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フランスの新星レア・セドゥ インタビュー 片思いのカレを見返すため女優に?

『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の冷酷な女暗殺者、ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』で主人公が立ち寄るパリの雑貨屋の店員と言えばピンとくる人も多いのではないだろうか? いずれの作品でも決して出番が多い役とは言えないが、何とも言えない強烈な印象を観る者の心に刻み込む。レア・セドゥ、27歳。今後、より大きな役柄で世界中の注目を集めることになるであろうフランスの新星である。まもなく公開を迎える主演作『マリー・アントワネットに別れをつげて』では、王妃マリー・アントワネットの朗読係・シドニーを演じている。プロモーションのために来日したのは10月下旬。自身3度目の日本となったが「迷子になって東京の街をさまよいたいんです」と何とも不思議で魅惑的な笑みを浮かべる。

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『マリー・アントワネットに別れをつげて』レア・セドゥ/photo:Naoki Kurozu
『マリー・アントワネットに別れをつげて』レア・セドゥ/photo:Naoki Kurozu 全 7 枚
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『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の冷酷な女暗殺者、ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』で主人公が立ち寄るパリの雑貨屋の店員と言えばピンとくる人も多いのではないだろうか? いずれの作品でも決して出番が多い役とは言えないが、何とも言えない強烈な印象を観る者の心に刻み込む。レア・セドゥ、27歳。今後、より大きな役柄で世界中の注目を集めることになるであろうフランスの新星である。まもなく公開を迎える主演作『マリー・アントワネットに別れをつげて』では、王妃マリー・アントワネットの朗読係・シドニーを演じている。プロモーションのために来日したのは10月下旬。自身3度目の日本となったが「迷子になって東京の街をさまよいたいんです」と何とも不思議で魅惑的な笑みを浮かべる。

ブノワ・ジャコー監督から映画出演のオファーを受けた際、彼女の元には全く異なる物語の2つの脚本が届けられたという。「一つはこの『マリー・アントワネットに別れをつげて』。もうひとつはもっと生々しい物語で、男性に所有される女性を描いた内容でした。『どちらがやりたいか?』と聞かれたので、こっちを選びました。魅力に感じたのはまず、フランス人にとって最も重要な歴史的な出来事であるフランス革命を描いた歴史物だったということ。ヴェルサイユ宮殿で撮影できるということが決まっていたのも大きな魅力でした」。

映画では、宮廷使用人である彼女の視点で革命に揺れるフランス王室が描き出される。激動の歴史はもちろんのこと、圧倒的なカリスマを誇る王妃マリー・アントワネットに対するシドニーの心の揺れ、微妙な心情がドラマの大きな見どころである。
「マリー・アントワネットは“主役”だけどシドニーは物語の“センター”に位置する役。王妃の感情の流れを、観客はシドニーを通して見るという物語の動線が興味深く新鮮でした。シドニーはスターやアイドルを見つめるような憧れと熱狂、羨望を持って王妃を見てるんです。その思いは物語と共に変化していくというよりも、大きくなっていくと言った方がいいかもしれない。革命という濃縮された3日間があって、その時期に重ね合せるかのようにシドニーは感情を昂ぶらせていき、最後は王妃のために命をも捧げるような決断に至るんです」。

原作小説のシドニーはもっと年上だったが、レアのキャスティングが決定すると監督は設定を変更。年齢以外にも彼女に合わせてシドニーのキャラクターを変更していったという。
「ブノワ・ジャコー監督は“若さ”というものに惹きつけられていて、これまでのどの作品でもそれを主題に置いて追いかけ続けてきた監督です。きっとこれからもそうね(笑)。シドニーを若くしたことで若者がアイドルに対して持つような憧れであったり、若さゆえのシドニーの無垢でナイーヴな部分をより鮮明に描けたと思うわ」。

だが物語の中心人物でありながら、シドニーは決してセリフが多いとは言えない。セリフや行動よりもちょっとした仕種や表情で微妙な感情の揺れを表現することを求められた。
「私自身、言葉に出して『私はこういう人間なの』と主張するのではなく、言葉に出さずに『空気を演じる』ことが好きなんです。そうやって演じることで空気の層ができて複雑性が生まれる。観る人が『こうかな? それともこうだろうか?』と様々な側面を見出すことができるようになると思うんです。確かにシドニーはあまり言葉を発しないけど、彼女は常に自分自身と会話を重ねていく人。それを表現できたかなと思います」。

まさに“空気”、“オーラ”こそが彼女を言い表す上で鍵となる要素である。冒頭で挙げた『ミッション:インポッシブル』『ミッドナイト・イン・パリ』の2作品についても、あの2つのキャラクターを演じたのが同じ人物? と思うほど役柄ごとに全く異なる空気をまとっている。本作のシドニー然り。そして目の前でインタビューを受ける彼女はそのいずれともまた全く異なるのだ。そんなこちらの言葉に「それは私が女優としてそうありたいと考える姿ですね」と照れくさそうに微笑む。さらに、かつてウディ・アレンが監督・主演を務めた『カメレオンマン』('83)の主人公の姿が彼女が考える理想の女優の在り方だとも明かしてくれた。
「ウディ・アレンが演じた主人公は、心理学者と話をすると自分も心理学者になるし、黒人と話せば肌の色まで変えて黒人のようになってしまうという男性。私もまさにそんな“カメレオン”のような女優になって、演出家の意図によって変化していきたいんです。そのために確固たるヒューマニティが必要だと思ってます」。

ちなみに、彼女の祖父はフランスでも名の知れた大手映画会社の会長である。女優としての高く明確な理想からも、彼女にとって女優という仕事は幼い頃からの夢であり“必然”だったのかと思いきや、彼女が女優を志すことになったのには意外なエピソードが…。とある恋が彼女を女優の道に誘うことになったのだとか。
「学校を卒業したときに、今後何をしようか迷ってたんです。私は学校の勉強は、好きでも得意でもなかったので(苦笑)。そんなときにある俳優と出会い、彼に恋をしたの。彼は私の家の比較的近いところに住んでいたし、彼が出演する舞台を見に行って顔を合わせることも多かったのに、いつも彼は『キミとは何度も会ってるよね? でも名前は何だっけ?』と言われて毎回、私は彼に自分の名前を言わなきゃいけなかったんです。だからいつか有名になって私の名前を尋ねなくてもいいようになってやろうと思って女優になったの。その俳優? フランスでは少しは名前は知られてるわ。でも、名前は言えないわ(笑)!」。

この男優のつれない態度のおかげでレア・セドゥという稀有な輝きを持つ才能が映画界に足を踏み入れたのだから、映画界にとってはその俳優に感謝したいところだ。「迷子になりたい」と語る彼女がこの先どこへたどり着くのか——? 今後も目が離せない。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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