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【特集:アナと雪の女王】ディズニー・ミュージカルの復活…舞台裏の主人公たち

『白雪姫』に始まり、『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『塔の上のラプンツェル』と上質なミュージカル仕立てのアニメーション映画を世に贈り出し続けているディズニーの、新たなる“金字塔”として注目を集める『アナと雪の女王』。

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右からクリス・バック(監督)&ジェニファー・リー(監督)&ピーター・デル・ヴェッコ(プロデューサー)/『アナと雪の女王』 in ディズニー・アニメーション・スタジオ(L.A.)
右からクリス・バック(監督)&ジェニファー・リー(監督)&ピーター・デル・ヴェッコ(プロデューサー)/『アナと雪の女王』 in ディズニー・アニメーション・スタジオ(L.A.) 全 13 枚
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『白雪姫』に始まり、『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『塔の上のラプンツェル』と上質なミュージカル仕立てのアニメーション映画を世に贈り出し続けているディズニーの、新たなる“金字塔”として注目を集める『アナと雪の女王』(公開中)。

ディズニー史上初のWヒロインや楽曲がアカデミー賞にて「長編アニメーション賞」「主題歌賞」を受賞し、すでに世界中を魅了にしている本作だが、シネマカフェはその制作スタジオであり、ディズニーの総本山であるロサンゼルスの「ディズニー・アニメーション・スタジオ」に潜入! 監督やアニメーターを始めとする制作スタッフに特別取材を敢行。連載インタビューとして、『アナと雪の女王』の魅力をたっぷりとご紹介!

第3弾は――監督のクリス・バックとジェニファー・リー、さらにプロデューサーを務めたピーター・デル・ヴェッコ。名作「雪の女王」をインスパイアしながらも、ディズニー独特のミュージカル作品に仕上げたその舞台裏、さらにディズニー史上初となる女性監督ジェニファーの活躍ぶりを語ってもらった。


――インスパイアしたという「雪の女王」は、“雪の女王”が少年を連れ去り、彼を救い出そうと少女が冒険を繰り広げるアンデルセン童話だ。“雪の女王”は俗にいう悪者のキャラクターだが、本作ではヒロイン・アナの姉であり、そして自分自身の力を恐れ、街を飛び出してしまったもう一人のヒロイン・エルサがそれにあたる。しかし元々の物語を踏襲しつつも、決して悪としては描かれていない彼女のキャラクターからも、勧善懲悪のストーリーとは異なった作品となるが、果たして、どんな経緯があったのだろうか?

ジェニファー:「そうね、もとは悪者ね(笑)」。

クリス:「僕たちはまず、この『アナと雪の女王』を作っていくうえで、ディズニーのフェアリーテール(おとぎ話)において、“真実の愛”とは一体なんなのかというのを定義するところから始めたんだ。それで、普通だとプリンスがプリンセスにキスをすることで救うっていうストーリーだったりするけど、今回はそうしない形にしようってことになったんだ」。

ジェニファー:「この作品ではエルサというひとりの女性を描くうえで、本来雪の女王がもっている“悪”の部分を、自分の不思議な力に対する“恐れ”という形に変換したの。“正義と悪”を描くと、ストーリーがそれだけで完結してしまって、私たちが描きたかったものじゃなくなってしまう。だから、“愛と恐れ”の対立構造にすることで、よりストーリーに膨らみを持たせたいと思ったの。今回は、姉妹のお話、家族のお話にしたかった。だから、自分自身を救うために闘うヒロインの物語として描いたのよ」。


――もはやオリジナルといってもいいほどに完成された作品となった本作。全世界での大ヒットは勿論のこと、ゴールデン・グローブ賞での「最優秀長編アニメーション賞」、アカデミー賞での「長編アニメーション賞」「主題歌賞」のW受賞からも、観客だけでなく、映画史に残る作品として高い評価を得ていることが分かる。その理由を改めて聞いてみたい。

クリス:「この作品は、幅広い年齢の人々が楽しめるように作りたいという思いがあったんだ。若い人~お年寄りまでね。子どもたちだったらオラフ(雪だるま)というキャラクターを大好きになってくれるだろうし、もう少し大人だったら姉妹の関係という部分に共感してくれる。そうやって、どの年代の人が観ても魅力的に映る要素を入れることを意識したからだと思うよ」。


――「すべての要素」とさらりと話すが、それを実行することは簡単なことではない。そこには相当な苦労もあったようだ。

ピーター:「アイデア自体は5年前からあったんだ。でも、作っていくうちに『あぁした方が面白いかな』『こうすればもっと楽しいものができるんじゃないか』って、どんどん話の展開も変わっていったんだ。ほとんどラストまで物語やストーリーボードを作っても、また最初から作り直したり…なんてことを7回くらいは繰り返したよ。

映画自体を作っていた期間はほかの作品に比べればきっと短いと思うけど、ここまで繰り返し作り変えていったという作品は僕の経験上、過去に例がなかった(笑)。最後のクライマックスとなるシーンだけでも、ストーリーボードを1,000枚以上は書いていたと思うよ(笑)」。


――そんな苦労を重ねて出来上がったストーリーはおとぎ話であり、現代的なものとなった。それはキャラクターにも同じことが言えるが、ここで大活躍を見せたのがディズニー初の女性監督となったジェニファーだ。男性監督たちにない、新たな感性が本作のヒットを生み出した理由ともいえるが?

