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【インタビュー】染谷将太×三浦しをん 俳優と原作者…「きらめきと滑稽」の撮影秘話

海外で絶賛を浴びた『ヒミズ』から2年――いまもって染谷将太がもつ“独特の存在感”は消えていない。それはスクリーンの中だけでなく、こうして目の前にしてみてもその感慨はありありと横たわっている。

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染谷将太(主演)×三浦しをん(原作者)『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』PHOTO:Nahoko Suzuki
染谷将太(主演)×三浦しをん(原作者)『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』PHOTO:Nahoko Suzuki 全 14 枚
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海外で絶賛を浴びた『ヒミズ』から2年――いまもって染谷将太がもつ“独特の存在感”は消えていない。それはスクリーンの中だけでなく、こうして目の前にしてみてもその感慨はありありと横たわっている。

そんな彼の隣に座りながら「直視できない…」と何故か全力で照れるのは、「まほろ駅前多田便利軒」や「舟を編む」などベストセラー小説を生み出してきた、直木賞作家・三浦しをん。

この一見不思議な組み合わせの2人が語るのは、映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』について。『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』と数々のヒット作を手がけてきた矢口史靖監督が描く、“林業”をテーマにした青春ストーリーだ。俳優と原作者、それぞれに異なる立ち位置から本作をたっぷりと語ってもらった。

染谷さんと言えば、『ヒミズ』然り、『悪の教典』然り、現在撮影中の『寄生獣』然り、人間のダークな面をとらえた作品に数多く出演してきたが、本作はなんといっても青春モノ。そして、染谷さんが演じたのは夢も希望も特になく、漫然と10代の終盤を迎えようとしている主人公・勇気。目標もないまま高校を卒業し、生まれ育った都会から遠く離れ、携帯も繋がらない、コンビニも無い、若者もほとんどいない“ないない尽くし”の神去村で、林業の魅力に気付いていく姿を描く。

今回の主役抜擢に、矢口監督は「染谷くんの『陰』と『陽』があるなら、僕は『陽』の部分に惚れた」と語るが、劇中では「陽」の部分を全面に押し出した、ちょっとチャラくて、一生懸命なのに面白くなってしまうコミカルな染谷さんが登場する。

「嫌なやつにはなりたくなかったので、勇気を憎めないヤツにしたかったんですよね。ちょっとなんか腹立つけど、イラっとするけど、嫌いになれないというか、良いヤツっていうんですかね。矢口さんも『勇気は可愛いやつにしたい』って仰っていたので、絶対そっちのほうが魅力的だなって思って、でもそれって凄く難しいことなんですよ。

『人を泣かせるより笑わせる方が難しい』ってよく言うじゃないですか。人を笑わせるのは得意な方ではないので、必死にやれば笑ってもらえるかなって。ただ滑稽になるしかないな、と思いましたね」。

そんな染谷さんが作り上げた“勇気”を、三浦さんは「きらめきに目がやられそうで、眩しくて」と独特の言葉で絶賛する。

「もちろん姿形だってきらめいてますけど、役者さんとしてもです。いままで染谷さんの出演なさった作品だと、私は影のある役しか拝見したことがなくて。今回大自然の中で、山や村の田んぼとかがある中で、腰が引けつつ頑張ってるっていう、その“おちゃらけ青年”像みたいな役を改めて見ると、こっちのきらめきも凄いってびっくりしました。

私はもはや時間が経ちすぎて、10代の人の気持ちがよく分からなくなってしまいましたが(苦笑)、染谷さんが演じてくださった勇気は、ちょっとズルいところといい、チャラい感じといい、絶妙なダメさみたいなものが、もう登場した瞬間からムンムンしてて。でも、本人も気づいてなかったすごく純粋な部分とか、熱い部分があって、『自分はどこへ行ったらいいのかな…』っていうことを無意識のうちに思っているような、そういう10代独特の雰囲気が出てました。私が頭の中で思っていた勇気より、数万倍魅力的でした」(三浦さん)。

「役者という職業をやっていると、原作者さんが現場に来るとすっごい緊張するんですよ。だって、お借りしてるわけじゃないですか。三浦さんが作った勇気という人物もそうですし、そもそも“(神去)村”を作った方ですから。いまも正直に言うと、若干緊張してます…」(染谷さん)。

そう互いに称え合いながらも、何故か終始うつむきがちにこちらを見る2人。独特の存在感と胸に想いを秘める部分は似た者同士なのかもしれない。では、別世界の人について話を聞いてみよう。

