※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【ディズニーの楽しい映画の作り方 第5回】参考資料は『トップガン』?飛行機に魅せられた男たち

『美女と野獣』や『ピーター・パン』などのスピンオフ作品を製作し、良作なアニメーションを生み出し続けるディズニーの新たな顔となる――

最新ニュース インタビュー
注目記事
“フライト・スパーバイザー”のジェイソン・マッキンリー(右)&“空中プレビズ兼レイアウト・アーティスト”のトーマス・リーヴィット(左)/『プレーンズ』 in ディズニー・トゥーン・スタジオ(L.A.)
“フライト・スパーバイザー”のジェイソン・マッキンリー(右)&“空中プレビズ兼レイアウト・アーティスト”のトーマス・リーヴィット(左)/『プレーンズ』 in ディズニー・トゥーン・スタジオ(L.A.) 全 12 枚
拡大写真
『美女と野獣』や『ピーター・パン』などのスピンオフ作品を製作し、良作なアニメーションを生み出し続けるディズニーの新たな顔となる――ディズニー・トゥーン・スタジオ。アメリカ・ロサンゼルスにある、誰も足を踏み入れたことのないこのスタジオに、シネマカフェが初潜入! まもなく公開される映画『プレーンズ』の制作スタッフたちに取材を敢行。「ディズニーの楽しい映画の作り方」と題して、制作の裏側をスタッフたちの特別インタビューを通してご紹介!

第5弾は、“フライト・スパーバイザー”のジェイソン・マッキンリーと“空中プレビズ兼レイアウト・アーティスト”のトーマス・リーヴィット。なんだか担当名だけ聞くと、空のシーンを担当していそうだが、果たしてどんな『プレーンズ』製作を語ってくれるのか?

――まず始めは、この質問から。“フライト・スパーバイザー”と“空中プレビズ兼レイアウト・アーティスト”ってどんな仕事?

ジェイソン:フライトのシーンをいかにカッコよくてリアルなものにするかが僕らの仕事なんだ。メインとなるのは、プレビズと呼ばれる工程の作業だね。映画がどんな風に見えるか…要はルックスの部分を一度、低い解像度の3D映像を作ってみて、最終的にどんなものに仕上がるのかを(クレイ・ホール)監督たちに見てもらうものなんだ。このプレビズで、実際の映画の中の“動き”がようやく掴めるんだ。

普通ならプレビズの時の映像は、完璧に作っても、最後には変わってしまうことが多いから“だいたい”で作るんだけど、『プレーンズ』の場合は違ったんだ。フライト・シーンというのは、ほかのどんなアニメーションのシーンよりも複雑で、だからプレビズの段階で完璧に仕上げた。でも、やってみて分かったことだけど、本当に難しかったよ(笑)。アニメ業界の中でも、このやり方で出来る人は数えるほどだと思う。

――難しい仕事をやり切った! そんな感慨で満足げな表情を浮かべるジェイソン。だが、さらに話を聞き進めていくと、もっともっと誇った表情しても誰もいいのでは…と思えるほど彼らの仕事は全体の工程の中でも難をようするものだった。

ジェイソン:まず、ストーリーボード(連続したイメージスケッチ)から“動き”のある2D映像へと起こしていく。それを監督に見せてOKが出てからが、プレビズなんだけど、そこまでに一つのシーンだけで6週間かかるんだ。

――この時にジェイソンはあるワンシーンを見せてくれた。それはダスティが世界一周レースに出場するために参加した予選試合のシーン。それまで畑を漫然と飛ぶだけだったダスティが、いよいよレース機としての力を試され、かつ作品上でも一気に躍動感を感じさせるシーンだ。

ジェイソン:(このシーンについて)僕にはあるアイディアがあったんだ。スポーツ番組のような雰囲気にしたいというアイディアがね。2D映像では無事にOKが出たけど、プレビズの制作には6~8週間かかったよ。さらにここから、3D映像化するためには1か月~数か月かかるんだ。だから、一番最初の段階から数えたら映画として観客に観てもらえるようなクオリティのものに仕上げるには1年くらいだね。

でも、ボツになることも日常茶飯事だよ(笑)。でも、ホール監督は明確なビジョンを持っていたし、その上、“映画はスタッフみんなで作るものなんだ”っていうチームワークを大切にする人だから、そのボツにはちゃんと理由があるし、出来上がったものを見たときに改めて納得できたよ。

――制作スケジュールも、ボツが何回も出たことも明らかとなったが、制作の中身についても聞いてみたい。制作時にはどんなことに苦労し、またどんな部分を重要としているのだろうか?

ジェイソン:“飛んでるもの”というのは、人が日常的に目にしているものだから、脳裏に焼き付いてるんだ。その普段僕らが見ている飛行機のスピードや重力の影響を表現する時に、やはりリアルであることが不可欠なんだ。そこを追求しないと、映画を観たときに観客は違和感を感じて、すぐに“何かが違う”って分かってしまうんだ。そうすると、もうストーリーには入り込んでもらえなくなってしまう。

リアルなものが描けないと、どうしたってオモチャの飛行機が糸で吊るされてるみたいに見えてしまう。だから、『プレーンズ』はアニメーションだけど、実際の飛行機のスピードだったり旋回能力だったり、現実で出来る範囲のアクションだけでフライト・シーンを構成したんだ。

そういった意味では『トップガン』や『トラ・トラ・トラ!』『バトル・オブ・ブリテン』なんかは素晴らしい作品だと思う。『プレーンズ』には、それら実写映画のカメラワークを参考にして、撮影監督とも何度も話し合ったよ。


――そう豪快に笑うジェイソン。これまでにも、TVシリーズの「Dogfights」(原題)や2012年の戦争映画『Red Tails』(原題)など、数々のフライト・シーンを手がけてきたというが、飛行機に魅せられたきっかけはなんだったのだろうか?

ジェイソン:昔、「SAMRAI」という小説を読んで、そこで描かれていたフライト描写がカッコよくてね。もう20回以上は読んでるよ。

――そんなジェイソンが全幅の信頼を置くアニメーターのトーマスは、一見職人に見えないようなコミカルな動きを交えながら話す、なんとも親しみやすい男だ。

トーマス:実際にフライト・シーンを制作する作業のときは、僕が“ああしたい、こうしたい”って色々アイディアを出していって、それをジェイソンに“リアルの範疇で可能かどうか?”を判断してもらったんだ。ジェイソンはあくまでもリアルを追求する姿勢で制作に携わっていたよ。

飛行機たちが生きている世界だからね。空を飛んでいるときも話すシーンはもちろんあるんだけど、あんまり近づき過ぎたら現実だったらぶつかって墜落するよと、上空でキャラクターたちを動かす上でのアドバイスももらったね。

そのほかに僕が参考したものを挙げるなら、宮崎駿監督の『紅の豚』かな(笑)。でもそれくらいだ。それほど、僕はジェイソンを信頼していたんだよ。

《シネマカフェ編集部》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]