ジェニファー:「非常に光栄だったわ。それに今後も続いていって欲しいとも思う。女性監督は何が男性監督と違うかというと、すごく“バランス”にいつも気を配っているの。おとぎ話の中であっても、ファンタジーになり過ぎない真実味のあるキャラクターが描けたと思うわ」。

クリス:「そうだね。キャラクターのバランスがすごくいい。男性監督が女性キャラクターを描くと、どうしてもありふれたものになってしまうんだ。でも今回、彼女と一緒に作ったことでそうはならなかった。男性が描くと、だいたい“理想とする女性”を描いてしまうんだけど、アナやエルサには現実の人間と同じでちゃんと“欠点”があるんだ。新しいものができた実感があったよ」。


――ここで気になるのが、“2人”の監督。それぞれにこだわりもあるだろう、増してや“別の生き物”といわるほど感覚も異なる、男と女。制作の間に衝突は起きなかったのだろうか?

ピーター:「2人共本当に仲良くやっていたと思うよ。それに衝突しても、そこから新たなアイディアを生んでいくようにしていたと、僕には見えたよ(笑)。とても理想的な監督たちだった」。

ジェニファー:「もしも気になることがあったら、そこには注意を払うようにしていたわ。でも衝突しても、答えはいつも『私のやり方で』とか『クリスのやり方で』とはならなかったかな。常に“第3の答え”を見つけようとしたの。2人でやる意味はまさにそこにあったと思う」。

クリス:「そうだね。お互いにない部分を補い合って、より良いものが出来たと確信しているよ」。


――少し話の向きは変わるが、本作のヒットは“ディズニー・ミュージカルの復活”と言われている。これまで数多くの作品を生み出してきたが、ここ数年は本作のような世界的な大ヒットと呼べるミュージカル作品が少なかったのも一つの事実としてある。どんな思いで、そしてどういった経緯で、この作品を見事なミュージカル作品として仕上げていったのだろうか?

クリス:「いつもミュージカルでやりたいと思っているんだ。今回に関して言えば、ジャンル的には最初はアクション・アドベンチャーだったんだ。だけど、音楽を担当してくれたロペス夫妻(※アカデミー賞「主題歌賞」受賞)が関わることが決まった時に、『絶対ミュージカルでやろう!』っていう流れになっていったんだ」。

ジェニファー:「ロペス夫妻の音楽がそれを可能にしたのだけど、アナやエルサが自然に歌い出すためには、アクションだけでは難しかった。もっとエモーショナルな演出がないと、突然歌い始めたように見えてしまう。彼女たちが心に秘めたものに突き動かされて、湧き上がるように歌い始めるにはやっぱりミュージカルが最適だったと思うわ」。

クリス:「これからミュージカルも作っていくだろうし、そうじゃないものも作っていくと思う。そうやってスイッチしていくことで、常にフレッシュなものを観客に見てもらって、飽きられないようにしたいね(笑)」。

ジェニファー:「そうね。『アナと雪の女王』も2013年(※全米公開当時)だってことが分かるようなフレッシュな作品にしたかった。楽しい音楽を最前線で作っていたロペス夫妻に参加してもらえたのは、本当に素晴らしいことだった。クラッシックを祝福しながらも、新鮮さを感じてもらえるような新しい作品をこれからも作っていきたいわ」。


――苦難を乗り越えた先に見えた光。まさにディズニーの作品たちのようなストーリーが、映画作りの舞台裏にも流れている。そんな感動秘話を明かしてくれた後でとても申し訳ないのだが、最後に本作で最もお気に入りのキャラクターは誰か聞いてみた。

ピーター:「僕はアナだね。彼女にはスーパーパワーはないけど、自分のことを信じていて、エルサのことも信じていて、決して困難な壁が目の前に立ちはだかっても諦めないんだ。それが物語の最後には、彼女自身のスーパーパワーになっていくんだ」。

ジェニファー:「私もアナかな。似ているところがたくさんあるの(笑)。早口で喋るところだったり、おっちょこちょいなところだったり。そして、エルサのことをとても尊敬しているの」。

クリス:「僕はオラフが大好きなんだ。アニメーターにとって夢みたいなキャラクターなんだ。心が子どもみたいに純粋で、楽しくて。どこまでも心が綺麗なんだ。劇中で彼が『ハグしたい』っていうシーンがあるんだけど、僕も同じ気持ちになったよ(笑)。抱きしめてあげたくなるようなキャラクターだね」。

日本でも大ヒットとなるであろう『アナと雪の女王』。人が生み出すドラマの裏側にも、またドラマがある。本作のヒロイン・アナのように、どんな分厚く重い雪も掻き分けながらただ信じて前に進み続ける。舞台裏の主人公たちにも、そんなスーパーパワーを見ることができた。

《シネマカフェ編集部》

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