【インタビュー】アンジェリーナ・ジョリー 母と女優…2つの顔が生んだ『マレフィセント』
女優として、母として、女性として、あらゆる視点からその生き方が注目されるアンジェリーナ・ジョリー。彼女が選んだ作品はきっと何か意味がある、きっと何か影響を与えてくれる、そんな期待を抱いてしまう。
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「私がこういう作品で、こういうキャラクターを演じることに驚く人もいるかもしれないけれど、ただ単に、今までオファーがなかっただけなのよ(笑)。もちろん、昔からマレフィセントというキャラクターが好きだったこともある。だって、ディズニーで描かれている昔のプリンセスたちは、単純すぎて、一面的で、強さを持っていなかったと思うの。だから私はマレフィセントに惹かれた。また、今の私の作品選びは、とても重要だと思うもの、もしくは非常にクリエイティブで大胆で挑戦的なもの、その2つだけ。真ん中はないの」。
自分が“いい”と思うものに対する絶対的な自信を持っているのも彼女らしさだ。けれど、世界が愛している名作であるがゆえの「恐さ」や「苦労」ももちろんあった。
「オリジナルの『眠れる森の美女』がとても愛されている作品だからこそ、がっかりさせたくないという思いはあったわ。私がやるべきことは、肉体も声もあらゆる点でブレないこと。少しでもブレてしまったらマレフィセントが非常に奇妙なものになってしまう…そういう恐さがあった。それから、今回は子どもたちのために可笑しい部分を出しているのも今までにない挑戦だし、声はどの声がいい? 目の色はどれがいい? 衣裳は? セットは? というように、現場に連れて行った子どもたちの反応を参考にしているの。子どもたちと一緒に作りあげた役でもあるのよ」。
「子どもたちのため」であることこそが、この役を引き受けた一番の理由なのかもしれない。けれど、今でこそ、パートナーであるブラッド・ピットと共に、養子・実子を含めた6人の子供たちを育てているが、そこにたどり着くまでには清く正しい道のりだけではなかった。両親の離婚、いじめられた幼少期、女優として歩き出してからも──自傷行為、タトゥー、ドラッグ、同性愛…ゴシップは耐えなかった。
そんな彼女を大きく変えたのは『トゥームレイダー』の撮影でカンボジアを訪れた2001年。難民や貧困の実態に触れて衝撃を受け支援を決意した彼女は、翌年にはカンボジアから養子を迎え母親になった。そのニュースは世界中を驚かせた。そして当時、マドックスくんと家族になったときのことを思い出すシーンがあったと、なんとも優しい母の顔で撮影をふり返る。
「幼少期のオーロラ姫にせがまれて、困りながらもオーロラを抱っこするシーンは、マドックスが初めて私のところに来た日のことを思い出しながら撮影をしていたの。子どもは無条件の愛を与えてくれるでしょう? それを感じた日だったわ」。
ちなみに、幼少期のオーロラを演じているのは実子のヴィヴィアンちゃん。出演する予定はなかったが、子役の誰もがマレフィセントの姿を見て恐がって近づこうとしなかったため、唯一、恐がらなかったヴィヴィアンちゃんに白羽の矢が立ったというわけだ。母子共演が実現したこともアンジェリーナ・ジョリーにとってはこの上ない喜びだったに違いない。そして、なぜ映画『マレフィセント』に惹かれたのか? その核心に近づくと「何よりも脚本が素晴らしかったのよ」と、さっきまでの母だった顔はクリエイターとしての顔に変わる。
「マレフィセントは純粋無垢な赤ん坊に呪いをかけるけれど、それはとてもひどいことよ。これ以上ひどいことはないと思うわ。けれど、怒りにまかせて彼女はそれをやってしまうの…。そのマレフィセントの心情を観客にどう理解させるか、どうやって彼女の味方にさせるかが重要になってくる。この映画を観ると、マレフィセントが赤ん坊のオーロラ姫に呪いをかけるあの洗礼式を、まったく別の視点で見ることができるはずよ。理解を変えていくこと、認識を変えていくこと、そこが素晴らしく描かれている。人は、どうやったら強くなれるか、どうやったら暗い場所から乗り越えられるか、どうやったらふたたび愛を信じられるのか──この映画には、とてもたくさんのメッセージが詰まっているの」。
アンジェリーナ・ジョリーのありったけの想いが込められた『マレフィセント』は、まぎれもなく愛の物語。この愛は、きっと現代女性の生きるヒントになる。
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