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オスカー受賞デザイナーが語る『アンナ・カレーニナ』 原作から離れた“再解釈”のドレス

映画『アンナ・カレーニナ』で米アカデミー賞を受賞したばかりの衣装デザイナー、ジャクリーン・デュラン。今回の『アンナ・カレーニナ』<では、歴史劇の衣装を再解釈し、トルストイの小説から忠実に再現することを避ける…

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『アンナ・カレーニナ』衣装デザイン画 -(C) Yi Lin Cheng for Focus Features(C) 2012 Focus Features LLC. All rights reserved. photography by Eugenio Recuenco,Laurie Sparham
『アンナ・カレーニナ』衣装デザイン画 -(C) Yi Lin Cheng for Focus Features(C) 2012 Focus Features LLC. All rights reserved. photography by Eugenio Recuenco,Laurie Sparham 全 15 枚
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映画『アンナ・カレーニナ』で米アカデミー賞を受賞したばかりの衣装デザイナー、ジャクリーン・デュラン。今回の『アンナ・カレーニナ』では、歴史劇の衣装を再解釈し、トルストイの小説から忠実に再現することを避ける決断が下されたが、その上で彼女はどのように衣装で本作を表現していったのだろうか?

文学史上、最も美しく、最も哀しい愛の物語として、いまもなお世界中の読者を涙と感動で包んでいるロシアの文豪レフ・トルストイの最高傑作「アンナ・カレーニナ」を映画化した本作。舞台は19世紀末のロシア。満ちあふれる美貌を持ち、政府高官のカレーニンの妻であるアンナ・カレーニナはサンクト・ペテルブルクの社交界の華。ある日彼女はモスクワへと旅立つ途中で、騎兵将校のヴロンスキーと出会い、2人は一目で惹かれ合っていく。アンナは欺瞞に満ちた社交界と家庭を捨て、ヴロンスキーとの破滅的な愛に溺れていくのだが…。

「小説は読んだけれど、結局は監督と脚本家のビジョンに沿う必要があるわ。監督のビジョンは実際の1870年代に沿うことではなく、当時のディテールすべてを軽くしたいと考えていたの。だから、衣装のシルエットも軽減されたわ。そのすべてが、小説に書かれたドレスとはそぐわないものだったのよ」と語るジャクリーン。しかし、舞踏会に行くシーンだけは、小説に沿い“黒いドレス”をアンナに着せた。その理由を尋ねると「それが文学史上最も有名な衣装のひとつだから」と彼女は答えた。「ここで群衆の衣装は25色のパステルカラーが混ざり合い、黒いドレスのアンナを際立たせているわ。この映画の衣装は再解釈したもので、私たちはどの衣装のディテールに関しても小説を参考にはしなかったの。トルストイを直接解釈することはなかったのよ」と、本作に登場する衣装の数々が小説の“再現”で終わっていないことを述懐する。

年代によってドレスにももちろん流行があるもの。ウエディングドレスを例にとって見ると、2000年代から肩や背中の露出があり、トップはスリムに、スカートの部分をアレンジしたものがトレンドとなった。いまだにこういったトランペット、マーメイドラインの人気が高いことからもその事実はお分かりいただけるはず。日本の場合、明治時代のドレスで言えば色鮮やかであるものの、肩から手首まで袖のあるドレスが多く見られる。つまりは、デザインやTPO、季節・時間帯などより、数多くの種類が存在したのだ。

奥が深いドレスの世界――。そのドレスをさらに輝かしているのが、“宝石”の存在だ。ジャクリーンは本作に登場する“宝石”について次のように語っている。「ジョー・ライト監督とキーラとの最初の頃の話し合いで、私たちはアンナが身に着ける宝石はすべて本物がいいだろうと考えたの。彼女は富裕層がたくさんいる19世紀後半のロシアの上流階級に生きる女性でしょ。それにアンナはさまざまな宝石を所有するという、ある種の虚栄心に陥っているように見えるから」。さらにジャクリーンは「シャネルにコンタクトを取ったところ、彼らは喜んで力を貸してくれたわ」という撮影秘話まで明かしてくれた。「パリに向かった私たちに、彼らは自由裁量を与えてくれたの。だから、私は同時代に存在したコレクションの中から、私が時代に即していると考えた宝石すべてを使うことができたわ。『コメディア』のネックレスはとてもモダンでとても女性らしいものよ。それに真珠がついたダイヤモンドの繊細なイヤリングもシャネルから借りたものだけど、ぴったり合っていると思った。ダイヤモンドほど華麗なものはほかにないわ」。

これだけ美しいドレスに宝石、さらにはジャクリーンが「不幸にもすべて本物なの」と語る毛皮まで、登場する衣装や小物の数々はどれも美しい。では、トルストイの小説から離れた解釈で創作をした彼女のインスピレーションの源はなんだったのだろうか? そう尋ねるとジャクリーンは「たくさんの絵画を観たの」と教えてくれた。「できるだけ多くのビジュアル的な参考資料を得ようと努力したの。数日間ロシアを訪れ、モスクワの博物館めぐりもしたわ。その結果、ロシアの上流社会がパリのファッションに大きな影響を受けていたことが事実だと分かったわ。ロシア地方のファッションは、レヴィンのキャラクターで探究しようと思っていたし、農民の衣装は全部私たちで作成したのよ」。

「彼女がヴロンスキーと初めて出会うときに来ている黒の夜会服と、最後のほうのオペラのシーンで、彼女が恥をかかされるときに着ている白の夜会服は、対照的でしょ?」とジャクリーンが言うように、本作に登場する豪華絢爛な衣装の一つ一つにも何らかの意味や背景が存在している。美しいドレスの数々に、きっとあなたも魅了されてしまうはずだ。

《シネマカフェ編集部》

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