【追悼3.11】映画で見る東日本大震災の「真実」、「現状」、そして「その先」
東日本大震災――。多くの人々の日常を一変させたあの日から早いものでもう2年が経った。一日も早い復興を願って、多くの人々が行動を起こし続けている。この震災のことを忘れてはいけないし、忘れられるはずもない…
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報道が伝えきれなかった「真実」を、一人のジャーナリストが実際に目撃し、取材した事実を基に描く西田敏行主演『遺体 ~明日への十日間~』。舞台となるのは岩手県・釜石市にある廃校となった中学校の体育館。災害が起きた当初、残された市民たちは津波の状況を把握できていない中で、同じ町に住んでいた人の遺体を搬送し、検死、DNA採取、身元確認を行わなくてはならない状況となった。本作では犠牲になった人たちの尊厳を守りながら、一刻も早く家族と再会させるために同じ被災者でありながら、つらい役割を担わざるを得なかった人たちの姿を描く。「ご遺族の方々の心境を考えると、劇化するのが正しいかどうか判断には非常に迷いました。しかし劇化することによって“事実”とは違う“真実”が引き出せるのではないかと思い、出演を決意した」と西田さんも語るとおり、この劇中で起こっていることはどれもまぎれもない真実なのだ。未曽有の災害に直面し、立ち向かった人たちがいるということを知ることのできる1本だ。
そしてテレビでは伝えきれない、「命」を繋ぐ人々の姿を収めたドキュメンタリー『生き抜く 南三陸町 人々の一年』。森岡紀人監督は、自身はマスコミに身を置きながらも、マスコミが捉える「被災地の人々」という群像ではなく、顔の見える被災者の静かな思いを伝えたい、という強い想いで宮城県南三陸町に入り取材を続けた。最愛の妻を亡くした男性。避難所でのストレスと孤独に苛まれる女性。いち早く海の仕事を再開させた一人の漁師。町の防災担当だった夫を失った女性。前に進もうとする人、絶望の淵に立ち弱っていく人、じっと立ち止まったままの人…。南三陸町の被災1年の厳然たる「現状」を私たちの目の前に突き付ける。
そして震災後の茨城県日立市を舞台に、突然の事故で最愛の夫を失いながらも、その悲しみを乗り越えようとするヒロインの心の葛藤を美しい桜並木の風景と共に描いた『桜並木の満開の下に』。本作を含め、監督作品5本のうち4本がベルリン国際映画祭に招待されるという快挙を果たした舩橋淳監督が、主演に臼田あさ美を迎えて映画化した本作。茨城県日立市の映画製作支援制度「ひたちシネマ制作サポートプロジェクト」の助成を受けて製作され、ロケ場所提供、エキストラ、炊き出しなど日立市民による様々な協力を得て撮影が行われた。映画のクライマックスを彩るのは「日本のさくら名所100選」にも選ばれた同市内平和通りの桜並木だ。震災の傷跡が残る中、立派に咲き誇る美しい桜の姿が、私たちの心に「その先」を予感させる。
数多くの命が消え、多くの被災者が行き場を失い、職を失い、団結し、立ち上がり、新たな希望の種を植え続けた苦しくも前を向いて歩き続けた激動の2年間をあなたは、どんな想いでみつめるだろう。
《シネマカフェ編集部》
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