本作で主人公・勇気が飛び込む林業の師にして、豪快極まりない男・ヨキを演じた伊藤英明と、マドンナ的存在となる直紀役の長澤まさみ。染谷さんとこの2人が本作のメインキャストとなる…誰もが予想できるかもしれないが、それぞれが醸し出す雰囲気はバラバラだ。だが、一見して凸凹に見えるそのキャスティングの妙がこの作品をより豊かなものにしている。

「最初はヨキって“得体の知れない獣が来た!”って感じなんですけど、だんだん勇気と本当の兄弟みたいに見えてくるんです。“一緒に暮らしてる人”感みたいなものが出てきて、だんだん家族になっていく。2人が同じ画面内に並んでいるだけで、互いへの信頼が増す過程が伝わってきました。

長澤さんが演じられた直紀は、本当に『山』みたいにちょっと気まぐれですね。いろんな顔を見せる底知れない感じで、マグマみたいなものを心の中に抱えてる人。その魅力がすごくあふれていて、そりゃ勇気も振り回されるって分かっててもついついちょっかい出したり、気になって目で追っちゃったりするよな、って思いましたね(笑)」(三浦さん)。

一方の染谷さんは、伊藤さんとのシーンが特に相当印象に残っている様子。

「すごい面白いなと思ったのが割と対照的なんですよね、自分と伊藤さんって。体格もそうですし(苦笑)。それがすごい逆にバランスがよくて面白かったです。現場の話でいうと、現場を盛り上げてくださるので、自分にはできないところを補ってもらいました。性格の良い“ジャイアン”みたいな人です(笑)。とにかく豪快なんです。カメラが回ってないとこでも勇気とヨキみたいな感じでした。お兄さんみたいでしたね」(染谷さん)。

ちなみに、思い出に残っている伊藤英明エピソードを挙げてもらうと…唐突に「将太、アメ車買っちゃえよ!」と言われたことなんだとか。

劇中、そんな兄弟のような2人が30m以上ある大樹に登るシーンが登場する。驚くべきことにこのシーンはアクション吹き替えもCGも使わず、本人たちがそのまま登って撮影したそう。その話を聞いたとき、原作者の三浦さんも「いや、まさか…と思いました」と笑う。

「『人間があんな高いところに!』っていうくらい大木なんですよ。シナリオを拝読したときに、『凄い大木の枝に登って種を取る』みたいに書いてあったんですけど、いやまさかな…って思ってたら本当に登ってらっしゃって(笑)」(三浦さん)。

「自分も台本読んだときに『あ、こういうシーンがあるんだ』って思って、まぁでも木のセットを立てて、グリーンバック立ててやるんだろうなって思ってたら…気づいたら(上空)30mくらいのところに居たんですよ。しびれました(笑)。でも最初は驚きましたけど、林業のシーンを吹き替えなしで実際に演じるとか、CGもなるべく使わないとかそういう挑戦が好きなので、矢口さんが今回チャレンジしたいことがちょっと見えた気がしました。共犯者でしたね」(染谷さん)。

その甲斐あってか、劇中で描かれる山々も大自然と共に生きる人々も、スクリーンいっぱいに有り余るリアルさで描かれており、「とにかく山の風景がものすごく美しい。そして村人たちが本当に変で、そこに飛びこまざるを得なかった勇気の困惑と憤りががすごく感じられて、観ている人たちも一緒に神去村に行ったみたいな気持ちになれる、そういう痛快な映画でした」(三浦さん)と原作者が太鼓判を押すほどだ。

しかし最後に、山での修行(?)を経た染谷さんからは、「山をなめると痛い目にあう」という実感のこもった教訓が。

「山に入った初日にブヨにやられて、足がパンパンに腫れて熱も出て、一発目から洗礼をくらいました(苦笑)。常に『ここは“山”なんだ』って意識しないといけなかったので、それって不思議なことだなって思いました。山が気まぐれっていうのは本当にぴったりな言葉です。何がどう襲ってくるか分からない。山全体が生きてて、一つの生物みたいに思えてくるんです。何が落ちてくるかも分からないし、何に助けられるかも分からない。全く予測がつかなくて、でもそれが生き物みたいで魅力的でした」。

予測不可能な事態が起こる山。青春も同じなのかもしれない。そんなダブルで予測不可能なものを描いた本作。主演の染谷さんも原作者の三浦さんも、予測不可能な作品に仕上がったに違いない。

《PHOTO:Nahoko Suzuki》

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