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【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day4

16日、土曜日。今朝も快晴! とても気持ちのよい朝。2時就寝の6時起床で、連日の4時間睡眠だけどパッキリ起きられるのは時差ボケの効用ですね。少しだけパソコンを叩いてから、外へ。

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16日、土曜日。今朝も快晴! とても気持ちのよい朝。2時就寝の6時起床で、連日の4時間睡眠だけどパッキリ起きられるのは時差ボケの効用ですね。少しだけパソコンを叩いてから、外へ。

昨日の反省をふまえて、朝のコンペの上映には行かないことにして(とても評判のいいナンニ・モレッティなので悩むところだけど、追って見る機会のあることを信じることにする)、まずは8時半の「批評家週間」のアルゼンチン映画『Paulina』から本日はスタート。

法律家としてのキャリアを捨て、理想を追って田舎の村での教育に生きようとする女性の物語。信念を貫こうとする姿勢が潔いと見るか、ただ頑固なだけの扱いづらい性格と見るか、どうやら後者であるらしい。彼女の身に降りかかる災難への対処も、周囲の人間を困惑させるばかりで、ヒロインへの共感が全くできない。僕は途中で心底うんざりしてしまったのだけれど、監督の意図を探るべく最後まで付き合ってみた。

主人公に共感できないからダメと切り捨てるか、観客の大半の共感を得られないであろう人物を敢えて扱ってみようとする監督の意欲を買うか、映画の評価というものは、本当に難しいものだ…。僕は決して好きになれない作品であったけれど、ステレオタイプのキャラクターを打破しようとする挑戦だとしたら、そこはやはりきちんと見てあげたい。

続けて、11時15分から、昨日見られなくて地団駄を踏んだ、ギリシャのヨルゴス・ランタィモス監督の『The Lobster』の追加上映に再挑戦。1時間前から並び、今回は無事に入場。やれやれ。

事前に予想した通り、本当に内容を知らないで見るべき作品だったので、どこまで書いていいのか躊躇する…。見ればとても面白いのだけど、何を書いてもネタバレになりかねないので、こういう作品の宣伝は難しいだろうなあ。ともかく、一種のSFで、ある掟が支配している架空の社会を舞台にしたブラック・コメディーと言っていいかな。

架空の社会の物語だけれど、現実社会の「常識」への皮肉がふんだんに込められている。ロイ・アンダーソンやジョルジ・パルフィが好きな人であれば、楽しめるはず。僕ももちろん大好物なのだけれど、ほんの少し物足りない思いもある。何かが足りず、突き抜けきれなかったか…。

上映終わり、13時からのミーティングに遅刻気味だったのでダッシュでマーケット会場へ移動。重要な会社2社とミーティング。とても東京に招待したい作品を持っている会社とのミーティングで、熱意を伝えてみる。しかし、あまり反応は芳しくなく、んー、どうだろう。障害はいろいろありそうだけれど、何とかなりますように。粘り強く交渉してみよう。

ミーティング終わって、ダッシュで「監督週間」部門の会場に移動し、強い陽射しの下で1時間並ぶ。何とか入場して、見ることが出来たのは、アルノー・デプレシャン監督の新作『My Golden Days(仏題:”Trois Souvenirs de ma Jeunesse”)』(写真)。デプレシャンに心酔する僕としては、前作『Jimmy P』(13)に少しだけ失望していたので、今回はその反動で期待が異常に膨らんでいたのだった…。そして、デプレシャンは見事に帰ってきた!

それもそのはず、今回の主人公は、『そして僕は恋をする』(96)の主人公と同じ役名のポール・デダリュス。つまり、デプレシャン自身が反映されている作品であり、自伝的とまでは言えないものの、パーソナルな思いが込められていることは間違いない。

マチュー・アマルリック演じるポール・デダリュスが海外から帰国し、パスポートのトラブルで取り調べを受ける場面から始まり、ポールは自らの過去を振り返っていく。幼少の頃の母を巡るエピソードや、高校時代のロシアへの冒険が語られ、そして大学時代の大恋愛が映画のメインとなる。

僕にとってのデプレシャン映画の魅力は、複雑な愛憎の機微を大小双方のスケールで同時に描き、極めて甘美な映画的興奮をもたらすこと、なのだけど、いや、デプレシャンの魅力をここで要約するのは無理だ。そもそもこの文章も意味を成していないし。少し冷静になったらまた書きます。ともかく、デプレシャンの新たな傑作が誕生したということだけ、いまは書くことに留めよう。

続いて、同じ「監督週間」で、ポルトガルのミゲル・ゴメス監督による話題の『Arabian Night Vol.1』。3部作で、全部で6時間。カンヌに来る前は、一気に見られるのか不安だったのだけれど、3部作を3日に分けての上映だった。なので、感想は全部を見てからにしようかな。

終って20時過ぎ。朝の9時にクロワッサンを食べて以来、食べ物はおろか水分も全く取っていなかったことに気付き、スーパーでサラダと水を買ってホテルに戻り、30分ほど休憩。

21時半から、「ある視点」部門のフランス映画で『Disorder』という作品へ。監督は、アリス・ヴィノクール。主演は、ジャック・オーディアール監督の『君と歩く世界』(12)で強い印象を残したマティアス・スーナルツ、共演にダイアン・クルーガー。トラウマを抱えた軍人が、富豪の婦人のボディーガードを務める非エンタメ系アクション・ドラマで、緊張の途切れない演出が冴えてなかなか見せる。

というわけで本日も無事終了。今日はコンペでナンニ・モレッティと、ガス・ヴァン・サントの上映があったのだけれど、どちらも行けずに無念。ガス・ヴァン・サント作品は渡辺謙さんも出演しているので、なおさら気になる。でもまあ、そもそもカンヌの全てを見ることは出来ないのだからしょうがない、と自分を慰めつつ、本日もそろそろ2時。ダウンです。

《矢田部吉彦》

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