美しすぎるアンドロイドを熱演、マイケル・ファスベンダー モデルは飛び込み選手?
この5年間における、彼の大躍進は凄い。マイケル・ファスベンダー、35歳。ザック・スナイダー監督『300[スリーハンドレッド]』('07)でスクリーン・デビューし、大人気シリーズ作品『X−MEN:ファースト・ジェネレーション』('11)やヴェネチアを賑わせた『SHAME−シェイム−』、『ジェーン・エア』、『危険なメソッド』と、確固たる存在感を示してきた彼が、巨匠リドリー・スコットの最新作『プロメテウス』で抜擢されたのは、未知の旅への鍵を握るアンドロイドである。ミステリアスな美しさを放つアンドロイドを見事に演じ上げた彼が、役へのアプローチについて明かした。
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巨匠が本作で取り組んだ題材とは、人類最大の謎である「人類の起源」。アンドロイドのデヴィッドと考古学者のエリザベスとその恋人・ホロウェイら17名を乗せた宇宙船・プロメテウス号は、この謎に迫るべく未知のゾーンへと旅立つ。
「これは宇宙の旅の話だ。我々が求めているのは、地球の歴史にこの世界のものではない生物による介入があったかどうかなんだ。どうして我々人間はここにいるのか、どうして我々は造られたのか——その答えを求めて航海に出る」と“ミッション”について説明するマイケルは、「そういったことは、間違いなく頭の片隅にあるものだ」と言う。
「おそらく、観客はストーリーを支える理論があることに気づくだろう。演技にはそれほど影響はないが、意識はしているから理論が示唆するものはある。デヴィッドにとっては、これは非常に重要なことなんだ。というのは、彼は人間が作り出したロボットだから、彼としては『人間だって誰かに造られたものだから、人間も誰かにプログラムされている』と言い、人間の方は『我々はプログラムされていない。自由意思を持っている』と答える。それで、『あれ、本当に?』と彼は返すんだ」。
「僕は船の執事のようなもの。スペース・バトラーだよ」と独自の言葉で自身の役を表現するマイケル。最初から創造主が人間だとわかっている分、究極の“創造主”を知ろうとする人間たちとデイヴィッドの間には当然のことながら温度差がある。だが一方で、あるはずのない感情がやがて彼の中から湧いてくる。
「彼は一人ぼっちなんだ。時々、彼は人の注意を引こうとするが、そこにはちょっと不安が走る。ほかの映画でもロボットに対して不安があったように、たぶん、ロボットが信用されていないからだ。彼の考えでは、人間だって造られたようなものだ。それは彼が抱える不安に対しての防御反応のような考え方だが、これはまた彼が人間の感情を持っていることの証にもなる。プログラムされて少し時間が経つと、プログラムは消え、そこから何かが派生し、その後、別の個性を発揮するようになると考えていくと、おもしろい」。
その微妙な“感情”を見事にアンドロイドに吹き込んでいる彼だが、その役づくりでは意外な人物を参考にしたのだそう。
「これは論理的な生きものだから、全てを常に処理しているし、あらゆるものを保管している。歩き方では、グレッグ・ローガニスからヒントを得た。彼は80年代初めの頃に活躍した飛び込みの選手だよ。子供の頃に彼を見たのを覚えているんだ。飛び込み台の先へ行くときに、彼が一定の歩き方をしていたのをいつも思い出す。そういうちょっとしたこともヒントになることがあるんだ。この男はヨガ行者に似ている。人がいろいろと姿勢を変えるのと違って、彼のスタンスは中立しかない。でも、不自然にならないようにしながらこの男を演じる上で、どれぐらい人間らしくするか、機械に近づけるか、あるいはロボットらしくするかをある程度、曖昧に見せたいと思ったんだ」。
巨匠リドリー・スコットとの初めての仕事について聞くと、「最初に考えるのは、“ああ、大変だ、絶対にしくじるなよ”ってことだ」と落ち着いた風貌からは意外とも思える素顔を覗かせるマイケル。改めて本作での経験をふり返ってもらった。
「キャストに起用されたら責任を感じるものだし、特にリドリー・スコットのような優れた人に起用されたんだからね。不安要素はいつでも必ずあるものだし、それはごく健全なことだと思う。僕はいつも感じているからね。だから油断ができないし、満足することもできない。でも僕としては、準備を整えて、できるだけ多くのアイディアを考え出し、そして全力を出すだけ。その後は、信頼の気持ちが肝心。彼を信じて任せれば、楽しめるし、良い経験ができる。今回もセットに行くと、彼(リドリー)はとてもリラックスしていたんだ。彼は仕事に夢中なんだ。彼が毎日セットへ持ち込んでくる大きなエネルギー、熱意、仕事への愛情、それがとても気持ちのいい驚きだった。ぜひ言いたいのは、僕は彼とすぐに意気投合して、とても仕事がやりやすかったってことだよ」。
《シネマカフェ編集部》
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