー・キッチュは30歳の新鋭。新世代のヒーロー役としての今回の起用は“大抜擢”と言えるが、モリス氏は「彼の瞳の奥に“何か”を感じた」と決め手を明かす。
「幸運にも発見することが出来た逸材です。演技力に外見のイメージ、そして肉体的な強さも含め見事に全てを体現してくれたと思ってます。よく『カメラが俳優に恋をしている』という言い方をするんだけど、カメラへの映りが素晴らしい男だよ。カメラを通して彼の微妙な表情から伝わるニュアンスが確かにあるんだ。決して大げさな演技はしないけど、キャラクターの心情を自然に引き出して観る者に伝えてくれる。カーターは元々が無口な男なんだけど、テイラーがちょっと眉毛を上げただけで、彼が何を思っているかを理解することが出来るんです。これは比較したり、似ているというわけじゃないんですが、ジョン・ウェインやハリソン・フォードは、セリフなしで思っていることを表現していたけど、テイラーもまさにそうした演技ができる存在なんです」。
そんなテイラーが体現したジョン・カーターは「これまでとはちょっと違ったヒーロー」であるという。
「冒頭からしてまず、ジョン・カーターは打ちひしがれてますからね。最初から完全無欠ではないんです。それでも戦い、自尊心を取り戻していく中で少しずつヒーローとしての過程をたどっていきます。努力してヒーローとして成長していくんです。一方で自分ではなく他人のために何かをするという自己犠牲の精神や、正義のためにひるまない心、勇気を持って立ち向かうというヒーローの資質は誰よりも強く持っているんです」。
100年の時を経て、スクリーンで新たに生を享けたヒーローは我々に何を訴え、どんな新たな世界を切り拓いていくのか? 注目して待ちたい。
特集『ジョン・カーター』:2012年は“カレ”が来る!
http://www.cinemacafe.net/ad/johncarter/
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