※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

『人生の特等席』監督インタビュー “師匠”クリントと歩んだ監督デビュー

1989年に映画人としてのキャリアをスタートさせてから、20年以上。『硫黄島からの手紙』や『ミリオンダラー・ベイビー』など、『マディソン郡の橋』以来17年に渡りクリント・イーストウッドの下で映画作りを学び、今年、満を持して監督デビューを果たすロバート・ロレンツ。クリントの弟子であり、同時に親友でもあるこの“遅咲きのルーキー”が作り上げたのが『人生の特等席』だ。初監督への想い、そして現場でのクリントとの撮影当時のエピソードを余すところなく語ってもらった。

最新ニュース インタビュー
注目記事
『人生の特等席』ロバート・ロレンツ監督
『人生の特等席』ロバート・ロレンツ監督 全 4 枚
拡大写真
1989年に映画人としてのキャリアをスタートさせてから、20年以上。『硫黄島からの手紙』や『ミリオンダラー・ベイビー』など、『マディソン郡の橋』以来17年に渡りクリント・イーストウッドの下で映画作りを学び、今年、満を持して監督デビューを果たすロバート・ロレンツ。クリントの弟子であり、同時に親友でもあるこの“遅咲きのルーキー”が作り上げたのが『人生の特等席』だ。初監督への想い、そして現場でのクリントとの撮影当時のエピソードを余すところなく語ってもらった。

描く物語は、メジャーリーグのスカウトマンとして長年活躍してきた昔気質で不器用な父・ガス(クリント)と、彼との間にわだかまりを抱える娘・ミッキー(エイミー)の親子の再生の物語。そして、ミッキーと挫折を味わった若者・ジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)のロマンスだ。

クリントとの撮影をふり返って「最初は少し緊張したね」と語るロレンツ監督。名優と同時に“名監督”として知られるクリントが監督の顔を見せる場面はあったのだろうか?
「そうだね。それについては少し心配したよ。彼が誰で、彼の評価やキャリアを考えたらね。彼にとって監督をすることは自然なことだから。だから、それを避ける唯一の方法は、しっかり準備していくことだと思った。僕には映画のビジョンがあったし、フィルムに何を描きたいか分かっていた。だから僕は自分のショットリストを持参したし、かなり早いペースで撮影していったんだ。だから迷いとか、彼が入って来るような瞬間はなかったよ。でも彼は僕の友人でもあるし、彼がどのぐらい映画の現場にいることを楽しんでいるかを知っている。そういったほかのことを頭の片隅に追いやって、楽しむように心がけたよ」。

さすがは長年、共に映画を作り続けてきた間柄だ。しかし監督デビュー作にして、“名優”クリント・イーストウッドを起用するということは、さぞやプレッシャーがあったのでは?
「それが、自分が思っていた以上に楽しめたんだよ。クリントのためにプロデュースするのは、それなりに不安がつきものだからね。なぜならいつも僕が、すべての要素を用意しないといけない。全てのクルー、機材、ロケーション選びにスタジオの手配といったね。クリントはあまり準備をするのが好きな人ではない。彼は物事が自然にオーガニックに広がっていくのが好きなんだ。だから、かなり予想しながらやらないといけなかった。全てが揃っていて、彼が僕の方をふり向いて、『クレーンが必要だ。クレーンはどこだ?』って言わないようにね。でもこの作品では、自分が何をやりたいか、自分がそこで何をする必要があるのかということを正確に把握していた。だから人々にそれを伝え、それが用意されているといった具合だった。それは本当に素晴らしかったね(笑)」。

これまでのロバートの役どころは、要は縁の下の力持ちだったが、実際、監督としてクリントからどんなことを学び、そしてこの作品へと繋げていったのだろうか?
「彼からは、本当に多くのことを学んだよ。撮影の仕方とか、キャスティングの方法はとても役立った。特にこういったヴィジュアル・エフェクトやスペクタクルのない映画ではね。こういった作品はキャストの出来次第で、泳ぐことができたり、沈むことになるのは分かっていたからね。でも、広い意味で僕が彼から学んだことは、“自分がやっていることに自信を持つ”ってことだった。映画を監督しているとき、人々は自分にリーダーシップを求めてくる。彼らは僕にプランやビジョンがあるか知りたがる。そういったことが彼らに最高の仕事をさせることになるんだ。だから、現場には自信を持って現れるようにしたよ」。

自信を持って師匠の前に立つ。晴れの舞台でもある一方で、そこには師匠であるクリントに「ノー」と言うことも当然含まれている。本作でのキャスティングの段階で、ロレンツは監督としての威厳が試されたようだ。
「ジョニー役に関しては、僕らは何度も何度も考えを巡らせた。その役を演じる人のタイプについて、僕らは意見が合わなかったんだ。それでスタジオの誰かが、ジャスティン・ティンバーレイクの名前を出したんだ。彼はとても好感がもてるし、チャーミングで、その役にぴったりだった。それで彼のエージェントに連絡したら、すぐに返事が来てね。『ジャスティンはこのアイディアにとても夢中だ。彼はとても気に入っている』ってね。それで『彼は台詞を読むのに来てくれるだろうか?』って聞いてみた。僕はクリントを説得したかったからね。ジャスティンは、いくつかのシーンを読みに来てくれた。そしてそのことをクリントに話したら、彼がそのアイディアに乗り気になったのが分かったよ。『それはいいアイディアだ』って言ってくれたんだ」。

クリントの下で映画を学び、クリントと共に映画デビュー作を作り上げたロレンツ監督。この先も、もちろんクリントと共に映画人生を歩んでいくもの…と思いきや、こんな答えが返ってきた。
「僕らがもう1本一緒にやるというのは、かなり可能性が低いと思う。なぜなら彼にとって魅力的で納得のいく役は本当に少ないからね。警察物や西部劇の話が来たりするけど、彼はもうそういったものはやりたがらない。すでにそういったジャンルは手がけてきたしね。だから一緒にやれるものを見つけるのは難しいと思う。彼は監督するのをとても楽しんでいるから、できる限り監督をやりたいはずだよ。」

では最後に、今後はどういった作品にチャレンジしていくのか聞いてみた。
「僕はすべてのジャンルが好きだ。中でも、『ミスティック・リバー』('04)は僕らが一緒にやった作品の中で、特にお気に入りの1本だよ。それは僕がやりたいものに最も近いものだね。あの映画は、僕がこうなってほしいと思うような出来に仕上がっていた。まるで自分で監督したみたいにね。ああいった題材が好きなんだ。犯罪ドラマとかでいま追いかけているものがある。『人生の特等席』とは、全然違うものをやってみたいんだ。ある特定のタイプの監督として枠にハメられたくないからね」。

“伝説の男”クリント・イーストウッド、その人を超えるのは、この新人監督なのかもしれない。

《シネマカフェ編集部》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]